新型コロナウイルスの影響から、「テレワーク」あるいは「リモート勤務」と呼ばれる在宅勤務が一気に広まりました。

緊急事態宣言が解除された後も、在宅勤務を継続する企業は少なくないようです。

その一方で、在宅勤務の労働時間の管理について頭を悩ませている経営者もいるかもしれません。

在宅勤務であっても労働者が残業をすれば、もちろん残業代の支払いが必要です。

残業代の計算方法の基礎についてあらためて確認してみましょう。

在宅勤務でも支払われる「残業代」の計算方法

「残業」について

「残業」とは1日の労働時間のうちのどの時間を指すのでしょうか。

労働基準法第32条には、次のような定めがあります。

(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
○2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

労働基準法

この1日8時間、1週間40時間の労働時間を「法定労働時間」と言います。

また、法定労働時間とは別に「所定労働時間」というものもあります。

これは、労働契約において定められた労働時間を言います。

簡単に言えば、

所定労働時間を超えた「時間外労働」が残業

ということになります。

しかし、労働契約で定められた所定労働時間が皆いっしょとは限りません

所定労働時間が1日6時間の人もいれば、7時間の人もいることでしょう。

所定労働時間を超え、法定労働時間8時間に満たない残業を俗に「法定内残業」

と呼びます。

一方、

法定労働時間8時間を超える残業を「法定時間外残業」

と呼びます。

残業時間の具体例

たとえば、次のような労働契約で働いている人がいるとしましょう。

【始業時刻】9:00
【終業時刻】17:00
【昼休み】12:00~13:00

9:00~19:00勤務した場合

ある日、9:00から19:00まで労働したとします。すると、労働時間の内訳は次の通りです。

9:00~17:00 → 所定労働時間7時間

17:00~18:00 → 法定内残業1時間

18:00~19:00 → 法定時間外残業1時間

9:00~23:00勤務した場合

日によっては、仕事が忙しく、労働が深夜におよぶこともあるかもしれません。

労働基準法において、「深夜」とは、原則として午後10時から午前5時までを指します

この午後10時から午前5時までの間の労働は「深夜労働」と呼ばれます。この深夜労働が、さらに時間外労働であった場合には「深夜残業」ということになります。

ある日、9:00から23:00まで労働したとします。すると、労働時間の内訳は次の通りです。

9:00~17:00 → 所定労働時間7時間

17:00~18:00 → 法定内残業1時間

18:00~22:00 → 法定時間外残業4時間

22:00~23:00 → 深夜残業1時間

法定時間外残業には割増賃金が支払われる

法定時間外残業には割増賃金

残業すれば、もちろん残業代が支払われます。

ただし、法定内残業については残業代は割増にはなりません

割増賃金の支払いが義務づけられているのは、法定時間外残業、深夜労働

に対してです。

割増率は、どちらも通常賃金の25%増しと定められています。

もし、深夜残業であれば、通常賃金の50%増しの残業代が支払われることになります。

ふたたび前項の例を使って、説明しましょう。

分かりやすくするために、この人が時給1,000円で働いているとします。

9:00~19:00勤務した場合

9:00~17:00 → 1,000円 × 7時間 = 7,000円

17:00~18:00 → 1,000円 × 1時間 = 1,000円

18:00~19:00 → 1,000円 × 1.25 × 1時間 = 1,250円

9:00~23:00勤務した場合

深夜残業をしたケースについても、計算してみましょう。

9:00~17:00 → 1,000円 × 7時間 = 7,000円

17:00~18:00 → 1,000円 × 1時間 = 1,000円

18:00~22:00 → 1,000円 × 1.25 × 4時間 = 5,000円

22:00~23:00 → 1,000円 ×1.5 × 1時間 = 1,500円

在宅勤務でも残業代は必要

もしかしたら、これからは在宅勤務が会社勤務のあり方のひとつとして定着するのかもしれません。

繰り返しになってしまいますが、在宅勤務であっても労働者が残業をすれば残業代の支払いが必要です。

残業代の未払い、いわゆる「サービス残業」は違法であり、労使トラブルの原因にもなります

オフィス勤務であれ在宅勤務であれ、労働時間を正しく管理するためには、雇う側と雇われる側が協力し合わなくてはなりません。(執筆者:社会保険労務士 嵯峨 朝子)