今年に入ってから、新型コロナ感染拡大の影響に伴って、在宅勤務の就業形態を導入する企業が増えてきています。

現時点で在宅勤務に関してはさまざまな問題が浮き彫りになってきているところですが、今回はその内の1つである「残業代の支払い」についてみていきたいと思います。

在宅勤務中に勤務終了を上司へ報告

在宅勤務でも残業手当が支給される理由

仕事量は従来から変化がないにも関わらず

「テレワーク中は自身の裁量で仕事を進めることになる都合上、残業代がカットになる」

という話を聞きます。

これは本当なのでしょうか。

労働基準法が使用者(会社)に課している4つのルール

残業代の支払いに関しては「労働基準法」という法律にルールが定められています。

この法律の考え方は次の通りです。

(1) 使用者は、原則として、法定労働時間(1日8時間)内で労働者に仕事をさせられる

(2) どうしても1日8時間で足りないときのために、36協定という協定を労使間で結ぶことで、使用者は例外的に残業を命じられるようになる

(3) その際、ペナルティとして割増賃金(残業代)を労働者に支払わなければならない

(4) 使用者は、労働者が実際に仕事した時間を把握しなければならない

これらのルールは、在宅勤務であっても変わりません。

つまり会社は、在宅勤務中の労働者であっても、その労働時間を把握し、法定労働時間を超えて仕事をしていれば、残業代を支払わなければなりません

分かりにくい残業代計算

ひとくちに残業代といっても、残業をした時間数や時間帯によって、割増賃金の支給率は変化します。(図1)

割増賃金の支給率変化

図1を例に、固定で支払われる月額給与が30万円の人が夜11時まで在宅勤務したとすると、その日の残業代は次のような計算により、1万6,073円支給されることになります。(例1)

(例1)一般的な残業代計算

残業代計算の基礎になる時間給の算定

30万円÷20日(月の出勤日数)÷7時間(1日の所定労働時間)=2,143円/時間(小数点以下四捨五入)

残業代の計算

夕方5時~6時:2,143円

夕方6時~10時:2,143円×1.25×4時間=1万715円

夜10時~11時:2,143円×1.5×1時間=3,215円(小数点以下四捨五入)

合計:2,143円+10,715円+3,215円=1万6,073円

(例2)固定残業代を導入している場合

ところが、こうした計算が分かりにくい場合があります。

それが、固定残業代制度です。

この制度は、あらかじめ決めた時間数分の残業代を基本給に組み込むか、業務手当などの名称で固定的に支払うものです。

これらの支給方法については、就業規則や労働条件通知書に記載されます。

基本給に組み込む方式

記載例:基本給30万円 ただし、月45時間分の残業代を含む

手当として支払う方式

記載例:基本給30万円、業務手当12万円(残業代 月45時間相当)

労働条件通知書

固定残業代という支払方法は、設定の仕方によっては(例1)でみたような残業代の計算プロセスがみえなくなり、問題となることがあります。

この点、これまで裁判で幾度も争われており残業代が法定の割増率以上であるかどうか計算できるよう、

通常の労働時間にあたる部分と、割増賃金にあたる部分とが判別できることが必要

と判断されています。

ご自身のお勤め先で固定残業代を導入している場合は、1度計算方法を確認しておきましょう。

残業の証拠が重要

在宅勤務でも残業代は支給されること、残業代の計算方法をここまでみてきましたが、実際に残業代を請求するには、残業した証拠を残しておく必要があります。

勤怠システムへの始業・就業時間入力により労働時間の把握をする等、あらかじめ取り決めた上でご自身で時間管理をすることが望ましいですが、そうしたことが出来ない場合は、

上司に始業と終業の報告メールを送るなどして、労働時間の客観的な記録を残しておきましょう。

在宅勤務への法整備は不十分。自衛策を

在宅勤務はもともと、柔軟な働き方を実現するための方法として、働き方改革の一環としても導入が唱えられていたものでした。

それがくしくもコロナの影響で進展した形になっています。

しかし、在宅勤務に関する法的な枠組みはないに等しく、モデルケースがイメージしにくい中で各企業が模索を続けている現状があります。

お勤め先の労務管理の対応が不十分な状態であることを想定しつつ、不利にならない働き方を目指していきましょう。(執筆者:今坂 啓)