今回は、企業決算の質を見極めるうえでその注目されてきている「アクルーアル」について解説していきたいと思います

決算上の利益の質を見極める指標

アクルーアルとは

アクルーアルとは、会計発生高のことであり、現金収入を伴う質の高い利益を企業が稼いでいるかどうかを識別するための指標として用いられます。

特別損益の影響を除いた税引き後利益から営業キャッシュフローを差し引くことで求められます。

アクルーアル=税引き後利益-営業キャッシュフロー

通常、企業が活動するにあたり必要となる費用の支払いは利益を計上した後になり、その支払いのためのキャッシュは蓄えられているため、利益は営業キャッシュフローより少なくなる傾向にあります。

そのため、アクルーアルがマイナスになると健全な収益を上げていることを意味し、プラスになると利益に対して現金収入が少ないと判断できます

このプラスの水準が継続していると、現金創出が遅れていると判断されるため、企業の健全性が損なわれる可能性があるため、注意が必要です。

コロナウイルス感染拡大によりアクルーアルへの関心が高まる

今回のコロナショックを受け、企業が倒産する可能性が増してきており、政府系キャリー大手のタイ国際航空や米百貨店大手のJCペニーなどが連邦破産法第11条の申請をするなど、その影響は計り知れないものとなっています。

日本では、20年5月に、上場会社で初となる老舗アパレルのレナウンが民事再生手続き開始の決定を受け経営破綻しました。

東京商工リサーチや帝国データバンクの調査によると、今後さらに倒産件数は増加し、2020年は1万件を超えるかもしれないとの予測も出ています

そのため、今後のコロナウイルス感染拡大第2波が到来する可能性などを視野に入れ、どの企業に投資をすべきか慎重に判断する必要があります

そこで注目されたのが上記「アクルーアル」であり、平時はあまり注目されていなかった指標が有効な判断材料となりました。

この指標は、リーマンショック時などの世界的に不景気入りした局面で有効な手段として注目されました

現在、コロナウイルス感染拡大の終息のめどが立たない中、各国が経済活動再開に舵を切り、金融緩和により市場にヘリコプターマネーがばらまかれている状態となったことで、ハイテク株中心に急速に株価は回復しました。

しかし、実体経済はいまだ不安定な状態が続いています。

ここで、コロナウイルス感染拡大第2波が到来すると、企業へのダメージがさらに深刻化する可能性が考えられます

ですから同指標を用い、各企業の健全度を推し量るよう心掛ける必要があります

指標を使って市場を推し量る

アクルーアル比率に注目

「アクルーアル比率」とは、アクルーアルを総資産で割って求められ、この比率が高いと利益の質が低く、低いと利益の質が高いことを意味します。

アクルーアル比率=アクルーアル ÷ 総資産

この指標を基に、世界的にコロナウイルス感染拡大が深刻化した3月末から5月21日までの期間での銘柄のパフォーマンスを比較したところ、同指標が低い銘柄ほど運用成果が高く、TOPIXを上回る運用成果が出ていることが分かっています。

そのため、このアクルーアル比率を今後の重点指標として採用する投資家が今増えてきています。

他のテクニカル指標と組み合わせることでさらに確度を高める

アクルーアルは、あくまでも数あるテクニカル指標の1つでしかなく、この数値が低いからと言って必ずしも株価が上昇するわけではありません

そこで、重要となってくるのが、PER(株価収益)やPBR(株価純資産倍率)などの重要指標と組み合わせ、総合的に投資判断を下すことです。

PERやPBRなどの指標は、各企業の表面上の決算を基に算出されており、キャッシュフロー上の変化は加味されていないため、これら指標だけを見て投資をしてしまうと期待した運用成果が得られない可能性があります。

また、銘柄選別時にどの指標から順に判断するかも非常に重要となります。

今回のコロナショック時で最も重要とされるのは、

企業がどれだけキャッシュリッチであり、今回の景気後退局面を乗り越えるだけの体力があるかを判断

することです。

そのため、まずアクルーアルを参照しその数値が低い銘柄を選別し、そこからPERやPBRなどの指標で割安な銘柄を選別するようにすれば、現在の不安定な相場環境を的確に乗り越える可能性が高くなります。

使うタイミングは慎重に見極める

アクルーアル指標は、コロナショックなどの世界的な悪影響が生じた際に有効な指標の1つであり、企業の倒産する可能性を推し量るのに役立つものと言えます。

しかし、相場回復局面では、出遅れ銘柄に急速な買戻しが入る可能性があるため、使うタイミングは慎重に見極める必要があります。

また、信用の空売り比率が高い銘柄においても、ロスカットによる買い戻しが入ってしまうと、その効果は低減する可能性があるので、あくまでも判断材料の1つとして考えておきましょう。(執筆者:白鳥 翔一)