コロナ禍でリモートワークが普及する中、大都市圏在住の人の中には地方への移住をお考えの人も多いと聞きます。

特に子育て世代やシニア世代に移住希望者が多いようです

しかし、長年地方都市に住む筆者は、大都市圏から移住してきた人の失望の声をよく聞きます

その理由はさまざまですが、その多くはお金の問題が絡んでいるようです。

そこで、この記事では地方に住むにあたってのメリット・デメリットについて主に金銭的な面からお伝えします。

大都市から地方移住でかかる生活コストを検証

地方でも住宅コストが安いとは限らない

大都市圏にお住まいの人は、「地方は住宅コストが安い」と考えているようです

しかし、必ずしも地方の住宅コストが安いとは限りません。

地方都市でも大都市圏より住宅コストが高いケースがある

大手不動産サイトのSUUMOによれば、現在東京都(島しょ部を除く)において、3LDK(ファミリー向け)の家賃相場は以下の通りです。

家賃相場比較

参照:SUUMO

同じ東京都内でもエリアによって住宅コストに大きな差があることがわかります

次は、東京から近い3つの地方都市の家賃相場(3LDK)をチェックしたところ、住宅コストが東京より高額となるケースもあることがわかりました。

各都市比較

参照:SUUMO

中でも、熱海は首都圏への通勤圏かつ日本有数の温泉地で移住希望者に人気があります

そのようなエリアでは地方都市でも不動産価格が高めに設定されるため、期待するほど住宅コストが下がらない可能性があります。

子育て現役世代は地方移住で生活コストが上がる可能性も

特に注意したいのが子育て現役世代の地方移住です。

もし転職や転校をせずに地方移住すれば、通勤・通学の交通費が大きく上がります

また、毎日最寄り駅まで子どもを送迎する場合はガソリン代などの車のコストも増えます

その結果、大都市圏に住んでいた時より生活コストが大幅に上がる可能性も考えられます。

したがって、子育て現役世代は仕事や子どもの学校をどうするかについても考えた上で、慎重に地方移住するかどうかを検討する必要があるでしょう。

物価は都会より高いケースが意外と多い

物価についても、必ずしも地方が安いわけではありません。

その参考になるのが、消費者物価地域差指数です。

消費者物価地域差指数
≪画像引用元:総務省統計局(pdf)

上の表を見ると、首都圏の4都県(東京・神奈川、埼玉、千葉)と大都市圏の京都府は全国平均より物価が高めです。

しかし、同じ大都市圏でも愛知県(中京圏)や福岡県は全国でも物価が低いようです。

逆に山形県など首都圏以外の大都市圏より物価が高い県も多数あります。

≪画像元:総務省統計局(pdf)

都市部に絞った調査(上表)でも同様の結果が出ており、必ずしも大都市圏の物価が高いとは言えないようです。

その点も考慮した上で地方移住を検討することも必要となります。

地方では車の費用が「必要経費」となる

地方都市の大半では車の費用が「必要経費」となることも知っておきましょう。

多くの地方都市では公共交通機関がないに等しいケースも多い

正直言って、地方都市の公共交通機関網がないに等しいレベルであるケースも多いです。

特に、バスは全国的に運転手不足が問題となっており、年々路線数やバスの本数が減っています。

筆者が住む都市部ですら、かねてからの運転手不足やコロナ禍の影響から、多くの路線でバスの本数が激減しました。

中心地に近いエリアでもバスが2~3時間に1本しか来ない停留所が増えています

地方移住で最低限必要となる車の費用とは

以上の事情から、地方移住では車の費用が必要不可欠となります。

その内訳は以下の通りです。

自動車税 乗用車(個人)2万9,500円~11万1,000円

※地域により若干差があります。

参照:愛知県

車の維持費(全国平均)1万2,400円/月(14万8,800円/年)

参考:ソニー損保

※保険料、ガソリン代・燃料代、駐車場代、修理代など

これらの費用のほか、不定期で自動車購入費用(新車で150万円~300万円程度)も発生します

大都市圏で車がない生活をしていた場合はこれまで以上の費用が新たに発生し、生活コストが増えることを覚悟する必要があるでしょう。

シニアの地方移住希望者はタクシー料金も検討材料となる

タクシー料金も検討しよう

上記のとおり地方では車が必要不可欠ですが、高齢になると運転できなくなる人も増えます。

その場合に必要となる費用がタクシー代です。

たとえば東京からひかりで1時間の場所にある静岡市のタクシー料金は以下のようになっています。

静岡市 初乗り料金600円/1,200m 以後311mごとに90円

以上の数字から10キロメートルあたりのタクシー料金を概算すると約3,200円 (※)となります。

※乗車距離10キロメートルのタクシー料金計算式

600円+8,800m ÷ 311m × 90円=3,147円

地方では車がない高齢者がタクシーで10キロメートル程度の病院に移動することも珍しくはありません。

地方の移住先を選ぶ際は、交通費の1つとして10キロメートルあたりのタクシー料金を比較・検討することも必要となるでしょう。

子育て世代に朗報 高校までの教育費は地方が安い

教育費も地方と大都市圏とはだいぶ事情が異なります。

公立が強い地方では教育費を抑えやすい

地方都市の多くは公立学校への進学が主流であり、難関大学への進学率が高い上位高校はほとんど公立です。

小中学校は学区によって教育レベルの差がありますが、教育レベルが高い学区に移住すれば問題ないでしょう

以上の背景から、地方ではお金がかかる中学受験の必要性が薄く、高校までは学費が安く済む傾向があります。

高校から私立になる可能性はありますが、私立高校でも世帯年収910万円未満の家庭は学費助成を最大で年間39万6,000円まで受けられるので、ほとんどの子育て世代は学費の負担を小さくできるでしょう。

学費の負担は小さくできる
≪画像元:文部科学省(pdf)

また、学校外教育費となる塾代は地方でも必要ですが、学費が安く抑えられる分塾代にお金を回しやすいメリットがあります。

ただし、子どもが大学進学で下宿する場合は、仕送りの負担が非常に重くなります。

そのため、お金がかからない高校までの間にある程度大学進学費用を用意しておくことが必要不可欠となることも知っておきましょう。

進学実績だけで学校を選ぶならオール公立で問題なし

地方の高校で進学実績が高い上位校の大半は公立です。

もし進学実績だけで学校を選ぶなら、オール公立コースでも問題ないでしょう。

ただ、面倒見の良さを重視して私立に進学させたい場合は、費用はかかりますが中学受験も1つの選択肢です

地方でも、私立校ではいじめなどへの対応が早い傾向があります。

その点を再重視する場合は、大学卒業までの教育費が首都圏より高くなる可能性を考慮した上で、中学受験の是非を検討することが必要となります。

地方移住希望者は多角的に比較検討して慎重に移住を決めてほしい

今回の記事では、主に地方への移住希望が多い子育て世代やシニア世代に向け、移住にあたって注意してほしいことを記しました。

ただ、他にも注意点はあります。

たとえば町内会費です。

2014年に行われたJタウンネットのアンケート調査によれば、地方の町内会費は大都市圏より高い傾向が見られました。

他にも細かいところで大都市圏と地方の生活コストは異なりますが、地方だからといって必ずしも生活コストが安いとは限りません。

地方移住を考えている場合はその点を承知した上で、生活コスト以外のメリット・デメリットについてもよく検討することを強くおすすめします。(執筆者:元銀行員にしてベテラン主婦 大岩 楓)