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子のない夫婦に「遺言書」が必須なワケと見えないリスク 家族と財産を守るため元気なうちに用意する

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子のない夫婦に「遺言書」が必須なワケと見えないリスク 家族と財産を守るため元気なうちに用意する

少子化、高齢化がますます進むなか、55歳~59歳の方の相続に対する不安は、ますます高まってきています。

遺産分割調停でも、一般家庭で勃発し、相続問題は「対岸の火」ではなくなってきています。

その際、民法(相続法)が改正により、残された配偶者を守るための新制度ができたとはいえ、悲劇が起こりやすいのは配偶者である妻です。

「もめずに家族にお金を残したい」

「余計なお金を払いたくない」

と、考えているなら遺言書をつくるのが1番です。

50代の相続不安は75歳以上と同等に高い

「50代の相続不安は75歳以上と同等に高い」事実

2018年、40年ぶりに民法(相続法)が改正されました。

自筆証書遺言や遺産分割、遺留分など、皆さんに広く関係のある制度の改正が盛り込まれ、残された配偶者を守るための新制度が創設されるなど、大変話題を呼びました。

この民法改正に先立ち、法務省が行った調査では、55歳~59歳の方の相続に対する不安は、75歳以上の高齢者と同じくらいに高いことがわかりました。

実際、55歳くらいになると、

・ 親の介護や入退院の世話などが忙しくなる

・ 親が亡くなる

・ 周りの友人知人の誰かしらが亡くなる

といったことが、はじまります。

それをご自身のことを見直す機会と考えてください。

自分のことは自分できちんと整理をつけ、残された家族に金銭的に迷惑をかけず、幸せに過ごしてもらうために必要なのは「遺言書」です。

遺言書と遺書を混同していると損をするかも

なぜ日本では遺言が忌避されるのでしょうか。

私が相続、資産承継などを専門分野として活動する税理士として、これまで多くのお客さまと携わってきたなかで得た答えは、多くの方が「遺言書」と「遺書」を混同しているということです。

「遺書」とは

死を覚悟した人が死後のために書き残す文書と定義され、法的な効果は一切ありません。

感情的なことや葬儀についてのお願いを書きます。

「遺言書」とは

自分が死亡したときに財産をどのように分配するかについて自分の意思を表明するものであり、民法の要件を満たす遺言書は、法的な効力を発揮します

遺言のメリット

遺言がある場合には、原則として、遺言者の意思に従った財産の分配がされ、遺言の中で示しておけば、相続人以外の方へ財産をあげることもできます。

あげたくない人にあげないことも可能です。

事前に十分時間をかけることで、

・ 相続税を減らすこと

・ 相続争いのリスクを減らす工夫

もできます。

死ぬ直前では間に合わないことも多いため、気力も知力も判断力も決断力も十分なうちに、書くことをおすすめします。

ごく普通の家庭にこそ「争族」は起こる衝撃のデータ

相続にまつわる紛争は、年々増えています。

「相続争いなんてお金持ちの家で起こるもの、うちは財産ないから」

と考える人は多いです。

しかし、一般家庭にこそ「争族」は起きます

家庭裁判所に申し立てられる遺産分割調停は年間1万2,000件です。

そのうち、全体の75%を遺産額5,000万円以下の案件が占めており、なかでも遺産額1,000万円以下の案件が全体の33%を占めているという衝撃の事実があります。

こうした紛争を防止するためにも、遺言書が重要な役割を果たします。

子供がいない夫婦に遺言は必須

子供がいない夫婦に遺言は必須

最近は、子どものいない夫婦が増えています。

こうした夫婦の片方が亡くなり、故人の両親は既に他界している場合、

配偶者と、故人の兄弟姉妹

が法定相続人となります。

遺言書がない場合は、これら法定相続人全員の話し合いにより、財産の分け方を決めます。

歳の開いた相続人同士では、どうしても年下の者が不利になったり、また血のつながっていない相続人同士の話し合いの結果、受けなくてもよい傷を負ってしまうこともあります。

残された配偶者に負担のかからない相続にするには、お互いに遺言書を書くことです。

とてもシンプルに、

「全財産を妻へ」

「全財産を夫へ」

と書き合うだけで、残された配偶者を守れます。

故人の兄弟姉妹には「遺留分」がない

故人の兄弟姉妹には、「遺留分」という権利がありません。

遺留分」とは、相続人の生活保障などのために認められた、相続財産の最低限の取り分です。

そのため、「全財産を妻へ」、「全財産を夫へ」という遺言があれば、残された配偶者は、故人の兄弟姉妹と遺産分割協議をすることもなく、全財産を相続できます。

また、この遺言書は、別の効果も備えています。

隠れリスクの排除にも役立つ

亡くなった妻は1人っ子だと聞いていたのに、戸籍謄本を収集したら、妻の父親が前の結婚で、子供がいることが判明することもあります。

妻でさえ存在を知らなかった兄弟が、戸籍の中から突然出現することが結構あります。。

しかし、この見知らぬ兄弟は立派な法定相続人です。

残された夫は、その人を探し出して、遺産分割協議をし、先方が主張すれば相続財産を渡すことにも応じなければなりません。

このような隠れリスクを排除するためにも、「全財産を妻へ」、「全財産を夫へ」と書き合っておく遺言書が有効です。

この一言さえあれば、その兄弟を探す必要もなく、全ての財産を配偶者が相続できます。

なぜなら、故人の兄弟姉妹には、遺留分がないからです。

遺言書は「自分と家族と財産を守る」武器

この事例は、ほんの一例に過ぎません。

独身の方、相続人が複雑な方、相続人以外に財産をあげたい方、皆さんに遺言書が必要です。

相続について民法はさまざまなことを定めていますが、こうした定めを遺言でうまく活用すれば、家族や財産を守れます。

気力が充実しているうちに、十分な時間を使って、遺言書という武器を味方につけてください。(執筆者:税理士 井口 麻里子)

《井口 麻里子》
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井口 麻里子

井口 麻里子

本郷税理士法人相続部部長/税理士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。東京都出身。慶應義塾大学卒業後、2009年に辻・本郷 税理士法人に入所。2012年から2年半にわたりメガバンクのプライベートバンキング部門へ出向し富裕層の資産承継にかかる税務顧問を担当。帰任後は相続・資産承継コンサルティングをメインに、相続や贈与の税務申告、セミナー活動、執筆活動を精力的に行う。50代からの遺言書作成を奨励する啓蒙活動を行っている。『55歳になったら遺言を書きなさい』他多数 寄稿者にメッセージを送る

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