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法改正で広がる「海外不動産小口化商品」投資のメリット・デメリット、REITとの違い、向いている人を解説

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法改正で広がる「海外不動産小口化商品」投資のメリット・デメリット、REITとの違い、向いている人を解説

将来の安定した生活のための資産形成を考えるうえで、不動産投資は大事な選択肢の1つです。

適切なリスク分散を図るために、現金資産の一部を株式等の金融資産や不動産投資に振り分けることをお考えの方々や、既に実行されている方々も多くいらっしゃることでしょう。

投資資産のリスク分散を考えるうえで「どの国の資産を組み入れておくか」も重要な視点です。

日本が災害大国であることを考えると、

日本円の預金、日本企業の株式、国内不動産と資産すべてが日本に集中していると、仮に日本に大きな災害が起こった際にどうなるのか、一度に大きく目減りしてしまうのではないか?

この不安はぬぐいきれません。

日本で資産形成を考える方々の「海外の不動産にも資産を分散させておきたい」というニーズに対しては、今までは限られた選択肢しかありませんでした。
 
しかし、投資家保護の観点から2017年に一部改正された「不動産特定共同事業法」という法律によって、不動産のプロではない一般の投資家にも少額から安心して不動産投資に参加できる機会が広がりました。

この法律に基づく許認可を得た事業者により海外不動産に適用するスキームも組成可能です。

少額から始められる海外不動産小口投資について、概要やメリットデメリットを紹介します。

海外不動産小口投資が手軽になった

不動産特定共同事業法(以下「不特法」)とは

不特法は、一言で言えば「不動産ファンドの運用を規制する法律」です。

不特法が施行されたのは1995年4月とかなり昔です。

複数の投資を集め収益不動産を取得・運用し、生まれた収益を投資家に分配するスキームが適正に運営され、投資家の利益が保護されることを趣旨として成立した法律です。

しかし、成立当初はいわば「不動産のプロ」同士のスキームが対象でした。

投資する側も、不動産を取得・運用する側も不動産のプロでなくてはならず、一般投資家向けの法律ではありませんでした。

それが2013年、2017年の2度の改正を受け、投資家保護の趣旨は守りつつ、特定の条件を満たす「特例事業」についてこの法律で守られる対象が一般投資家にまで広がりました

直近の改正が3年前、と比較的最近の話であり、まだ広く認知されているとは言えない状況ではありますが、この「特例事業」の要件を満たせば海外不動産にも適用されるため、海外不動産を対象とした小口化商品も実現可能となったのです。

リート:Real Estate Investment Trust(REIT)

同様に不動産を少額から購入できる商品としてリートがあります。

リートはReal Estate Investment Trust(REIT)の略で、日本語でいうと不動産投資信託です。

日本では証券取引所に上場されているJ-RIETが一般に認知されていると思います。

リートと不動産小口商品の違い

リートと不動産小口商品の違いは、一言でいうと「根拠法律」です。

不動産小口商品は不特法に基づき運用され投資家が保護されます。

一方でリートは、投資信託法および金融商品取引法が適用される、より金融商品の色彩が強い商品です。

投資家の視点からは、不特法の小口化商品もリートも仕組み自体はほぼ同じものに見えると思います。

あくまでイメージ的にあえて違いをざっくりと表すとすれば

【リート】証券会社を通じて買う大型上場商品で、いろいろな不動産が組み合わさっている。

【不動産小口商品】未上場商品で、特定の不動産や特色ある(キャラの立ったニッチな分野の)不動産が投資対象となる。

という感じになります。

メリット1:小口で手間いらず

従来は、海外不動産を自分個人だけで直接購入するとなると、

・ 現地に赴いて物件を確認

・ 販売業者と契約内容の確認(多くの場合は英語の契約書)

・ 部屋を誰かに貸す場合は広告作成

・ 物件の維持・管理

などいろいろと手間がかかりました。

自分自身がその国が好きで実際にそこに住むつもりだという方であれば、それらの手間は当然自ら納得いくまで対応していくべき話です。

その対応のためにその国に実際に行く、というのも楽しみの1つになるかもしれません。

また、日本人が外国で住むとなる以上、物件のクオリティもそれなりのもの(外国の基準でいうとかなりハイクオリティ)が必要ですので、どうしても現地では高額物件が対象になることが多くなります。

一方で、実際にその国に住むつもりはなく「あくまで日本に比べて高利回りの運用資産を買いたいだけ」と考えている場合には、わざわざ海外に行って、英語の契約書に目を通して、英語で説明を受け、場合によっては交渉するという手間はかなり面倒なものになりそうで、しかも現状のコロナ禍の中では、そう簡単に海外にも行けません。

あくまでも分散投資の考え方から海外不動産を考えたい場合には、

「自身の投資ポートフォリオの中で海外資産の比率があまり高くなるのは避けたい」

と思われる方も多いはず。

不特法による小口化商品は、実際の居住目的ではなく、あくまでも上述のように分散資産運用として海外不動産を考える人にメリットを感じられる設計が可能となっています。

海外不動産が投資対象となりながら、あくまでも「利回り商品」としての特色だけを抽出した金融商品に近いので、不動産投資について初心者でも気軽に検討できます。

日本にいながら海外不動産投資

メリット2:外貨運用で投資分散

投資には一般に、リスクとリターンの間に相関関係があり、それは資産運用の対象が国内であろうと国外であろうと変わりません。

ただし、国外投資に特有のリスクというものが存在します。

その中でも特に重要で、どれほど注意しても避けられないのが為替リスクです。

為替リスクとは

日本円と投資対象国、現地通貨の為替相場が変動することで、円ベースの資産額が大きく変化してしまう可能性です。

外貨の必要性は、今後も長く日本に住んでいたとしても、資産をすべて円で持つことにはリスクがある、という考え方があります。

私たちは日本に住んでいても外国製品や資源を多く消費しており、それには必ず為替レートが関係しています。

日本国内での生活では外貨を使うことはなく、円での生活ですので実感しにくいとは思います。

たとえば、近所のスーパーで外国産のパイナップルを購入するとします。

そのパイナップルは外国から輸入した果物ですから、輸入する際には為替レートの計算がされています。

従って、私たちは国内に住んでいても、輸入物にも多く頼った生活をしておりますので、為替変動の影響を受けているのです。

こういう生活の中ですべての資金を円で持つということは、「為替リスクにさらされている」と言えます。

長期で円安が進んだと仮定すると、原料やエネルギーを輸入に依存する商品やサービスの価格は高騰するので、同じ額の円で買える商品やサービスは減少していきます。

こうした影響は、預金だけではなく有価証券や不動産も含めて円建て資産全体の価値に及びます。

しかし、資産の一部を外貨建てで保有しておけば、円の購買力が相対的に減少した場合にもリスクを分散させられます。

海外不動産を投資ポートフォリオに組み入れることで、このような為替リスクを分散させる効果を得られます。

外貨を持つのではなく資産(不動産)を持つことでインフレのリスクにも対応可能です。

どの海外不動産を組み入れればよいのか

対象となり得る国や外貨は多数ありますが、やはり流通量や安定性から言っても、世界の基軸通貨である米ドルからスタートするのが安心だと思います。

資産内容を現預金、金融商品、不動産と分散させ、通貨の面でもドルと円に分散しながら資産ポートフォリオを組んでおく

と日本人が比較的簡単に始められる分散投資としてはかなりの水準に到達していると言えるのではないでしょうか。

デメリット1:住めない、自由に転売できない

不特法に基づく海外不動産小口化商品は、物件を複数の方々と共同で購入する共同オーナー型の商品です。

みんなで投資をして物件を購入するイメージです。

投資家は不動産管理の手間なく家賃など不動産収入を原資とした配当を得ることを目的として匿名組合出資の形で物件を間接保有するスキームです。

従って、個人が直接所有する不動産投資とは異なり、実際にお部屋に住むことはできません

また、共同オーナー型ですので、資産処分をどうするかのスキームが商品によって異なるものの、原則的に自由に転売ができません

投資対象は不動産ではありますが、商品の性格としてはより長期保有型の金融商品に近いものです。

住めないし転売できません

デメリット2:海外不動産所在国のカントリーリスク

日本も含めてどの国にも、その国固有のリスク(カントリーリスク)があります。

本稿では日本人投資家が自身の資産の分散投資を考えるにあたって海外の不動産を投資対象と考え、通貨はまずは米ドルから考えることをおすすめしてきましたが、米ドルで海外不動産を購入できる国は限られますし、かつその対象となり得る国々の特色もさまざまです。

各国のリスクを考えるにあたって一般的にまず考えるべきは、リスクとリターンの関係がトレードオフ(あちらが立てばこちらが立たず)にあることです。

リスクの小さい安定した大国であれば、日本の預金金利を見れば分かる通り、期待できる利回り(リターン)も低くなる傾向にあります。

他方、経済成長著しい新興国であれば、期待できるリターンが大きい一方で国がまだ不安定であるというリスクも大きくなります。

つまり、

低いリスクで高いリターンを求めることは不可能で、低リスクであれば低リターン、高リスクであれば高リターン

であるということです。

低リスク・低リターンの日本でお持ちの資産から投資分散先を考えられている人が多いと思うので、日本よりもある程度高いリターンを求められ、ある程度リスクも高くなる海外投資先をどう見つけるのかがポイントです。

海外不動産は長期投資なので、

・ その国が長期的にどう発展してきているのか

・ 法律や金融のインフラがしっかり備わっているのか

・ 信頼できる情報源があるのか

・ 不動産開発会社はしっかりとしているのか

・ その国と日本・日本人との親和性はどうなのか

などの観点からしっかりと見定めることが重要です。

デメリット3:日本側の営業者の倒産リスク

不特法による不動産投資業務では、国土交通省により認定された不特法の認定事業者が不動産取引や契約業務の代行を行う必要があります。

その認定事業者が倒産などで事業継続が不可能になった場合には、新たな認定事業者が選定される必要があり事務手続きに支障を来す恐れがあります。

なお、通常のスキームでは、不特法の定めに従い設立された特別目的会社(SPC)を通じて海外不動産を所有する形です。

そのSPCおよびSPCが保有する資産は認定事業者自身とは切り離された独立した存在であり、仮に認定事業者が倒産などになったとしてもその倒産による差し押さえなどの対象にはならず(倒産隔離)、購入された不動産は法的に保護されるということです。

小口投資が向いている人

海外不動産小口投資に向いている人

1. 投資資産の中に海外資産を組み込みたい

日本にある程度の投資に回せる資産がある中で、

「全てを日本円の資産にしておくことにリスクを感じる」

という方々におすすめです。

単に外貨預金を持つのではなく、海外不動産に投資することでその国の経済成長リターンを得られるとともに外貨のインフレリスクにも備えられます。

2. 現地に行くのは面倒、外国語に不安

すべての手続きは日本国内で、国土交通省管轄の認定事業者(日本の会社)とのやりとりで済みますので、海外・外国語の手間を敬遠している方におすすめです。

3. 少額から始めたい

自身の投資資産の内容を分散させる(投資ポートフォリオを組む)ことを考えた場合、あくまで日本拠点の投資の一部を海外に振り向ける、という考え方になると思います。

不特法により組成される海外不動産投資商品はいわゆる「小口化商品」という少額から始められるものがほとんどですので、いきなり大きな資産を海外に持つのには抵抗があるという方にも始めやすいものが多いと思います。

メリット・デメリットを知って新分野に挑戦

法改正により海外不動産投資の小口化商品も実現可能になりました。

メリット・デメリットを知って、新しい分野にも挑戦してみてください。(執筆者:荒木 杏奈)

《荒木 杏奈》
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荒木 杏奈

荒木 杏奈

アンナアドバイザーズ株式会社 代表取締役 1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開 <保有資格>:宅地建物取引士 寄稿者にメッセージを送る

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