【離婚と相続】元妻が元夫の実家の相続人になるケース

意外に知らない親のヒストリー

相続専門部署に長年勤めていたおかげで、多くの方の戸籍を見る機会がありました。戸籍を見るのは、相続人の確定のためです。

配偶者の有無は、故人の死亡の記載のある戸籍で確認できますが、故人に何人の子がいるのかは、現在戸籍では確認できません。

戸籍には「ある期間の限定情報」しか記載されない事項があり、子の情報も出生から亡くなるまでの数種類の戸籍を見る必要があります。

なぜなら戸籍は結婚したら新たに作成することになりますし、法律の改正(平成6年法務省令第51号附則第2条第1項など)で戸籍を再作成しているためです。
 

親の離婚の事実は遅くとも相続時には子の知るところになる

この仕事をしていて、「親が、子に離婚の事実を話していない」ことがあることを知りました。

自分の親が離婚していること=相続トラブルになるわけではありません。

問題は、先妻(夫)との間に子がいる、または婚姻関係がなく認知している子がいる時です。先妻(夫)の子も、認知した子も相続人になるからです。

先妻は相続人にはなりませんが、新たな相続人が出てくる可能性があるのです。

親の人生を知ることは、自分の人生を見つめなおすうえで大切なことです。相続手続きをする際に戸籍の収集は1番に行う大切なことです。

離婚した元妻が元夫の実家の相続人になることも

別れた元妻が相続人となる

ここで、離婚した元妻が元夫の実家の相続人になったケースを紹介します。

佐藤武さん夫婦は、妻・恵子さんと武さんの両親との不仲が原因で、平成23年に離婚しました。

その後、平成28年に元夫・武さんが亡くなりました。武さんの相続人は、元妻・恵子さんとの間に生まれた渉さん1人であるため、相続は無事に終了しました。

令和3年に武さんの父・佐藤一郎さんが亡くなりました。相続人は、武さんの母・鈴さんと長女・清子に長男・武さんの代襲相続人である渉さんでした。

相続人・渉さんが未成年であるため、単独では法律行為ができません遺産分割協議をするには、法定代理人である親権者が代理を務めることになります。

親権者も相続人の場合には利益相反になるので代理行為はできませんが、今回は元妻・恵子さんは元夫の父の相続人ではないため元妻・恵子さんが渉さんの代理人として遺産分割に参加することになったのです。

何が問題となったのか

離婚した元夫の父は資産家でした。そのため、元妻・恵子さんは長男・渉さんの遺産分割に参加できることを、むしろありがたく思っていました。

遺産分割に積極的になれなかったのは、元夫・武さんの母・鈴さんです。

鈴さんが長男・武さんと元妻・恵子さんの結婚に反対だったために2人が離婚に至ったという経緯があるため、鈴さんの配偶者(佐藤一郎)の相続に長男の別れた元妻が出てくることに納得がいきません。

これは、感情の問題です。鈴さんの孫である・渉さんに相続してもらうことには問題はありません。

代理人である元妻・恵子さんと再び話をしなければならないことに気が重いのです。

離婚と相続

離婚や死亡の順番によって相続関係者も変化します。渉さんにしてみれば、祖母・鈴さんも母・恵子さんのどちらも大切な家族です。

相続をきっかけに2人の関係が修復されれば、望外の喜びです。離婚すると夫婦は他人になりますが、子にとって自分の両親は変わりません。

相続は運命として、親の目線、子の目線、自分の目線とさまざまな角度で人生を見つめなおすよい機会だと捉えることはできないかと筆者は考えます。(執筆者:1級FP、相続一筋20年 橋本 玄也)