遺言書の依頼は、渡す側(遺言者)ではなく、受ける側(相続人等)からがほとんどです。
 
私は、勤務していた会計事務所で20年近く相続・遺言の受付を行っていましたが、相談に見える方のほとんどが、遺言を書く側でなく、もらう側の方からの依頼でした。

本来、遺言書は、書く人の思いを実現するためにあります。

ですが現実は、特定の相続人さんの思いを実現するための依頼である場合が多いです。

もちろん渡す側である遺言者の思いと同じであれば問題はありません。

そこで、次回面談日は、遺言者本人と一緒に相談に来ていただくようにお話します。

それは、

(1) 遺言者自身に認知症等で遺言能力に問題はないか。

(2) 遺言者自身が、遺言内容を本当に希望しているのか。

の2点が、実際の公正証書遺言作成時に問題となるためです。
 

遺言書作成

公証役場にて遺言書作成当日の流れ

通常、依頼された配偶者かお子さんが遺言者本人を公証役場まで連れていらっしゃいます。

公証役場の室内に一緒に入ることは可能です。

ですが、遺言書の作成作業をするときは、遺言者と公証人と証人のみ別室に入ります

当然ながら、証人に「推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族」は、なれません。(民法974条)

別室では、公証人が、遺言者に住所、生年月日を聞きます。

受け答えにより、意思能力に疑義を持たれると、干支などをさりげなく聞かれます。

意外に誤解されている、公証人による遺言内容の確認方法

いきなり、公証役場が作成した遺言書を公証人が読み上げるのではないのです。

まずは、遺言者に、公証人が「遺言内容をお話しください」といいます。

これは民法(969条)にも「遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること」明記されてあります。

ここで、

「なんかよくわからないけど」

「うん、うんと返事して来いと言われた」

「A土地を長男にと言われたけれど、本当は次男にあげようと考えている」

なんて、当日いわれると、公証人は、作成を保留されます。

ある公証人は、「あんた本当に、そんな分け方でいいの」と、あえて言われたこともあります。

公証役場で遺言書について遺言者が話すという行為は意外にハードルが高いようです。

私も、事前に遺言者の自宅に行き意思確認を直接行い、数日後安心して本人と公証役場に行ったのに、当日になり遺言者が、頭が真っ白になってか、内容を話せなかったことがあります。

当方としては残念でしたが、出直すこととなりました。

本人の意思能力についても、怪しいなと思う場合は、備忘録のようなものに記載されていました。

遺言書の案は事前に遺言者に渡し、内容の打ち合わせをじっくり行う

内容の打ち合わせをじっくり行う

遺言書の案を事前に公証役場に出しておくと、公証人から法律的に有効な書面で修正したものを、依頼すれば事前にいただけます

その文書を、遺言者と事前に打ち合せておき修正すべきところは、修正しておきます。

当日の遺言の口述は、その書類をみて話していただいて差支えないとお伝えしておきます。

直前にも、リハーサルです。

無理やり書かされた遺言は無効です。

「相続人に書かされた遺言書か、遺言者の自発的なものか」の、証明は難しいのも事実ですが、自筆証書遺言ではこの点あいまいとなり、相続人間のもやもや感が残ります。

公正証書遺言であれば、経験上も「書かされた遺言書はありえない」事を知っているだけに、もし遺言書を作るなら、公正証書遺言をおすすめいたします。(執筆者:1級FP、相続一筋20年 橋本 玄也)