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配当所得の課税方式:住民税でも総合課税が有利になる場合

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配当所得の課税方式:住民税でも総合課税が有利になる場合

上場株式等の配当所得は、申告の対象とすることもしないこと(申告不要)もできますし、申告対象とするのであれば、総合課税と申告分離課税の2方式選択できます。

また、所得税と住民税では異なる課税方式とすることも可能です。所得税の確定申告では総合課税を選択し、住民税の申告では申告不要とするのが良いとも言われています。

ただ自治体の窓口で、住民税でも総合課税のままで良いと言われるケースも聞きます。所得税・住民税とも総合課税を選択するのであれば、確定申告のみ行えばよく住民税の申告を行う必要はありません。

一般的には住民税で総合課税を選択するのは不利ですが、例外的な条件では有利になるケースもあります。

配当所得の課税方式: 住民税でも総合課税が有利になる場合

住民税での総合課税選択が原則不利になる理屈

配当を総合課税で申告するメリットは、配当の一定割合だけ税額を軽減できる配当控除が受けられるからです。

所得税では配当の最大10%税額から差し引けるため、最低税率の5%では配当にかかる実質負担率がマイナス5%になり、配当だけでなく給与等から源泉徴収された所得税まで還付を受けられることもあります。

最低税率でなくとも、実質負担率が配当の源泉所得税率15%より低くなれば税額軽減になります。しかし住民税の配当控除は最大でも2.8%であり、また総合課税の標準税率は10%のため、実質負担率が差引7.2%と配当から天引きされる住民税率5%を超えてしまいます。

このため配当の確定申告で総合課税を選択した場合は、別途住民税申告不要の申し出等をした方がいいといわれるのです。

申告所得が配当所得だけの場合は別

ただし申告する所得が配当所得だけであり一定額以下であれば、住民税でも総合課税を選択した方が最も有利になることもあります

例えば下記の事例を考えます。

・ 令和2年分の申告所得は配当109万円のみ(全て日本株配当で住民税5万4,500円徴収)

・ 所得控除は基礎控除(住民税では43万円)のみ

この場合住民税の課税所得は109万円 – 43万円 = 66万円ですが、総合課税を選択した場合の住民税所得割額は、課税所得66万円 × 10% – 配当控除109万円 × 2.8% – 調整控除2,500円 = 3万2,900円(100円未満切り捨て)です。

住民税課税者は誰でも支払う均等割額を5,000円とすると、徴収された住民税5万4,500円との差額1万6,600円は還付されます。

一方申告分離課税を選択した場合の住民税所得割額は、66万円 × 5% = 3万3,000円で総合課税の金額をわずかに上回ります。

申告不要を選択すると住民税5万4,500円が徴収されたままになるので、この事例では1番不利になります。

なお筆者が開発したFITS上場株式等課税方式有利選択ツールR2においては、配当所得や徴収された所得税・住民税額を入力し、総合課税・申告分離課税・申告不要いずれが有利か試算することが可能です。

総合課税が有利になる理由

なぜ年間配当金109万円では、例外的に総合課税が有利になるのかというと

・ 所得控除により課税所得が配当所得額を下回り、実質負担率が下がる(給与所得があれば所得控除による引下げは年末調整に反映されあまり意識することは無い)

・ 調整控除が申告分離課税の場合差し引けない

といったことが考えられます。

社会保障制度への影響には注意

社会保障制度への影響には注意

税額の観点からは有利になっても、社会保障制度への影響を考えると総合課税の選択が不利になることも考えられます。

なお配当に関しては、源泉徴収あり特定口座に受け入れているものは口座単位、それ以外は取引(配当金計算書)単位で申告対象とする・しないの選択が可能です。住民税の申告で確定申告よりも申告対象としないものを増やすことで、住民税申告所得の圧縮は可能です。

この場合、所得税・住民税両者とも総合課税であっても、住民税の申告は必要です。

注意点1:住民税非課税の特典が受けられなくなる場合も

先ほどの事例のように、申告不要とすれば所得ゼロになり、総合課税を選択して申告所得の合計が109万円となる場合は、前者の申告不要とした場合にだけ5,000円の均等割も含めて住民税非課税となります。

本人が住民税非課税者、あるいは世帯全員が非課税の住民税非課税世帯に該当することで、多くの社会福祉制度において優遇が受けられます。この特典を失う危険性がある点に注意する必要があります。

住民税均等割非課税の基準は、扶養親族等による加算額を考慮しないとして、43万円(1級地)・41.5万円(2級地)・38万円(3級地)と住所地の市町村により異なります。

注意点2:国保・後期高齢者・介護保険加入者は保険料上昇に

世帯主が職場で加入している健康保険(被用者保険)の被扶養者になっているようなケースであれば考えなくてもよいのですが、国民健康保険・後期高齢者医療保険・介護保険のように申告した所得に応じて保険料が決まる保険に加入している場合は注意が必要です。

国民健康保険や後期高齢者医療保険であれば、基礎控除43万円差し引き後の所得額に保険料率をかけて所得割保険料が決まります。先ほどの事例では66万円が基準所得となりますので、保険料率10%なら6.6万円、15%なら9.9万円の保険料がかかってきます。

住民税申告不要の申し出をする、あるいは申告する配当を43万円以下まで減らせるのであれば、所得割保険料は0になります。こういった公的保険に加入している場合は、総合課税や申告分離課税の選択が不利になると考えた方がいいです。

注意点3:手当等の所得制限では不利に

例えば児童手当の所得制限では、基準所得に総合課税の所得は加味されますが、申告分離課税の配当所得は加味されません。申告不要にすれば当然加味されません。

児童手当など地方自治体が扱うほぼすべての手当は住民税の課税方式によるため、手当をもらう上で総合課税の選択が不利に働く恐れはあります。

もっとも総合課税選択で住民税額が下がる範囲では手当不支給に至る危険性は低いのですが、ここで説明した仕組みは知っておいた方がいいです。(執筆者:石谷 彰彦)

《石谷 彰彦》
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石谷 彰彦

石谷 彰彦

1977年生まれ。システム開発会社・税理士事務所に勤務し、税務にとどまらず保険・年金など幅広くマネーの知識を持つ必要性を感じFPの資格を取得。行政非常勤職員や個人投資家としての経験もあり、社会保障・確定申告・個人所得税関係を中心にライティングやソフト開発を行う。近年は個人の金融証券税制に重点的に取り組み、上場株式等課税方式有利選択ツールを公開。お得情報の誤解や無知でかえって損をする、そんな状況を変えていきたいと考えている。 <保有資格>AFP・2級FP技能士・日商簿記2級 寄稿者にメッセージを送る

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