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厚生年金への加入期間が同じ場合「遺族年金」に差が出ることはあるのか

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厚生年金への加入期間が同じ場合「遺族年金」に差が出ることはあるのか

日常の生活で万が一親族が亡くなった場合に受給対象となり得る「遺族年金」について、定期的に考えるという人は多くはないでしょう。

今回は遺族年金について具体的な事例も交えて解説してまいります。

「遺族年金」について

2種類の遺族年金

遺された配偶者(夫に先立たれた妻または妻に先立たれた夫)が受給対象となり得る遺族年金には国民年金から支給される遺族基礎年金と厚生年金から支給される遺族厚生年金の2種類があります。

端的には遺族基礎年金は未成年のお子様を養う夫または妻が受給対象となります。

反対に遺族厚生年金は30歳以上の妻には年齢要件はないものの、夫は55歳以上(受給開始は60歳~)が対象となります。

2つの要件がある遺族厚生年金

遺族厚生年金には短期要件と長期要件という2つの要件があります。

平成29年8月1日以降は旧来25年納めなければ受給できなかった老後の年金が10年の納付(厳密には全て納付期間である必要はなく免除期間なども合算可能)で受給できるようになりました。

しかし、遺族年金の長期要件は10年に緩和されることなく、25年必要である点はおさえておきたい論点です。

なお、短期要件と長期要件については次の表をご覧ください。

保険料の納付要件

遺族基礎年金も遺族厚生年金も「死亡日の前日」においてどの程度保険料を納めていたかが問われます。

よって、お亡くなりになってから(遺族年金受給のためにではなくても)慌てて保険料を納めても死亡日の前日は戻ってきませんので残念ながら遺族年金を受給できなかったという事例もあります。

なお、保険料納付要件の具体的な考え方は下記をご覧ください。

保険料納付要件

原則として死亡日の前日において死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間がある場合、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間、保険料免除期間とを合算した期間が被保険者期間の3分の2以上であること

特例として令和8年3月31日までに死亡した場合、65歳未満である場合に限り、死亡日の前日において死亡日の属する月の前々月までの直近の1年間に滞納がないこと

厚生年金には長く加入しておいた方が得なのか

厚生年金から支給される遺族厚生年金は短期要件と長期要件で計算式が異なります。

具体的な計算式は以下をご参照ください。

短期要件

平均標準報酬月額 × 5.481/1,000 × 被保険者期間の月数(300月未満の場合は300月) × 3/4

長期要件

平均標準報酬月額 × 再評価率 × 被保険者期間の月数 × 3/4

注意点として、短期要件も長期要件も厚生年金への加入期間の長さをもとに計算を行う点は変わりませんが、短期要件の場合、厚生年金への加入期間が300月未満の場合は300月とみなして計算することとなっています。

試算します

例えば次のようなケースもあります

Aさん一家とBさん一家、ともに夫を亡くし遺族年金を受給中です。

奇遇にも夫の厚生年金への加入期間は同じ3年間です。

しかし、遺族年金の受給額には大きな差がありました。

結論としてAさんは若い時に3年間厚生年金に加入し、その後は国民年金に加入、合計で25年以上の保険料を納められ長期要件の遺族厚生年金を妻に遺してくださいました。

よって、長期要件の場合は実際の厚生年金の加入月数で計算を行います。

一方Bさんは3年前に就職され、在職中にお亡くなりになりました。

よって、短期要件の遺族厚生年金を遺してくださいました。

短期要件の遺族厚生年金の場合、厚生年金の加入月数は300月未満の場合は300月とみなして計算されることから、同じ3年間の厚生年金加入であっても金額に差が出るということです。

参考までに※標準報酬月額が30万円の場合でその違いを確認しましょう。

【Aさん(長期要件の遺族厚生年金)】

30万 × 5.481/1,000 × 36 × 3/4=4万4,396円

【Bさん(短期要件の遺族厚生年金)】

30万 × 5.481/1,000 × 300 × 3/4=36万9,968円

短期要件の場合、中高齢の寡婦加算(65歳に達するまでの間)としておおむね58万円(老齢基礎年金の3/4相当額)も支給されます。

※標準報酬月額とは下の記事をご参照ください。


65歳未満の方で遺族厚生年金と他の年金も受け取ることができる場合

原則として老後の年金は65歳から受給できますが、生年月日によって65歳よりも前から老後の年金を受給することができます。

他にも60歳から65歳の間に限って受給できる寡婦年金もありますが、65歳までの間は異なる種類の年金は1つしか受け取ることができません

例えば63歳から老齢厚生年金と夫が遺してくれた遺族年金を両方受給できる場合はいずれか一方を選択する必要があります

このケースに限っては以下の点を考慮し決断することになろうかと考えます。

(1) 双方の年金額

(2) 在職中か否かとその報酬額

(3) 失業保険の受給

(4) 税金関係

(1) については単純に双方の年金額を比較します。

(2) については、在職中の場合、老齢厚生年金は「在職老齢年金」によって、一定以上の報酬額を得ていると老齢厚生年金が全部または一部カットされてしまいますが、遺族厚生年金は報酬のいかんによりカットされることはありません

(3) については退職後失業保険を受給するためにはハローワークへ求職の申し込みを行います。

求職の申し込みを行うとその翌月から年金は支給停止されますが遺族厚生年金は失業保険との調整はありません。

(4) については、老齢厚生年金は課税、遺族厚生年金は非課税となっています。

年金は請求しなければもらえません

65歳以後に遺族厚生年金を受給する場合にはまた違った受け取り方となりますが、大前提として年金は請求しなければ受け取ることができない(自動的に年金が振り込まれることはない)点はおさえておきましょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)

《蓑田 真吾》
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蓑田 真吾

執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾 蓑田 真吾

社会保険労務士 独立後は年金などの社会保険制度、人事労務管理に関する講演活動を行い、また、労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。現在は有効的な社会保険制度の活用、様々な労務管理手法を積極的に取り入れ、企業をサポートしています。 【他保有資格】2級ファイナンシャル・プランニング技能士、労働法務士 等 寄稿者にメッセージを送る

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