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無観客オリンピック開催で「財政破綻」寸前の京都市 「財政の優等生」と言われた東京都も苦しい状況に

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無観客オリンピック開催で「財政破綻」寸前の京都市 「財政の優等生」と言われた東京都も苦しい状況に

オリンピックが終わり、次はパラリンピック。

ただ、今回のオリンピックは、コロナと重なり、心から楽しめなかったという方も多かったでしょう。

しかも、頼みのインバウンド需要もなく無観客で、しかも4兆円もかかったということで、経済面だけで言えばマイナス効果のほうが大きかったと言わざるを得ません。

オリンピック

1984年以降、閉会式後は不況が定番に

そもそもオリンピックは、「アマチュアスポーツの祭典」だったはずです。

ところが、1984年のロサンゼルスオリンピックから、IOCを支える利潤追求の商業オリンピックに変貌しました。

ワシントン・ポストが、IOCのバッハ会長を「ぼったくり男爵」と称し、「バッハ会長と彼の側近たちは、まさに地方行脚してわが物顔で食料を食い荒らす王族のように、開催国を破滅させる悪い癖をもっている」と評しました。

実際に、オリンピックは開催国に多大な負担をしいて、開催した国はオリンビック閉会後に、ことごとく不況に陥っています

ギリシャなどは、オリンピックを開催したばかりに、経済破綻してしまいました。

唯一、閉会後でも好況だったのは、1996年に開催されたアトランタオリンピック。

1995年にマイクロソフトからWindows95が発売され、アメリカがIT革命の真っただ中だったので、その勢いがオリンピック後の不況を吹き飛ばしました。

ただ、今の日本にそんな成長力があるかと言えば皆無と言っていいような状況です。

カジノや万博には、とてもそんな力はなさそうです。

しかも、不幸なことに新型コロナという禍が重なり、先が見えない状況です。

こうした中で、この先、主要都市の財政危機が顕在化してきそうです。

京都市が、財政破綻一歩手前

これから多くの自治体が財政危機に直面し、破綻するところも出てくる可能性があります。

たとえば、京都市。

同市が最近公表した「行財政改革計画(案)」(概要版)によれば、市債を返済するために積み立てた公債償還基金の4割近くを財源不足の穴埋めに使っています

しかしこの基金が3年後の2024年には枯渇し、翌年度には財政再生団体に転落する危機的状況だと訴えています。

「財政再生団体」になるとは、地方自治体が財政破綻状態になるということ。

同市の財政収支が悪化した一因は1997年に開業した地下鉄東西線の開通にありました。

事業費が当初想定の1.4倍(5,461億円)まで増加した一方で、利用客は当初見込んだ1日約18万4,000人に1度も達したことはないというずさんさ。これが、あだになっています。

それでも京都市には、観光などで圧倒的な資源があるので、オリンピックを期に日本を訪れる人たちの増加を見込んでJR西大路駅のバリアフリー化をはじめとするさまざまな公費をつぎ込んで起死回生を狙いました。

ところが、その当てが外れてしまったというわけです。

財政破綻一歩手前の京都

財政悪化で、市民サービスも低下

観光都市の同市にとって、観光客の急減は致命的です。

宿泊施設や飲食店などが多く建ったけれど、肝心の売り上げが増えず、今年度の市税収入は前期比4.7%減の2,848億円になる見込みです。

そのような状況の中、京都市は財政破綻を回避するために、冒頭に挙げた行財政改革計画案を出しました。

これを実施すると、「市民サービスが一気に低下」するとあります。

具体的には、

・ 保育料を約4割値上げ

・ 国民健康保険料は約3割値上げ、

・ 70歳以上の市民が使える「敬老パス(敬老乗車証)」を廃止

です。

市独自の保育士の処遇改善・加配などの廃止も挙げられ、市民税や固定資産税などの税率の引上げ、施設使用料の大幅な値上げ、各種補助金の大幅カット等も必要とされています。

京都市民にとっては、こうした負担が、生活の上に重くのしかかってきます。

問題は、こうした状況にあるのが京都市だけではないということ。

東京都の財政調整基金残高は、2019年度末には9,345億円でしたが、20年度末には2,511億円と73%も目減りしました。

都は21年度末にはさらに21%減ると見ていて、「財政の優等生」と言われた東京都でさえ、苦しい状況に追い込まれそうです

オリンピックは、いっとき財政悪化を忘れさせる痛み止めになりますが、その痛み止めの効果が切れた今は、痛み止めの薬代の請求という、さらに大きな痛みがやってきそうです。

こうした中、せめて家計は破綻しないように、出費を削って備えましょう。(執筆者:経済ジャーナリスト 荻原 博子)

《荻原 博子》
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荻原 博子

執筆者:経済ジャーナリスト 荻原 博子 荻原 博子

経済ジャーナリスト 1954年生まれ。経済事務所勤務後、1982年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。女性では珍しく骨太な記事を書くことで話題となり、1988年、女性誌hanako(マガジンハウス)の創刊と同時に同誌で女性向けの経済・マネー記事を連載。難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説し、以降、経済だけでなくマネー分野の記事も数多く手がけ、ビジネスマンから主婦に至るまで幅広い層に支持されている。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。「私たちはなぜ貧しくなってしまったのか」(文藝春秋)「一生お金に困らないお金ベスト100」(ダイヤモンド社)など著書多数。 寄稿者にメッセージを送る

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