年末調整のための書類がお手元に届くようになると「扶養」に関するご質問を受けることがあります。

その中で話を聞いておりますと2つの「扶養」を混同されていたり、2つあることを知らないケースが多々あります。

今回は、2つの「扶養」について解説します。

2種類ある扶養

2つの「扶養」とは?

「扶養」と一口に言っても2種類あることをご存じでしょうか。

その二つとは、「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」のことです。

(1) 税法上の扶養

冒頭での年末調整のための書類に関わるのが「税法上の扶養」のことで、納税者の配偶者や子どもなどの年間の合計所得金額が一定以下などの条件を満たした場合に、納税者の所得から一定の金額を控除することが出来て税負担が軽減できる制度です。(配偶者は配偶者控除等・子どもや親などは扶養控除の対象)

(2) 社会保険上の扶養

もう一つの「社会保険上の扶養」とは、おもには世帯主が加入する社会保険(健康保険・厚生年金)の被扶養者になることです。

社会保険上の扶養に入れば、被扶養者は扶養者と同じ社会保険に加入することとなり、被扶養者は自分で社会保険料を納める必要がなくなります。

誰を扶養の対象にできるかもそれぞれの扶養で条件が異なります。

「税法上の扶養」の対象者は、配偶者と親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)、または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や、市町村長から養護を委託された70歳以上の高齢者を対象にできます。

そのうえで、さらに下記の条件をすべて満たした対象者であることが必要です。

・ 納税者と生計を一にしていること

・ 対象者が子どもの場合はその年の12月31日時点で16歳以上であること

・ その年の年間合計所得金額が48万円以下であること(給与収入がある場合は年間103万円以下であること)

・ 青色申告者の事業専従者や白色申告者の事業専従者でないこと

「社会保険上の扶養」の対象者は、おもに世帯主の配偶者と3親等内の親族。

ただし、配偶者(内縁関係も含む)、実子、養子、孫、兄弟姉妹、実両親、養父母、祖父母、曾祖父母以外は扶養者との同居も条件です。

こちらは、内縁の配偶者も含めていますので、その両親や連れ子もOKですが、同居が条件となります。

さらに、社会保険の扶養にする日から将来に向かって1年間の年収見込みが130万円未満、かつ扶養者の収入の2分の1未満であること(同居していない場合には、扶養者からの援助による収入額より少ないこと)、対象者が60歳以上又は障害者の場合は、年収が180万円未満で、かつ扶養者の収入の2分の1未満であること(同居していない場合には、扶養者からの援助による収入額より少ないこと)です。

内縁関係が認められるかどうか、所得基準なのか年収基準なのか、1年の単位がその年の1月から12月なのか、将来に向かっての1年間なのかなど微妙に違っていることにご注意ください。

それぞれの手続きはどうしたらいいの?

それぞれ扶養に入れるための手続きは下記のようになります。

「税法上の扶養」の場合には、年末調整関係書類のなかの「扶養控除申告書」に記入して会社に提出する。

「社会保険上の扶養」の場合には、「健康保険被扶養者異動届」及び、配偶者を扶養に入れる場合には「国民年金第3号被保険者関係届」を協会けんぽもしくは健康保険組合、所轄の年金事務所などに提出する。(勤務先の総務などが窓口の場合はそちらに)

それぞれの手続きもいろいろあります

扶養に入れるかどうかは選択出来るの?

ここまで2つの扶養についてその内容や違いなどをお話してきましたが、こんな疑問を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

扶養については申告主義になっておりますので、条件を満たしてるからと言って必ずしも、扶養にしなければいけないというものではありません

ですので、ご自身で選択できるのです。

大半のケースで税負担が軽減出来たり、社会保険料の支払いが不要になるのに扶養にしないなんてあり得るのと思われるかもしれませんが、人は常に合理的とは限りませんし、人間関係的に扶養にしないという選択をされる方ももちろんいらっしゃるでしょう。

あと、扶養にしないことのほうがメリットがあるケースはないのかという疑問が浮かぶかもしれません。

実はそのケースは存在するのです。

それはどういったケースかといいますと、

・ 対象者の年収によっては対象者本人が所得を申告して納税した方がトータルでの納税額が減るケース

・ 介護保険施設の費用負担限度額が上がってしまうケース

・ 高額介護サービス費の金額が減ってしまうケース

などです。

上記のケースは統計的には少ないケースだと思いますが、扶養しないことのほうがメリットがあるケースにはなります。

これらに当てはまることがないかも踏まえて判断するようにしてください。(執筆者:CFP認定者、1級FP技能士 小木曽 浩司)