スタグフレーションとは「スタグネーション(停滞)」と「インフレーション(物価上昇)」を掛け合わせた造語で、景気後退しているのに物価が上昇する状態を指します。

このスタグフレーションというのは、非常にやっかいな状態で各国の中央銀行もその対応には苦慮することでしょう。

今回はそんなスタグフレーションリスクが高まる状況の中、住宅ローン金利の動向について考察してみたいと思います。

スタグフレーションリスク

なぜ、スタグフレーションリスクが高まっているのか?

スタグフレーションリスクが高まっているのはもちろん、ロシアのウクライナ侵攻による地政学リスクとロシアへの経済制裁による景気悪化の見通しによるものです。

もともとパンデミックによるサプライチェーンの混乱と労働力不足などで欧米などのPPIやCPIが高止まりしていた中、上記によるエネルギー価格等の急上昇が重なり、過去数十年で物価上昇圧力が最も強まっているのです。

スタグフレーション時には金利は上がるの? 下がるの?

一般的には、景気悪化局面では金利は下降し、物価上昇局面では金利は上昇します。

しかしながら、スタグフレーションというのはこれが同時に起こる事ですので、どちらに転ぶかは正直、各国中央銀行の金融政策方向次第でしょうか。

執筆時点では、FRBは3月にテーパリング終了、FOMCで概ね0.25%の利上げ、それにあと年内5~6回程度の利上げをするとの方向性が市場では織り込まれています。

ECBはテーパリング、年内の利上げ方向です。

それに対して、日銀はまだ金融緩和政策維持を堅持しています。

住宅ローン金利の動向は?

住宅ローン金利については、金利タイプにより影響を受ける指標が異なるため、方向性が一致するとは限りません

変動金利などの短期ものは短期プライムレートの影響を受け、10年以上固定の長期ものについては10年国債利回りなどの市場の影響を受けます。

短期プライムレートについては、日銀が掌握していると言えますので金融緩和政策が維持されるのであれば、現状水準が維持されるでしょう。

ということは、3月の日銀による金融政策決定会合でサプライズでもない限り、変動金利などの短期ものの住宅ローン金利は現状水準ということになります。

10年国債利回りにつきましては、1月から2月にかけては米利上げ観測の波及で上昇していたのですが、現在は落ち着いた感があります。

長期ものの住宅ローン金利については、3月は概ね少し上昇しました。

これは、金融機関の政策的な意図も含まれていると思われます。

4月以降につきましては、ウクライナ侵攻の動向やアメリカの利上げ後の経済動向次第で金利圧力がどちらに振れるのかによると考えます。

あと、金利上昇圧力が増した場合に日銀のイールドカーブコントロールがどの程度効力を発揮できるかでしょう。

今後は色んな情勢が金利に影響を及ぼし複雑化します

これまでは世界全体がパンデミックによる景気悪化を受けて同方向の超金融緩和政策を行ってきましたので金利は各国とも低水準で推移してきました。

しかし、今後は国によってさまざまな状況が違ってきてしまいましたので金融政策の方向性も違ってきます。

その違った金融政策による影響がそれぞれの国にどう波及するかは未知数です。

住宅ローン金利動向について断言することは難しいですので、気になるトピックなどをまとめました。

短期ものの金利について

まずは、変動金利などの短期ものにつきましては、日銀の金融緩和政策が維持される限り、ほぼ現状水準だと考えます。

気になるトピックとしましては、日米金利差などが開いて円安がどんどん進んだ場合、夏の参議院選挙を前にして金融緩和政策を維持しつづけられるのかです。

維持出来なければ、早ければ秋以降に金利が少しづつ上がるかもしれません。

あと現在、変動金利などの適用金利(基準金利ではない)が低いのは、各金融機関による金利の優遇幅が大きく設定されているためです。

しかしながら、調達金利や人件費などの固定費を考えますといつまでもこのままというわけにはいかないでしょう。

過去の大きな利ざやの恩恵ももうそろそろ限界のはずです。優遇幅の動向には注意してください。

長期ものの金利について

10年以上固定の長期ものの金利につきましては、まずはウクライナ情勢がどうなるのかでしょう。

リスクセンチメントが悪化すれば、金融正常化の流れが中断する可能性があります。

金融正常化が予定通り進行していけば、金利は少しずつ上昇していくものと考えますが、その際の日銀のイールドカーブコントロール次第で金利の方向性が決まるでしょう。

住宅ローン金利につきましては、まず先に長期ものの金利が上がり始めて、その流れが進めば次に短期もの金利が上がる流れになります。

過去数回長期ものの金利が上がった時期はありましたが、短期ものの金利までその影響を及ぼしませんでした。

しかし、スタグフレーションとなればこれまで通りとはいかないでしょう。

住宅ローン金利動向につきましては、今年は元々、欧米などの金融正常化の動きが取り沙汰されておりましたし、住宅ローン減税の控除率の1%から0.7%への引き下げもあり、複雑化することが予想されました。

そこへロシアによるウクライナ侵攻ですので、より金融政策が難しくなり、金利の方向性を読みづらくしております。

状況次第でどちらにも振れる可能性がありますので、情報のアンテナの感度を高めておいてください。(執筆者:CFP認定者、1級FP技能士 小木曽 浩司)