今さら聞けないけれど、今だから知りたい疑問に銀行員が答えます。

「2022年の住宅ローン金利はどうなる?」

→ 極端に物価が上昇した場合は、金利上昇の時期が見えてくるかもしれません。

「住宅ローンの固定金利が上昇中! 変動金利はいつ上昇するの?」

→ 固定金利は上昇する可能性があり、変動金利が急激に上がる可能性は低い

これはお金に関するインターネットサイトなどで目につくタイトルと、その結論(2022年5月)です。

他人の記事を批評するわけではありませんが「金利について教えてくれるかも?」とタイトルで期待させて、最後には結論をはぐらかすような記事が目に付くように感じます。

とはいえ、こうした記事が増えたのも住宅ローンの金利が注目されているからでしょう。

 

そこで今回は、金利に関する記事や情報を読み解くために

「住宅ローンの金利は上昇しているの? それともこれから上がるの?」

「金利って、なにがどうなると変動するの?」

「そもそも変動金利ってなに?」

こういった「今さら聞けないけれど、今だから知りたい疑問」に、勤続30年の銀行員としてお答えします。

変動金利とは

 

固定金利と変動金利~住宅ローン金利の種類

住宅ローンの金利には、大きく分けて3つの種類があります。

<住宅ローン金利の種類 カッコ内は2022年5月の金利水準・筆者調べ>

1.  固定金利型:(1.350%・年利)

2.  金利ミックス型:(0.950%・年利)

3.  変動金利型:(0.310%・年利)

変動金利についてはのちほど詳しく触れますので、はじめに固定金利型とミックス型を簡単に説明します。

固定金利型

金利が固定(FIX・フィックスされているとも)されているのが固定金利型です。

呼び方は他に「超長期固定金利型」「全期間固定金利型」などがあります。

参考にメガバンクでは

『超長期(全期間)固定金利型』(りそな銀行)

『超長期固定金利型(全期間固定)』(三井住友銀行)

『ずーっと固定金利コース』(三菱UFJ銀行)

などとなっており、各銀行ともすべての期間で固定金利だとアピールしています

このように、固定金利型は原則としてローンの第一回返済から最終回まで、契約時に決められた金利が適用され、途中で変更されることがありません。

その他にも

・ 金利はローンを契約する時点の、金融機関が設定した金利が適用される

・ 金利水準は金利情勢や将来の予想などから、金融機関が独自に決める

・ 変動金利が上昇するようなことがあっても、固定金利は金利が変わらない

・ 逆に変動金利が下降しても、固定金利では金利が下がることもない

・ 固定金利で代表的なものは公的融資のフラット35(住宅金融支援機構)

・ 全額繰り上げ返済や、一部を返済するときに費用が必要になることもある

と言った特徴があります。

金利ミックス型

一定の期間は固定金利 → 期間終了後に金利を再び選択するのが金利ミックス型です。

他にも「当初固定金利型」「固定金利特約型」などとも呼ばれています。

例1)最初に3年間の固定金利 → 次に5年の固定金利を再選択

例2)最初は変動金利にして、自分のタイミングで5年固定金利を選択

例のように、原則として「固定金利と固定金利、あるいは固定金利と変動金利のあいだを行ったり来たりできる」仕組みになっています。

*金利のラインナップや選択できるルールなどは金融機関により違いがあります

その他の特徴は以下のとおりです。

・ 金利は選択をする時点の、金融機関が設定した金利が適用される

・ 変動金利が上昇しても、固定金利期間中は金利が変わらない

・ もちろん変動金利が下降しても、固定金利期間中なら金利が下がることはない

・ 一度固定金利を選ぶと、選択した固定金利の期間(年数)は変更できない

・ 変動金利を選択した人は、いつでも固定金利に変更できる

・ 固定金利を選択するときに手数料が必要な場合がある

原則として固定金利の期間中は全額繰り上げ返済や、一部を返済ができない

住宅ローンの金利を考える

変動金利は「変動」というより「連動」

住宅ローン変動金利は「基準金利」に連動して変動(上下動)します。

いきなり突き放すつもりはありませんので、もう少しかみ砕いて表現します。

住宅ローンの変動金利では、金利を決めるために基準となる金利(基準金利)があり、その基準金利が上がればローン金利も上がり(これを「連動」と表現します)、逆に基準金利が下がればローン金利も下がる仕組みになっています。

このように、変動金利は変動というより連動とも言えるのです。

ここで、変動金利のポイントをまとめました。

<変動金利のポイント>

・ 【基準金利に連動】

金利は基準金利に連動し、基準金利はさまざまな要因で常に上下動する可能性がある

【年2回見直し】

年2回(原則4月と10月)見直され、金利が変動することがある

【返済額5年間固定ルール】

金利が変動したあとの新返済額は、そこから5年間固定される

【1.25倍(125%)ルール】

返済額が増える場合は、前の返済から1.25倍を超えないように調整される

【未払い利息】

金利上昇時には未払い利息が発生することもある

基準金利とは?

銀行などの金融機関では、原則として「短期プライムレート」(金融機関が1年以内の短期融資をするときの最優遇金利)をもとにしています。

そして、この短期プライムレートにプラス1%上乗せしたものが住宅ローンの基準金利になっています。

基準金利」とは金融機関が住宅ローン金利を決定する基準となる金利のことで、「店頭金利」「規定金利」などとも呼ばれます。

言ってみれば、基準金利は商品でいう「定価」に当たります。

そして実際には定価(オープン価格とも)よりも低価格で売っている商品があるように、住宅ローンでも実際に適用される金利は、基準金利より低い場合が多いのです。

この場合、住宅ローンでは値引きやセールとは言わず「優遇」と表現します。

景気が上向くと金利も上向く~金利が変動するルール

短期プライムレートは市場の金利情勢により変動する可能性があります。

銀行は融資をするための資金を金融市場から調達するのですが、この市場金利は社会情勢や景気動向に左右され、日々目まぐるしく動いています。

そのため銀行は資金調達するコストの上下動に合わせて、短期プライムレートを随時変更することがあるのです。

経済の原則では、金利は景気が上向くと上昇すると言われています。

ですから「金利が上昇するからローン金利が上昇する」よりも、金利上昇で銀行の仕入れ価格(資金調達コスト)が上昇すると、商品(ローン金利)も値上げされると言えるのです。

過去、変動金利は上がったのか?下がったのか?

変動金利の仕組みと、景気に左右されて上下動すると説明したので、現在までの推移を見てみましょう。

<住宅ローン変動金利の推移> (メガバンクの基準金利・年利・筆者調べ)

・ バブル期の1990年は8.5%

・ バブル崩壊後の1991年から5年で急激に低下し3%を切る

・ バブル崩壊を経てひと段落・2001年4月~2006年10月まで2.375%が続く

・ その後ゆるやかに上昇して2007年10月に2.875%

・ 2009年1月に2.475%となり、現在まで2.475%のまま変わらず

私が銀行に入社した今から30年前、バブル期の1990年ではメガバンク(当時は都市銀行)の住宅ローン変動金利が8.5%でした。

いっぽうの預金は、郵便局の定額貯金が6.33%(3年以上の利回り)で、今ではとても信じられない高金利だったことがわかっていただけると思います。

それと同時に、これだけローンが高金利でも、当時ローンを組んでいた人は返済できていたのですね。(なお、この点については別の記事で詳しく解説します)

話しを戻すと、住宅ローンの変動金利が景気と連動してきたことがわかると思います。

そして金利動向は社会情勢や政情不安などにも影響され、必ずしも法則通りにはならないので、金利の予想は難しいのです。

金利予測はむつかしい

住宅ローンの変動金利2つの「安全装置」

住宅ローンの金利は、バブル崩壊を経て下降を続け、そのあとは現在に至るまで最低ともいえる低金利が続いてきました。

しかし、下がるということは上がる可能性もあるということで、そのため金利上昇が騒がれ始めているのが現在の状況です。

では、住宅ローンの変動金利が実際に上昇したときにどうなるか、ここでは金利上昇に対する

「返済額5年間固定ルール」

「1.25倍ルール」

という2つの安全装置について説明します。(ルールの表現は金融機関で異なります)

返済額5年間固定ルール

金利が変動しても、借入から5年間(返済中の人は前回の金利変動から5年間)返済額は固定され変わらないのが「返済額5年間固定ルール」です。

ところで、ここまでしつこいくらい返済額と表現したのには、ひとつ理由があります。

というのも、返済額とは毎回口座から引き落とされる金額のことで、ローンの元金と利息を組み合わせた元利金であり、返済額が変わらなくても内訳は変わっているからです。

たとえば変動金利の住宅ローンで毎月10万円の返済が口座から引き落とされている人がいるとイメージします。

イメージしやすく表現したもので、実際には1万円単位で急激に変動することはまずありません

この人の返済額を分解して金利の変化で内訳が以下のように変わるイメージです。

【現在】(元金5万円)+(利息5万円)=返済額10万円と仮定します。

【金利が上昇】(元金4万円)+(利息6万円)=返済額10万円

【金利が下降】(元金6万円)+(利息4万円)=返済額10万円

・ ローンの金利が上昇すれば返済額のうち元金が減り金利が増える

・ 逆にローン金利が下降すれば返済額のうち元金が増え金利が減る

という仕組みになっているのです。

このように、返済額が固定されると言っても、支払う元金と利息の割合が水面下で変わっている点はぜひ覚えておいてください。

しかし、金利上昇があっても毎月の返済が5年間は変わらないのは家計にとって安心なのは事実です。

125%ルール

金利が上昇して返済額が増える場合でも、それまでの返済額に対して125%(1.25倍)を超えないのが125%(1.25倍)ルールです。

例えばいま、毎月10万円返済している人がいて、金利が急上昇しても最高で12万5,000円(いまの返済に対し125%)でとどめるという仕組みです。

その他の特徴として

・ 返済額の見直しは5年ごと(返済額5年間固定ルールがあるので)

・ 金利上昇で前回の125%になり、さらに金利が上昇するとまた125%が限度

(10万円 → 12万5,000円 → 15万6,250円 → 19万5,312円・・・)

・ 逆に金利が下降し返済が減る場合の下限はないのが原則

・ 返済額が減少する場合は、金融機関によって選択できる

(1) そのまま減額する(10万円 → 9万円など)

(2) 返済額は同じままにして、返済期間を短縮する(毎月返済は10万円のままにしたので、金利減少分で返済期間が1年短くなる)

・ 5年ごとの見直しで125%を繰り返しても金利が上昇し続けた場合は、最終的にまとめて大きな返済をしなければいけない可能性もある。

最後にあげた最終的にまとめて大きな返済が必要になるのが「未収利息」(金利が上昇しても125%ルールの制限があるので払いきれなくなった利息)というものです。

ただし、これもあくまでローンのきまりごととしての話しで、実際に未収利息が発生するようなケースはあまり想定できません

また、仮にそうした事態になる場合も、金融機関は途中で返済の見直し(返済期間を延長して、まとめて返済しなくて済むようにする)などを提案するはずなので、それほど心配することはないと、銀行員の私は考えています。

参照:りそな銀行

変動金利を知れば、対策も見えてくる

変動金利を知れば、そのリスクや対策も見えてきます。

変動金利を知らなければ、これからどうするか、不安が大きくなってくるのではないでしょうか。

現在は情報が多く便利な反面、どれを選択すればいいか、どれが正しくどれが間違っているのか、を判断するには基礎知識が大事です。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)