※本サイトは一部アフィリエイトプログラムを利用しています

注目記事

退去時の「原状回復トラブル」 回避するために知っておきたい知識や借主が行うべき対策を紹介

ライフ 住宅
退去時の「原状回復トラブル」 回避するために知っておきたい知識や借主が行うべき対策を紹介

賃貸住宅で多いトラブルが退去時の原状回復トラブルです。

原状回復とは、住宅を借主(住宅を借りる人)が入居する前の状態に戻すことですが、その費用を借主と貸主(住宅を貸す人)のどちらが払うかで揉める原状回復トラブルが多発しています。

中でも、原状回復を理由に敷金が返却されなかったり、高額な原状回復費用を貸主から請求されたりして訴訟に至るケースもあります。

そこでこの記事では、原状回復トラブルを回避するためにぜひ知っておきたい原状回復の基礎知識や、借主が原状回復トラブルを回避するために講じるべき対策について解説します。

退去時の「原状回復トラブル」

<クイズ>借主に原状回復費用を全額負担する必要が生じるのは?

最初に一つクイズを出します。

次のケースのうち、借主が原状回復費用を全額負担する必要が生じるのはどのケースでしょうか?

1:壁紙のわずかな傷を理由に全面張替え費用を全額を請求された

2:契約時に借主が提出した現状確認書を管理会社が紛失し、入居時についていた傷まで含めた修復費用を請求された。

3:退去時にクロスの張替えやフローリングの色落ちなどの高額な原状回復費全額を請求された

4:古い物件を退去する際に屋根や壁の雨漏り修繕費用60万円を請求された。

5:借主がジュースをこぼしてシミをつけたタイルカーペット1枚分の費用を請求された

※このクイズは東京都や国民生活センターに寄せられた原状回復トラブル相談事例や私自身の体験を選択肢としています。

参照:東京都「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン第4版(PDF)」(1、2)、国民生活センター「賃貸住宅の敷金・原状回復トラブル」(3、4)、筆者の体験(5)

以上のクイズの答えは5です。

国交省の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」によれば、借主に原状回復費用全額負担の責任が発生する可能性が高いのは5のケースだけです。

他のケースでは、借主の原状費用負担責任はゼロまたは一部負担となる可能性が高くなります。

以上のクイズは「原状回復費用の負担責任が借主にあるか否か」についての質問でしたが、それが貸主と借主との間で発生する「原状回復トラブル」において大きな争点となります。

そのことをふまえ、次は「原状回復費用の負担責任は貸主と借主のどちらにあるか?」について国が定めた判断基準をお伝えします。

原状回復費用の負担責任は「借主の責任でついた傷や汚れか?」が重要な判断基準に

国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、

・貸主は経年劣化や通常損耗でできた傷や汚れについて原状回復費用の負担責任を負う

・借主は自分の責任でついた傷や汚れについて、原状回復費用の負担責任を負う

とされています。

参照:国交省 (pdf)「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

テキスト 自動的に生成された説明

≪画像元:東京都「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン第4版」(※)≫

※国交省のガイドラインをもとに東京都が作成したガイドライン

つまり、「借主の責任でついた傷や汚れか?」という点が、借主に原状回復費用の負担責任が生じるかどうかの重要な判断基準となるわけです。

ただ、退去時にその判断を行うのは貸主です。

また、借主に負担責任がない部分まで費用を請求する貸主もいます。

しかし、借主が原状回復についての知識を持っていれば、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を盾に貸主からの不当な請求を拒絶することが可能です。

一方、借主の責任でついた傷や汚れについては借主に原状回復費用の負担責任が生じるため、そのような傷や汚れが多いほど原状回復費用の負担は重くなります。

また、入居前から傷や汚れがあったことを借主が証明できない場合も原状回復費用の負担が重くなるので注意が必要です。

借主のできる対策

退去時に借主の原状回復費用の負担責任を少しでも軽くするためには、以下の3つのタイミングで対策を行う必要があります。

1 入居前の対策

入居前の対策として「入居前からある傷や汚れのチェックと証拠残し」は欠かせません。

そのベストタイミングは賃貸契約前に住宅を内見する時です。

賃貸住宅の内見時は、住宅内外の傷や汚れを隅々までチェックしながら写真撮影もできます。

それによって入居前に傷や汚れがあった証拠が残り、退去時に原状回復トラブルが起こりにくくなります。

2 入居中の対策

入居中の対策で最も重要なことは、「借主がつけた傷や汚れを最小限にとどめる」ことです。

住宅に修理が必要な問題が発生したら決して放置せず、すぐ貸主に連絡しましょう。

住宅設備等の修理は原則として貸主が行いますが、貸主の許可を得て借主が修理を行うケースもあります。

また、借主がつけた汚れや傷は借主の責任となるため、

・ 定期的に掃除を行うなどして住宅をきれいに使う

・ 不注意な行動など傷や汚れがつく原因を極力作らないようにする

などの心掛けで傷や汚れを最小限にすることも、原状回復トラブル対策になります。

退去時の対策

退去時の原状回復トラブル対策も重要です。

・ 住宅全体を見回して目立つ汚れがあればすべて掃除する、

・ 網戸やふすまの破れなど、借主の自己破損部分を可能な限り修理する

など、極力入居前に近い状態にして貸主に戻すと、高額な原状回復費用を請求されない可能性が高くなります。

住む前から「原状回復」について知っておこう

賃貸住宅に住む前から原状回復について知っておけば、退去時に貸主との間で原状回復トラブルが発生しても冷静に対処でき、余計な出費を防げる可能性が高くなります。

※東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン第4版」は、「原状回復」について図解つきでわかりやすく解説しています。

ただ、それ以前に「賃貸住宅を粗末に扱えば貸主がどう思うか?」という視点を持つことも必要です。

貸主も感情を持つ人間ですから、借主が賃貸住宅を丁寧に使えば好印象を持ち、粗末に使えば不快感を抱きます。

そのような貸主の感情が原状回復トラブルの発生確率を左右する可能性は高いので、普段から賃貸住宅を丁寧に使うことを心掛けましょう。(執筆者:元銀行員 FP2級 大岩 楓)

《大岩 楓》
この記事は役に立ちましたか?
+6

関連タグ

大岩 楓

執筆者:元銀行員 FP2級 大岩 楓 大岩 楓

元銀行員にしてベテラン主婦のフリーライターです。クレジットカードや節約記事などの執筆のほか、既成記事の校閲も行っています。50代になった現在、最大の関心事はずばり「老後のお金」今後のマネープランについて真剣に考え始めました。そこで自らの勉強も兼ね、銀行員時代に培った金融知識と25年以上の家計管理経験をベースにお金に関するさまざまな事柄について深堀りしていきます。 <保有資格> FP2級 寄稿者にメッセージを送る

今、あなたにおススメの記事

特集