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放置して使えなくなった郵便貯金の「権利消滅」、銀行預金の「休眠預金」は数百億 気を付けるべきチェックポイント

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放置して使えなくなった郵便貯金の「権利消滅」、銀行預金の「休眠預金」は数百億 気を付けるべきチェックポイント

「郵便貯金は長期間放置すると権利が消滅してしまう」

「いまの郵便貯金は権利消滅しないけれど、10年以上放置すると銀行預金と同じく休眠預金になってしまう」

これらは最近、民営化前の郵便貯金の一部が権利消滅してしまい、それが何百億円という大きな金額なことで話題になっていることです。

そこで今回は、民営化前の郵便貯金を持っている人に、

  • 権利が消滅しないよう今から注意する点
  • 銀行預金とゆうちょ貯金が休眠預金担ってしまわないように注意する点

を銀行員が解説します。

貯金を放置しない

正しい情報を知る、自分の預貯金を把握する

権利消滅や休眠預金について、正しい情報を知り、そのうえで自分の預貯金を把握することについて解説します。

「民営化前の郵便貯金の権利消滅」「現在のゆうちょ貯金や銀行預金の休眠預金」について整理しましょう。

郵政民営化より前(2007年9月30日まで)の郵便貯金は満期から20年2か月経つと権利が消滅する。(銀行の普通預金に相当する通常貯金など例外あり)※1

具体的には

  1. 満期後20年間動きのない郵便貯金の預金者に、払戻しをお願いする催告書を発送する※2
  2. 発送後2か月たっても払戻し請求がなければ、その郵便貯金の権利は消滅する仕組み

休眠預金とは

預金者等が名乗りを上げないまま10年間放置された預金のこと。

  • 民営化後、現在の郵便貯金と銀行など金融機関の預金が対象にな
  • 休眠預金になると、その預金は所定の手続きを経て預金保険機構に移され
  • 休眠預金は、国民のために休眠預金を活用するという「休眠預金等活用法」により、公共福祉などに使われる

ただし休眠預金になっても権利が消滅することはなく、払い戻すことは可能なので権利が消滅するわけではありません。※3

両者の最も大きな違いは、休眠預金では所定の手続きを取れば、自分の預金を取り戻すことも可能なのですが、郵政民営化前の郵便貯金は「権利が消滅する」、つまり自分の貯金が自分のものでなくなるという点です。

参照:

※1 ゆうちょ銀行/長期間ご利用のない貯金のお取り扱いについて

※2 ゆうちょ銀行/「権利消滅のご案内(催告書)」を受け取られたお客さまへ

※3 政府広報オンライン/放置したままの口座はありませんか? 10年たつと「休眠預金」に。

親が自分のために作った口座を調べる方法

権利消滅も休眠預金も大変なことなので、そうならないようにまず自分の預貯金を調査する方法を知っておきましょう。

たとえば郵便貯金の場合は「現存調査」といって、ゆうちょ銀行の窓口で所定の手続きをとればゆうちょ銀行で預金を調査してくれ、後日郵送してもらえます。

親が子どもの貯金口座を作ることはよくありますが、こちらも名義が本人であれば、すべて一緒に調べてくれます

親が作っても本人が作っても、本人名義の預金はすべてひとくくりになり、これを「名寄せ」と呼びます。

銀行預金の場合も、窓口などで調査してもらえますが、ゆうちょ銀行も含めいきなり来店しても時間を取られるだけで、予約がないと窓口で応対もしてもらえない場合もあります。

まずは電話で問い合わせてからのほうが良いでしょう。

参照:ゆうちょ銀行/現存調査(貯金の有無の調査)

「名寄せ」して自分の預金を把握する

銀行など金融機関では、税務署による調査や自己査定(銀行が融資先の業況などを点数化して、融資債権を分類する作業)など必要に応じて預金者がその銀行に預けている預金を調べてまとめることを「名寄・名寄せする」と表現します。

自分自身の預貯金を自分で名寄せすることを銀行員はおすすめします。

名寄せと言ってもどこかに提出するわけではないので、エクセルなどの感嘆なものでOKです。

自分や家族が分かれば充分です。

大事なのは、自分の預金が

  • どこに
  • いくら
  • 預金の満期時期
  • 運用商品なら満期の有無や中途解約したいときに解約ができない期間

などをつかむことで、突きつめれば自分に万一のことがあったときに、残された家族が困らない「置き手紙(遺書や遺言では大げさなので)」のようなものです。

ちなみに私はこの「自分の名寄せ・置き手紙」に携帯電話やパソコンのID・パスワードの一覧も加えて、いざというとき奥さんが探せばすぐわかるところに隠してあります。

このように、自分で自分の名寄せをしておけば預貯金を把握でき、権利消滅や休眠預金になることを防ぐ一つの手段になると思います。



「規定」は大事、必ず読んでください!

預金も貯金も預金者であるあなたと金融機関の契約です。契約なので契約条項、決まりごとなどがあり、これが預貯金の「規定」と呼ばれるものです。

規定には法的拘束力などはないので、仮に規定を守らなくても罰せられるようなことはありません。

しかし預貯金が金融機関との契約である以上、要は「規定に書かれていることを守らなかったら、なにか起きても責任は負いませんよ」と言われていることになるのです。

たとえば現在の郵便貯金でも、もちろん銀行預金も休眠預金になる可能性があるという点は規定に書かれています。※5.6

通常、預金の規定は新規で口座を作ったときに窓口で受け取るものですが、最近はインターネット取引も増えているので公式HPなどで見られます。

重要ポイント

預金規定に記載されている内容は、

  • 窓口で規定を受け取ったとき
  • ネット経由ではホームページに掲載する

これで「説明した」ことになり、規定については理解して了解したことになります

したがって預金規定で公表されている内容を「知らなかった」「聞いてないよ!」といっても簡単には通用しない場合があります。

預金などの規定はごく当たり前のことが書かれているもので、決して「目を皿のようにして隅から隅まで一字一句見逃さないようにしないと足元をすくわれる」ようなものではありませんが大事な事柄が書かれているので、一度は目を通すことをおすすめします。

参照:

※5 ゆうちょ銀行/定額貯金規定(pdf)

※6 三井住友銀行/休眠預金等活用法に係る追加規定(pdf)

預金を放置しないための「5つのチェックポイント」

民営化前の郵便貯金を持っている人、持っているかもと心当たりがある人への注意点、そして休眠予期金にならないようにチェックすべき点を5つ紹介します。

1. 満期のとき

以前は、定期預金が満期になる少し前に、「満期のお知らせ」などが郵送される用になっていました。

長引く低金利時代の弊害で、郵送されても目を通さずに捨ててしまわれる人もいると思います。

民営化前の郵便貯金の場合は満期を迎えてしまうと、そこから20年2か月がスタートすることになるので注意が必要です。

最近は銀行などで満期のお知らせを廃止するところもあり、さらに自分の預金を自分でつかみにくくなっているので気をつけたいところです。

注意点

ゆうちょ銀行や金融機関からこういった郵便物がめったに来ないケースです。

送られる心当たりがなければいいのですが、場合によっては大事なお知らせまで届かず、あとで困ることもあるからです。

2. 転居したとき

進学や就職、結婚などで転居したとき、金融機関に届け出をしていますか。

転居したことは、届け出をしない限りゆうちょ銀行や金融機関では把握できません

転居の届け出をしていないと、上記した満期のお知らせ以外の「権利消滅のご案内(催告書)」(民営化前の郵便貯金権利消滅【参考②】)も、届かないことになります。

これらお知らせのことを「通知」と呼びますが、この顧客あての通知は届け出住所宛に発送すれば、届いても届かなくても「届けた」ことになるので注意が必要です。


郵便貯金や銀行の預金規定には、通知に関して以下のような記載があります。

「お客様宛の通知は、届出のあった氏名及び住所にあてて通知し又は送付書類を発送すれば、仮に配達されなかった場合でも、配達されたものとみなします。」また住所変更などの届け出についても同じように、以下の記載があります。「氏名、住所その他の届出事項について変更の届出がなかったことにより生じた損害については、当行に過失がある場合を除き、責任を負いません。」


住所変更の届け出をしていなかったので、大事な通知を受け取れずに預金の権利が消滅してしまうことも可能性としてゼロではないということなので注意をしてください。

3. 結婚や離婚をしたとき

上記した通知については、結婚や離婚(*「姓」が変わるなど預金の内容に変更が生じる場合)など名前が変わる場合も同じです。

氏名が変わると郵便物が発送先へ返却されることもあります。

これは銀行からの通知も同じで、変更の届出がない限り、宛名は変更前の氏名のままだからです。

手続きについてですが、住所変更も同じように今ではインターネット経由、あるいは郵送で変更手続きをしてくれる金融機関もありますので、まずはホームページや直接問い合わせてみるといいでしょう。

氏名の変更では新しい名前の通帳に繰越すので、これは休眠預金でいうところの「動き」があったことになります。

動きがあることを「異動」と表現し、休眠預金では以下のような変更が「異動」となり、休眠預金にならないとされています。

休眠預金になるのをストップできる「異動」に該当すること

  • 入出金(金融機関による利子の支払を除く)
  • 通帳や証書の発行、記帳、繰越
  • 預金者本人から銀行への残高照会
  • 住所氏名など届け出次項の変更

異動については金融機関により異なりますので、ご自身で確認してください。

4. 支店がなくなったとき(合理化による店舗統廃合など)

合理化策などで支店がなくなったり、他の支店に統合されたりなどしても、引き継いだ支店で預金取引は継続されます。

この場合も、事前に「支店統廃合のお知らせ」などの通知が郵送されるので、ここでも住所変更していない人には通知が届かないことになります。

届かなくても届いたことになる点も同様です。

支店の統廃合では、いくつか新店舗の候補から自分の希望する支店を選べる場合もあるので、通知が届くように住所などの変更を届け出ることの大切さを覚えておいてください。

支店統廃合でも通帳繰り越しが発生しますので、繰り越しが「異動」になる金融機関なら、ここで休眠預金になるのを防止できます。

5. 家族など身内が死亡したとき

家族や身内が死亡したときは、その人の預貯金を調べることが必須になります。

どこに預けていたかわからないケースもあり、これも権利消滅や休眠預金が発生する原因のひとつと言えます。

預貯金を相続する場合、それぞれ金融機関に残高証明書の発行を依頼するなどして故人の預貯金を調べ(名寄せ)することになりますが、死亡した後は遺族でも証明書の発行などには証明書類が必要になり、また時間と手間もかかります。

1円でも大切な財産

郵便貯金の権利消滅や休眠預金になるのを防ぐ方法に共通しているのは、

  • 正確な情報を知る
  • 自分で自分の預金をしっかり把握しておく
  • 家族など将来遺すべき人にもわかりやすく記録しておく

という点です。

前もってまとめてあればこうした調査の手間が省け、「預けっぱなし」を防止できます。

たとえば数千円単位の預貯金口座は本人も忘れていることがあるので、権利消滅や休眠預金になってしまう可能性がありますが、たとえ数千円でも、1円であれ大事なお金です。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)

《加藤 隆二》
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執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二 加藤 隆二

バブル期に入社して、以来銀行一筋30年。お金にまつわるさまざまな相談にこたえてきました。時には返せなくなってしまった人からの相談にも、可能な限り親身になって対応してきたつもりです。銀行員として「あなたのために、なにができるか考えます」 最初の挨拶はいつもそう言ってきました。年を重ねた今も、気持ちは変わっていません。銀行員として、読者である「あなたのために」役に立つ文章を書いていきたいと思っています。 寄稿者にメッセージを送る

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