「企業型確定拠出年金」・・・会社員の方が対象の確定拠出年金制度。
いまや加入者数は440万人を超え、導入している会社の数は16,564社。
会社が掛金を専用の個人口座に振り込み、社員はそれを元手にして、自分の責任で資産運用。自分の退職金を自分自身で作る仕組みです。
今年1月から、この仕組みの中に、社員が自分のお金を拠出して運用できるようになりました。
これを「マッチング拠出」といいます。
会社の掛金と自分の掛金を抱き合わせて、専用口座に振り込み、これまでと同じように運用するからです。
このマッチング拠出、個人が「私やりま~す!」と言って始められるものではありません。
労使でちゃんと合意し、規約やシステムなどを変更するプロセスが必要です。
枠組みができた1月から、5月末までの5ヶ月間で「マッチング拠出」を取り入れた企業数は782社。
どんどん増えてきています。
マッチング拠出のメリットは、自分のお金を運用して老後の年金の原資にすることができる点。しかも、大きな税制のメリットがありますから、町の銀行や証券会社、生命保険会社で老後資金の運用をするよりは、格段に有利です。
定期預金に預け入れるだけでも、町の銀行の定期預金より有利。
・税制優遇(その1)・・・・掛金を支払うタイミングでの優遇。
自分が拠出するお金は、給与天引きになりますが、その金額は所得控除を受けられます。
年収500万円の方が月1万円拠出すると、年間2.4万円の税金の負担が減ります。
・税制優遇(2)・・・・運用中の優遇。
運用中の利益が非課税です。預金の利息にも証券の譲渡益にもです。
したがって、投資信託などのリスク商品を買って、利益が出ても税金がかかりません。町の銀行・証券会社だと、利益を確定すると、再来年から20%の税金がかかりますから、大きな優遇です。
・税制の優遇(3)・・・・お金を受け取るときの優遇。
年金で受け取る場合も、一時金で受け取る場合も、特別な税優遇の仕組みが設けられています。
「これだけの大きな優遇がある代わりに、デメリットや注意点があるに違いない!」
・・・おっしゃる通りです。
原則60歳になるまで換金して引き出すことができません。
つまり、老後の資金準備という目的で優遇するんですから、老境にさしかかるまでは現金化させません、ということなんですね。
したがって、自分で拠出する金額は、老後に向けた準備資金として使えるお金に限定すべきです。
ゆめゆめ、子どもの教育資金の準備に使わないように。マイホームの頭金作りもNGです。
いくらたまっても、タイミングよく引き出せませんから。
さらにもうひとつ。
掛金に上限が設けられています。
たいへんな優遇措置があるのなら、月10万円自分のお金を拠出したいという人が出てくるかもしれません。・・・しかし、そうはさせない財務省。
税収が減りますから。
確定拠出年金以外にも企業年金制度がある会社の場合は、月額の掛金の限度額が25,500円です。このうち、会社が拠出している金額を差し引いた金額で、さらに会社が拠出している掛金以内の金額が、自分で拠出できる金額の上限になります。
確定拠出年金しか企業年金制度がない会社の場合の月額限度額は、51,000円です。そして同じように、このうち、会社が拠出している金額を差し引いた金額で、さらに会社が拠出している掛金以内の金額が、自分で拠出できる金額の上限になります。
私は、このマッチング拠出が広がってくると、個人が「個人年金保険」で老後の資金準備をするマーケットや、普通の証券会社などで毎月少額ずつ積立投信をして老後のためにコツコツ増やすマーケットが、ジワジワと浸食されるのではないかと思っています。
なぜなら、、、圧倒的に有利ですから・・・マッチング拠出のほうが。