先月、「65歳の雇用義務化、決定!」と書きましたが、実際には、「65歳定年の義務化」ではなく、「65歳まで希望者全員が働ける仕組みを導入することの義務化」のようです。つまりは、「社員全員が65歳に定年を迎える」のではなく、「希望する社員は全員65歳まで働ける」ということ。平成16年の法改正で、次のいずれかの措置をとることがすでに義務化されています。
1)定年の引き上げ
2)継続雇用制度の導入
(労使協定により基準を定めた場合は、希望者全員を対象としない制度も 可)
3)定年の定めの廃止
今年改正され、来年の4月から施行されるのは、上記2)について、(労使協定により基準を定めた場合は、希望者全員を対象としない制度も可)という部分が廃止されます。したがって「継続雇用希望者全員を対象としなければならない」となりました。このことは、「全員の定年が65歳になること」とは異なります。
ちなみに、サントリーホールディングスは、来年4月から「65歳定年制」を導入すると先日公表しました。サントリーは、上記1)の仕組みを取り入れ、社員全員の定年が65歳にななります。他の会社は、2)を採用しても3)をしても構いません。報酬を下げて再雇用しても構わないのです(この場合は2)です)。
日本マクドナルドは、2006年に定年制を廃止しましたが、今年の1月から、「60歳定年制」を復活しました。年齢に関係ない実力主義を浸透させるために定年の廃止をしたようですが、先輩が後輩を育成する文化が薄れてしまったがために、復活を決めたんだそうです。今後は再度、3つの仕組みのうちのどれを選択するか、決める必要がありそうです。
「65歳まで希望者全員が働ける仕組みを導入することの義務化」の背景には、公的年金の支給開始年齢の繰り下げがあります。勤労収入と年金収入のあいだに、無収入期間を作らないための措置。個人の生活を守るためです。
しかし、企業が仕組みを導入するには、その会社の長期的な人事戦略に基づいた形にしないと、形骸化したり、会社が思わぬ方向に向かってしまいかねません。