一時期「変額個人年金保険」がたいそう売れたことがありました。1999年に販売がはじまった変額個人年金保険は、2002年の銀行窓口販売の解禁をキッカケに、大幅に売れ始めました。2005年の新規の契約数は、2003年の実に3倍以上。その後、2007年夏以降から売れ行きが鈍り始め、リーマンショックの2008年秋以降は、保険会社が、リスク負担に耐えられないからと販売を停止するところが相次ぎました。
あのころ、いろんな銀行経由で商品を販売し、変額個人年金保険で存在感を高めていた「ハーフォード生命保険」のホームページを今見ると、「全保険商品の新規取扱いを休止させていただいております。保全手続サービスや増額のお取扱いを含むご契約に係るサービスは引き続きご提供しております」との記載が目に飛び込んできます。
あのころの変額個人年金保険は、退職金や余裕のあるお金を最初にまとめて支払い(一時払保険料)、それを投資信託のような値動きのある投資商品で運用し、最低7年~10年くらいの運用期間が終了したらそれまで貯まったお金を年金という形で受け取れるというものが主流でした。
運用期間終了時に、財産が増えれていれば、増えた分だけ余計に受け取ることができる。運用期間中に死亡した場合、その時に財産が元本割れをしていたとしても、一時払保険料相当額の死亡保険金は保証されている。そのため、「資産運用」と「保障」のいいとこ取りをした商品として人気が集まったのです。
ただ、注意すべき点もしっかりあり、おもなものは、次の2点でした。
1)運用期間中に解約する場合、その時の運用状況によって元本割れする可能性があること。 2)運用期間終了後に元本割れをしていたら、それ以後受け取る年金の総額は、当初支払った一時払保険料を下回るということ。
当初銀行の窓口で販売されていた変額個人年金は、上記のおもな注意点がありました。しかし、銀行のお客様には「2)」は馴染まないということで、その後、年金として支払うお金も、一時払保険料を下回らない商品が売り出され(「年金原資元本保証」と云われるモノです)、さらに、いいとこ取り商品として人気を博しました。
2003年~2007年ころは日本も世界も景気がよく、何に投資をしても儲かってよかったのですが、サブプライムローン問題、リーマンショックと、大きなマイナスイベントが相場を襲い、運用環境は急速に悪化しました。「年金原資元本保証」は保険会社にとってリスク負担が重く、「販売停止」の会社が相次ぎました。お客さんにとって都合のいい商品は、保険会社にとってはキツイ商品なんですね。
・・・・とまあ、いろいろ書きましたが、私が申し上げたいのは、現在はともかく、2002年~2008年くらいまでに変額個人年金保険を購入した方は、次の点を確認していただきたいのです。
現在の運用状況。一時払保険料と比較して、儲かっているか、損しているか? 儲かっている場合、現時点で解約した場合、解約返戻金をいくら受け取ることができるか?
「一時払保険料」<「解約返戻金」 となっていたら、解約を考えてもよいのではないかと思いますね。現在はご存知のように、運用環境はとても良くなっています。解約したら明らかに元本割れをしていた過去5~6年とは状況が違ってきています。当初の商品の多くが、「年金原資元本保証」でないことを知らずに購入している方もいると思います。
変額個人年金は、顧客が支払うコストも高く、運用商品としてはさほどメリットのあるものではありません。また、死亡保障の機能もさほどありません。なぜなら、1,000万円の現金で1,000万円の保険を買うようなものだからです。100万円の現金で1,000万円の保険を買うのであれば、まさに「保険」ですが、保険料と保険金が同額の場合、保険というより、貯蓄ですよね。
変額個人保険の死亡保障は、相続対策くらいの機能しか魅力的ではのではないでしょうか?「受取人を指定できる。一定の範囲で死亡保険金が非課税になる」ことです。「相続対策」という明快な目的で購入していないのであったら、やはり、「一時払保険料」<「解約返戻金」 となっていたら、解約を考えるよいキッカケになると思いますね。