ライフ・プラン相談をしていると、相談者が加入している生命保険が商品性は良いものの、実際に使うときになって使えないということに気がつくことがあります。
保険を選定するときは、「使うときのことを想定する」ことも大事だということを今回書きたいと思います。
海外持ち出し不可の保険に注意
例えば、「がん保険」です。
おそらく加入時点ではカタログや巷に溢れる情報を頼りに保険料や商品性を比較して、その商品を選択したに違いないでしょう。
「保障は終身なのか、定期なのか」
「定期の場合、更新時に無診査で終身に切り替え可能か」
「定期でずっといった場合の最終更新年齢は」
「上皮内がんは悪性新生物と同額保障なのか」
「がん診断一時金は一回限りなのか、複数回給付なのか」
「複数回給付の支払い要件も各社違いがあり、その内容はどこが良いのか」
「保険料の払込免除特則があるのか。その内容はどうか」
「通院特約はあるのか。その保障内容にはどう差があるのか」
「抗がん剤特約は分子標的薬やホルモン剤等も保障対象にしているか」
「がん先進医療は保険金請求時に立替えが発生する可能性あるか、それとも病院へ直接払いがあるか」
等々、選定のポイントはいくつもあります。
しかし、「保険を使う」- 自分が保険金請求をするときのことをイメージして商品選定をされている方はあまりいないようです。
ライフ相談をしていると、将来的に海外移住を考えている方と出会うケースが少なからずあります。「定年後はマレーシアに夫婦で移住したいと考えいるんですよ」とか「将来、海外移住したいという夢を実現するために、毎年リサーチかねてあちこち海外旅行してます」なんてニコニコ顔で夢を語られる方も少なくありません。また、「仕事柄、いつか海外へ長期駐在なんてこともあり得るんですよね」なんて仰る方もいらっしゃいます。
しかし、彼らが加入しているがん保険ですが、商品比較上は間違いのない選択はしているものの、海外移住後は現地では使えない、もしくは保険金請求で制限がでる惧れのある商品だったりすることがあります。
がん保険ジャンルで人気トップ3本指に入る損保系生保の終身がん保険の約款を紐解いてみましょう。例えば、がん診断給付金の項にこう規定されています。
実は損保系生保のがん保険の支払い要件は、日本の医師資格をもった医師にがん診断をされることが要件となっているところが殆どです。
終身がん保険に加入したのにも関わらず、外国で入院して外国人医師にがん診断されても、日本の医師資格がない医師の場合、約款に規定されている通り、保険金給付がまず難しくなります - 要は損保系生保の商品では海外持ち出しができないかもしれないということです。
がん保険を請求するためにわざわざ日本に帰国して日本の医師に診断してもらう必要がでてくるかもしれません。しかし、その日本医師はがん診断はできても、その病院で手術・入院でもしない限り、保険金請求書類の記入内容は制限されたものになるだろうし、そもそも海外で手術・入院分の請求はできません。
使う時のことを想定して、保険を選ぶことが大切
こういったことが想定されるのであれば、保障内容は下がったとしても、そういった国内医師規定がない保険会社の商品、例えば一部の外資系生保をチョイスせざるを得ないでしょう。
保険金請求の際は、保険会社所定の保険金請求書類を提出する必要があります。この書類は病院の医師に、その医師が診断した病気の内容や手術・入院内容等を記入し署名する項目があります。外資系生保の場合、海外での入院や手術を想定して、英語や中国語の保険金請求書類を用意しているところもあり、それ以外の外国語の場合はケース・バイ・ケースで柔軟に対応してくれるところもあります。
しかし、国内損保系生保では英文の保険金請求書類さえ準備されてないところもあります。そもそも、約款で「日本の医師資格」がないと、がん保険自体使えないということになり得ます。
これと同じケースが想定され得るのが3大疾病の保障を目的とする「特定疾病保険」です。こちらも3大疾病診断で、上記と同様の国内医師規程を持つ会社の商品もあります。
以上、一例としてがん保険を引き合いに出しましたが、「使うときのことを想定して、商品選定をする」ことも重要だということを是非認識して頂ければと思います。
こういったことに加入前に気がつくためにも、保険加入時に保険募集人が「契約のしおり・約款」を使って、保険業法第300条で定められている「重要事項説明」をしますが、これをおざなりに聞くのではなく、保険金請求のときを想定していろいろと質問してみると良いでしょう。