生命保険(死亡保障や医療保障)への加入を考えた時、日本の医療事情を理解しておく事が必要です。
これまで「死亡した時のリスク」については充分に考慮されてきましたが、「死亡しなかった時のリスク」については、あまり語られる事がありませんでした。しかし現在、医療水準が高度化した事や病気の質が変わってきたことで、「死亡しなかった時のリスク」に備える事の重要性が脚光を浴びています。
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「死なない」時代へ
厚生労働省発表の人口動態を元に、死亡率の推移を追うと興味深い事がわかります。1980年代前半まで、死因の第一位は脳血管疾患でした。
一方、2013年現在、死因の第一位は悪性新生物(ガン)であり、脳血管疾患は第3位、最盛期からは4割ほど少なくなっています。
この背景にあるのは、脳血管疾患の原因である「血中の血栓」を劇的に溶かす薬(アルテプラーゼ)が発明されたためです。しかし、脳血管疾患は発症(脳に血栓が詰まってから)から10分で後遺症が出始めると言われる病気であり、血栓を溶かすことが病気自体の根治でないことは明白です。
事実、脳血管疾患を原因とする「介護状態」は、平成19年のデータで「介護状態となった原因」の約5割であり、「脳血管疾患でなくなる方は減った」けれど「脳血管疾患で要介護状態になった方は増えた」事は明白であります。
これは他の病気にも言える事ですが、治療技術の進歩に伴い、それが直接の死亡原因になることは少なくなりましたが、それを起因とする「介護状態」に陥る事は増えてしまいました。
病気は「治らない」ものが主流へ
かつて、病気は「治す」ものでした。従来、病気の主流は感染症であり、その原因は細菌やウィルスでした。医療も「治す」事を目的に、服薬や診断を確立してきました。
ところが、現代は「生活習慣病」の時代であり、病気の原因は個々人のライフスタイルに大きく依存し、根治を困難にしています。
つまり、病気は「治す」時代から「治らない」時代に突入したのです。
また、「治らない」病気は、その病気自体を上手くコントロールしないと、階段的に悪化していきます。不規則で高カロリーな食生活、ストレスや喫煙、飲酒はやがて高血糖、高脂血症、高血圧として現れ、改善をしなければ糖尿病や脳卒中、心筋梗塞、ガンを引き起こし、認知症や介護状態を経て死亡へとつながってゆくのです。
しかし、これらの病気は何よりも「本人の強い意志」がなければ改善ができないものなのです。
そんな時代に、保険を使ってどう備えるか?
「死なない」そして「治らない」時代、死亡や高度障害だけを対象にした保険、また入院だけを対象とした保険では、「真のリスク」に備えることが出来ません。そういう意味で、介護状態を担保する保険であるとか、就業不能時の収入を補償する保険のニーズは、今後ますます求められる事でしょう。
昭和40年当時、68歳で死亡した方は「大往生だった」と言われました。
ところが2013年現在、平均寿命は80歳後半を超え、定年から寿命までを表す「老後時間」は長期化する一方です。
こういった情勢を織り込み、社会保障費の負担は今後より一層「老年層」に広がり、社会保険だけでは担保出来ない状況が生まれてくるでしょう。
こんな時だからこそ、民間保険を上手く使い、将来のリスクに上手く備えて欲しいと思います。