アベノミクスによって、本格的なインフレ時代を迎える可能性が強いと申し上げました。その場合、私たちはどう対応すべきでしょうか?
なお、最近の株価の乱高下については、前回、申しましたとおり「急激な株価上昇に対する調整」と考えます。最近はシステム売買が主流となり、「売りが売りを呼ぶ」展開になりがちです。しかし、世界経済の回復基調には変化がありません。例年5月、6月は株価が調整しやすい時期ですが、今回は一過性のものと考えます。
目次
若者~ミドル世代はインフレに対抗できる資産で長期的に増やす
すでに述べたとおり、預金だけでは物価上昇に追いつくことは困難で、実質的に資産が目減りする可能性が大です。これから資産を築いていく若い方やミドル世代の方は、資産の一部でもインフレに対抗できる資産(リスク資産)に振り向けて、長期で資産を増やしていくべきでしょう。言わば「(リスク資産を組み入れる)リスクを取らないことが、かえって(資産が実質的に目減りする)リスクを招く」ことになるのです。
とは言うものの、これまでに投資の経験のない人がいきなり株やREIT、FXといった経験と知識を要する商品に手を出すことは無謀すぎます。
まずは、コストの安いインデックス型の投資信託を定期購入する投信積立はいかがでしょうか?毎月一定額ずつ定期的に購入することで、価格の変動リスクをかなり防止できます。また、長期間続けることで複利の効果も期待でき、リタイアまで20~30年かければそれなりの資産が築けるでしょう。
また、多少なりとも投資経験のある人なら、日本株や外国株のETF、外貨MMF(今なら米ドルがお薦め)を資産にある程度組み入れるのもいいでしょう。
シルバー世代は値下がりリスクの少ない商品で運用する
一方、すでに退職した方、これから退職を迎えるシルバー世代も、積極的にリスクを取るべきでしょうか?今後、インフレになれば、これら年金生活者、預金生活者は不利な時代となります。
しかし、ここであわててリスク資産を買いに走った場合、再びリーマンショックのような金融ショックが起きたとき、リカバリーのきかない損失を被る危険があります。リタイアまで何年もあり、それまでにリスクを平準化できる若い世代とは事情が異なります。
こうしたシルバー世代の資産運用のセオリーは、値下がりするリスクの少ない商品(=安全資産)で運用することです。もちろんその代表は「預金」ですが、インフレでは実質価値が目減りする可能性が大。
そこで同じ安全資産の中でも、インフレに比較的強い商品を選択することが大事。その一つが10年物個人向け国債(変動金利型)。この変動金利型国債は、同じ個人向け国債でも5年物、3年物の固定金利型とはまったく性格の異なる商品です。
固定金利型国債は発行後、市場金利が上昇すると元本割れする危険が大きいのに対し、変動金利型は市場金利と連動するタイプ。それだけインフレに強いわけです。また、購入1年後からは国が額面で買い取ってくれるので、金利が物価上昇を下回るときは解約すれば元本も安全です。
他に金利上昇の恩恵を受けられる安全資産として「物価連動国債」がありますが、これは個人が直接購入することはできません。証券会社等が販売する投資信託の形で購入することになります。
「固定金利で長期間拘束されるもの」には要注意
一方、インフレ(金利上昇)時に避けるべきは、固定金利で長期間拘束されるもの。
例えば、先ほど言った固定金利の国債や3年以上の社債、定期預金など。固定金利タイプの定額年金保険も不利。今はかつてないほどの低金利なので、こうした商品を購入すると金利上昇局面では損をする可能性が大きいと言えます。安全性を重視するなら、むしろ当面は普通預金に置いといて、将来、金利が上がりきったところで定期預金なり国債、社債に振り向ける方法もあります。
あと一つ付け加えるなら、今後、円安が続くことが予想されます。シルバー世代も、資産の一部でも外貨(ドルなど)を組み入れることをお薦めします。
このように安全資産と呼ばれる預金、債券商品でも、インフレに比較的強いものと弱いものがあります。商品の特徴、リスクをよく理解して、正しく運用したいものです。