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投資脳の作り方
みなさん株式投資はされていますか?
これまでの投稿を見ていただいた方はお分かりかと思いますが、私が言う株式投資とは、「企業への投資、その証としての株式の保有」の意味での株式投資です。決して、株式を使った売買益狙いの「トレード」ではありません。「思惑通りに値上がりすればその瞬間に売ってやろう。」などは微塵も思っていない株式投資です。
しかし、現在の日本は「株式投資」と銘打っていても、実際は「トレード」の話ばかりです。このため、株式投資を単なる利益確定ツールでなく、本来の意味での投資として利用するためには、少々訓練が必要です。その訓練が「投資脳の作り方」。早速始めてみましょう。
投資脳を作るステップ
STEP1 株式投資へのアプローチは「魔法の貯金箱の選び方」と同じプロセス!を知る
(1)魔法の貯金箱とは → 自分ではお金を入れていないけれども、知らない間にお金が貯まっている貯金箱
(2)魔法の貯金箱の特徴の確認
a. 貯まる金額はそれぞれの貯金箱によって異なる。
b. 優秀な貯金箱を選ぶことができれば、貯まるお金は年々増えていく。
c. 貯まったお金の一部は現金で使うことができるが、残された部分は貯金箱の装飾を宝石に変え、貯金箱自体の価値をアップさせることに使われる。
d. 魔法の貯金箱には市場があるため、その使い方次第では単なる取引のツールとしても使えるが、長く持ち続け、貯金箱の価値とそれに伴う値段が上がることを楽しみにする方法もある。
e. 本質的な価値があるにも関わらず、マスメディアのニュースなどによって、たちまち人気化し、たちまち不人気となる。
STEP2 魔法の貯金箱を株式投資に置き換えてみる
魔法の貯金箱を買うことは ⇒ 株式投資をして株主となること
魔法の貯金箱に貯まるお金とは ⇒ 一株利益(EPS)
貯金箱自体の価値とは ⇒ 一株あたり自己資本(BPS)
STEP3 貯まるお金は所有者のもの、と改めて認識する
企業が稼いだ利益は誰のものでしょうか?
魔法の貯金箱においては、貯金箱に貯まるお金は貯金箱の所有者のものです。株式投資においては、企業が稼ぐ一株利益は、株式の所有者である株主のものとなります。
この考え方は、そもそも株式とは何なのか?なぜ、お金を払ってまで、株式を取得しようとするのか?の答えとなる基礎の部分です。
企業を応援することに加え、企業が生み出した利益を受け取るために、株主になるのです。株主になるために、大切なお金を投資するのです。であれば、株式投資を行う際にイメージしなければならない判断基準は、「企業が株主のために生み出す利益を得るために、いくらであれば投資するのか?その価値はいくらと考えるのか?」となります。
STEP4 さまざまな貯金箱を横比較してみる
貯まるお金の横比較(=異なる貯金箱の比較)をしてみます。同業者間でも、貯まるお金に大きな違いがあることが分かります。
STEP5 貯まるお金(=一株利益)と値段(=株価)を比べてみます。
この結果、「貯まるお金が多ければ、株価は高い」と言うことが分かります。たくさんのお金が所有者(=株主)のものとなるのです。この権利を手に入れるための投資金額は高くなって当然です。誰も否定できない当たり前のことですね。
もう一つの大切なSTEP
多くの株式投資のテキストは、残念なことにSTEP5で終わっています。(中には投資脳作りの基本中の基本であるSTEP1~5まですら書かれていないものも多くありますが。)しかし、ここで終わってはいけません。とても重要なSTEP6が残っています。
では、STEP6とは?
それは、貯まるお金(=一株利益)の縦比較をすることです。縦比較とは同一銘柄の比較をすることです。もう少し分かりやすく表現すると、過去の一株利益と現在の一株利益を比べてみることです。
例えば、ピジョンと言う名の貯金箱に貯まるお金を確認しましょう。
<7956>ピジョン 一株利益
08年1月 73.83円
09年1月 142.76円
10年1月 141.90円
11年1月 146.31円
12年1月 159.06円
13年1月 228.53円
魔法の貯金箱の特徴に、優秀な貯金箱を選ぶことができると、貯まるお金が年々増えていく。と言うものがありました。株式投資も同じです。優秀な銘柄を選ぶことができれば、一株利益は年々大きくなります。ピジョンの場合、08年は73.83円貯まりましたが、13年は228.53円のお金が貯まるようになりました。
であれば、8年の株価に比べ13年の株価は当然のごとく高くなっているはずです。ここには横比較も縦比較も違いはありません。貯まるお金が大きければ、株価も高くなる。何も難しいことはない当然の事象です。
念のため、確認をしてみると、次のようになっていました。
<7956>ピジョン 一株利益 株価(決算時の終値)
08年1月 73.83円 2,070円
09年1月 142.76円 2,460円
10年1月 141.90円 3,480円
11年1月 146.31円 2,604円
12年1月 159.06円 3,085円
13年1月 228.53円 4,545円
縦比較が大切なこと、その必要性がお分かりいただけましたか。縦比較をした結果、一株利益が大きくなっているのであれば、株価は当然のように高くなっています。
この事実をしっかりと認識することができるのであれば、株式投資における着目点が自ずと決まってきます。この縦比較を過去と現在でなく、現在と将来の間で行うのです。将来に株価が上がる銘柄を狙うのでなく、将来に一株利益が大きくなる可能性が高い銘柄を選ぶのです。一株利益の成長に伴って株価が上昇している状態を資産形成に利用するのです。
目先の株価の動きを利用して、利益確定を繰り返すことも悪くありませんが、魑魅魍魎が渦巻く相場を相手にそれほど簡単に結果が出るものではありません。それよりも、当然に値上がりする事象を眼中に置く方が、より簡単でより可能性の高い運用となります。大切な資産を利用するのです、「当然」を利用すべきなのです。
他にも利用できる縦比較
利益や株価の動きだけでなく、他にも縦比較をすることができます。例えば市場参加者からの評価であるPERやPBR。一株自己資本や配当金額。そしてもっとも投資に役立つ指標であるROEも該当します。
長期的に安定して高い数値となっているROEを叩き出してきた企業の株式を、割安な時期に手に入れることができたのであれば、その運用はかなりの確率で成功したようなものです。
あとは優秀な企業であるとの前提条件さえ崩れなければ、末永く株主であれば良いのです。企業は株主に利益や配当を毎年プレゼントしてくれます。その間利益成長と相まって、株価は高くなっていきます。市場のブレにいちいち付き合う必要はないのです。
私はこの縦比較の集計を企業業績タイムラインと名付け、様々な企業の分析を行なっています。しまむらの企業業績タイムラインを参考としてご紹介します。
投資は「噂で買って事実で売る」ものではありません。「噂で投資候補銘柄となるのか確認し、事実で買う」ものです。明日の株価は分かりませんが、5年後の一株利益はおよその見当がつきます。