数年前のリーマンショック以降、世界経済は悪化して、日本も相当なダメージを受けました。
しかし、その後のアジア新興国経済は急速な回復と高い成長率を遂げてきました。ところが、我が国(日本)では、高い経済成長率の伸びや充分な景気回復は見受けられません。このような国内外の景況感の違いが、アジア展開の本格化を中小企業が真剣に考えるきっかけの要因となったはずです。
中小企業の海外展開意欲が高まっている背景には、短中期的な景気動向の影響だけではなく、長期的な構造要因も含まれています。
少子高齢化や生産・消費年齢人口の減少で、日本の国内市場だけを対象としていては、業務の拡大が困難であることは周知の事実です。国際化・グローバル化が加速している大企業の動向にも触発されて、国内での製造・販売を主としている中小企業でも「輸入・輸出をしてみよう」「必要なら投資も検討しよう」という事例が急速に増えてきています。
しかし、従業員300人以下の製造業などに限って言えば、直接海外への輸出を行っている企業は4~5%、直接投資まで実施している企業は2%強と、まだまだ少ないのが現状です。
裏を返せば、競争力のある中小企業が海外に活躍の場を広げていくチャンスは大いに開けている訳で、そのような中小企業に対して支援を強化する狙いから、一昨年の10月に、日本政府は海外展開支援会議を発足させました。
海外でのビジネスは、中小企業が国内よりもはるかに情報量が少なく、不確実性の高い世界に飛び込むことであり、様々なリスクが付いてまわります。
これまでも、日本貿易振興機構(JETRO)による情報提供、海外の展示会出展支援をはじめ、中小企業基礎整備機構、政府系を含めた各種金融機関、日本商工会議所などの商工団体、地方公共団体の商工労働部などが、それぞれ海外展開への支援に取り組んできましたが、これらを一体化する、若しくはスムーズに各機関に業務の橋渡しが出来るように一貫した協力体制を政府の各関連機構は早急に創っていかねばならないでしょう。
日本の中小企業では、技術流出などの問題もあり、国内に留まり強みを発揮し続けようとする企業が殆どですが、マクロでみれば、早いスピードで経済発展を成し遂げているアジア近隣諸国の恩恵を日本の中小企業も直接享受出来るようにすることは、日本経済の根幹を形成する中小企業全体の発展にも大きく貢献できることです。
それと同時に、今後のグローバル経済(社会)を生き抜いていく上で、日本や韓国、中国、アセアンというような各国ごとの垣根を取り除き、アジア圏で生きるアジア人としてのグローバルな視点や発想を持つことが、政府も民間も法人にも個人にも必要な時代に成ったと(時代が大きく変化している)と思えてなりません。