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中国株式市場暴落 原因とされる「影の銀行」
中国の株式市場は今週暴落から始まりました。暴落のきっかけは先週中国4大国有銀行の一つ、中国銀行が資金ショートしたという噂が市場に流れ、銀行株が一斉に売られたことからでした。
中国銀行はその後これを全面的に否定しましたが、銀行の財務内容について以前から疑われていました。その理由の一つにシャドーバンキング(影の銀行)の存在でした。
今年の4月8日、ボアフォーラムに出席した米著名投資家のジョージ・ソロス氏は、中国の影の銀行について「米国の金融危機を招いたサブプライム住宅ローンと似ている」と警告を発しました。そしてゴールドマンサックス(GS)は保有の中国工商銀行の株を全株売却し、香港上海銀行(HSBC)も平安証券の株、これも全株譲渡しています。
中国の上場銀行の数は併せて16社。2011年、16社の銀行の利益は8000億元で、全上場会社(約2400社)の利益の凡そ35%を占めることになります。にもかかわらず、株価収益率(PER)はわずか5~6倍で、株価純資産倍率(PBR)も10社が1倍を割っている現状です。
取りも直さず、「影の銀行」による理財商品の存在です。理財商品とは、銀行の金利とは違い、元本保証のない、所謂ファンドの一種です。地方政府の債権や企業の社債などもありますが、通常の銀行預金より利回りが高いのが特徴です。
中国の銀行は信用を保てるか?正念場を迎える銀行
前出、中国銀行の資金ショートの噂が流された日、上海の銀行間短期金利SHIBOR(Shanghai Interbank Offered Rate)が前年同期で4%台だったのが13.44%まで急上昇し、資金不足でお互い資金を調達しようと、金利を押し上げたということです。
一方、北京市民は最近銀行から頻繁にショートメッセージを受けるようになったと言います。内容は1ヶ月から2ヶ月ちょっとで満期の理財商品のセールスです。例えば、6月8日時点では、36日間満期の商品で、50万元(約800万円)から購入可能で、利回りは4.2%だったのが、6月25日になると、期間は35日間満期で、利回りは4.75%に跳ね上がり、しかも購入金額も5万元(約80万円)からできるようになったということです。
6月23日上場銀行の一社である華夏銀行は72日間の理財商品を発売しました。売出し期間はたった三日間で、20万元から100万元単位で予想利回りは6.8%になっています。同じく上場の民生銀行は35日間満期の理財商品を50万元から投資可能で、予想利回りは7%という近年に見ない商品を発売中です。
6月末から7月上旬にかけてこれまで発売した理財商品の償還期限のピークを迎えるため、新たな商品を売り出して資金を調達し、満期商品の償還にまわすという自転車操業に近い展開になっています。
こうしたことから、銀行の自己資本率への懸念や不良債権に対する懸念から銀行株が売りに出されています。
利回り7%という魅力的な金融商品ですが、一歩間違えると不良債権化して元本を失うどころか、金融機関の信用を失うところが懸念されるところまで中国の銀行が「本業回帰」という改革の正念場を迎えています。