
永く続いたデフレから脱却するということを念頭に、政府主導で日銀がかつて誰もがタブーとしていた試みを展開しています。今年4月に、日銀の黒田総裁が発表された「物価上昇率2%を達成するために、この2年間で今までの2倍のマネーを供給して、無理やりにでも物価上昇(インフレ)を実現させてみせると」いう政策のことです。
この思い切った方針には一般人も市場関係者も与党以外の政治家も、みんなが驚いたことだと思います。「2年で2倍のマネー供給」今後どういった展開になっていくのか、関係者もそうでない人も一抹の不安は隠せません。
インフレを起こすために、日銀は大量の国債を購入することに成ります。その量は今までの倍であり、そこには過去に例の無かった質的な緩和策も加わってきます。
質的な緩和策というのは、日銀が購入する国債の種類(償還年数)を大きく変化させています。今までの国債では3年以内の償還を主に購入してきましたが、これからは10年以上40年満期の国債まで購入します。この10年以上の国債の日銀による購入量は今までの約8倍の量に達するのです。
日銀が国債を購入するということは、日銀はその分、無尽蔵に円を印刷することに成ります。 じゃぶじゃぶと大量の円を新たに創り出していくわけです。そして、それを湯水のごとく市場に供給していくのです。
日銀が国債を10兆円購入すれば、市場には10兆円という資金が供給されます。 なにも無いところから、国債(借金)という代償を基に、それこそ湯水のごとくマネーが湧き出てくるわけです。
今までは、その国債が2~3年で満期を迎えると、国は資金を手当てして日銀に資金を返さなくてはなりませんでした。しかし満期が40年先であれば、しばらくの間は、国債の資金は使い放題です。今回の措置で、国はしばらく返すことを考えずに大量の資金を使うことが出来るようになるのです。簡単に言えば、借金の先送りということです。
このように日本国が日銀に国債を購入してもらうということは、国としては無尽蔵の資金を調達することが出来る「打ち出の小槌」を手に入れたようなものです。
今までの日銀は、短い期間の国債だけを購入しようとしていたのですが、今回の「アベノミクス」で、政府が日銀に対して政府の意志をしっかりと反映してくれる人材を総裁に登用することに決めた次第です。新しく任命されました黒田総裁は当然、日本政府の方針に従い、今までに例を見ない思い切った金融金輪策を講じて実行に移しています。
政府と日銀の狙いは、まさにインフレの創出です。 日銀の新政策によって、国民や諸外国に対して、将来のインフレを強く意識させているのです。 確かに世の人々がそう思うように成り、その結果として人々の消費は旺盛に成り、今までとは違う景気の盛り上がり感も最近、出てきたことは事実です。実際に株価も上がり、不動産も上がり始めてきています。通貨である円の価値も減価して、円安も急激に進行しました。
つい最近のことですが、世界の人々は、日本が変わった(良くなるのでは)という期待も込めて、一気に我が国へ投資を始めました。言い方を変えると、政府と日銀が日本再生のため思い切って勝負に出てきたと見ているのでしょう。
さて、今後どのような展開になっていくのでしょうか。 政府や日銀が、舵取りを少しでも間違えると、取り返しのつかないことにも成り兼ねません。次回も、デフレの脱却そしてインフレへの舵取りについて、さらに考えてみたい(状況を観測してみたい)と思います。