FPとしては当然ですが、いつもは住宅ローン利用者側に立って住宅ローンをみることがほとんどです。しかし、反対の貸し手である金融機関側から住宅ローンをみてみることも住宅ローンを熟知するうえでは重要であると思いますので、今回は、住宅ローンを貸し手である金融機関側からみてみることにします。
ポイントとしては下記4点です。




目次
貸出状況
まずは、金融機関の現状の住宅ローン貸出状況ですが、日銀の「経済統計月報」によれば、全国銀行の貸出しに占める住宅ローンの割合は、概ね25%強となっています。
これは年々増加しており、2000年度に15%強程度だったものが約10%も伸びております。企業の資金需要が乏しく企業向けの融資が伸び悩む中、金融機関は「法人がダメなら個人!」というわけで、必死に住宅ローンで貸出しを伸ばしてきているのでしょう。
収益性
つぎに住宅ローンの収益性ですが、これは住宅ローンの競争激化により、どんどん収益性は低下してきております。全国銀行協会の平成24年度統計資料によると、資金運用利回り1.13%、資金調達原価0.99%で総資金利ザヤは0.14%になっていますが、住宅ローンの適用金利の現状から判断しますと、資金運用利回りの1.13%を上回っているのは、固定金利期間選択型5年超や完全固定金利型のものだけです。
ここにきて変動金利型は少し減ってきていますが、これまでは結構な割合でしたので、住宅ローン全体での収益性は、決して高くはないでしょう。
デフォルト率(貸倒れリスク)
そして、住宅ローンのデフォルト率(貸倒れリスクのこと)はどうでしょうか。
これは地域や時期などによって差があったりしますが、ざっくりお話しますと、住宅ローンのデフォルト率は、およそ「0.2~0.3%」程度です。法人向け融資のデフォルト率「2%~3%」程度と比べ、リスクは1/10程度とかなり低いことが分かります。
さらに住宅ローンの保証料が、0.2~0.3%程度であることを考慮すると、金融機関や保証会社は、ほとんど貸倒れリスクは背負っていないということになるのではないでしょうか。
住宅ローンの優位性について
最後に、他の貸出しと比較した住宅ローンの優位性についてです。これまでお話した内容と重複するものもあるのですが、まとめますと
(上記、住宅ローンのデフォルト率で説明させて頂いたとおりです)
(2) 返済口座が家計の中心口座になる確率が高く、その他の収益性が見込めること
住宅ローンでの収益性が低くても、その他のサービスの利用が見込め、トータルでの収益性が高くなる可能性があります。
(3) BIS規制に対する影響が良いこと
リスクウェイト(評価額)が低いので、BIS規制に与える影響が他の貸出しに比べて良いといえます。
このように金融機関側の立場からみてみると、住宅ローンは、収益性以外のメリットがいろいろとあるようです。
とはいうものの、すでに住宅ローンの金利優遇競争激化により、住宅ローンの採算性は急激に悪化し、限界に達している金融機関もあります。そのため、日銀も金融機関のチェックとして、住宅ローンリスクをより考慮するようになっております。
また、各種の指標で景況感が好転し始めましたので、今後これまで以上の優遇条件が提示される可能性は、一時のキャンペーンくらいのものでしょう。
これまで、より有利な条件を模索してきた住宅ローン利用者(新規・借り換え共)の方もそろそろ決断のときではないでしょうか?