アベノミクスの戦略の一つで、目を付けたのが「動いていないお金を動かすこと」、その実行のために政府は複数の方策を打ち出しています。
日本国内には、たくさんのお金を持っている人たち(おじいちゃん・おばあちゃん)が大勢います。そのお金を全く使っていない人たちがいるのです。
日本銀行の資金循環統計によると、高齢者の方々が老後に備えて貯めているお金がおよそ1000兆円以上あると言われています。 やはり、誰しも老後が心配なので、たくさんのお金をしっかりと蓄えている状況です。
しかし、そのお金を使い切らないうちに亡くなる場合が多いのです。 欧米人の場合は、年代別に最もたくさんの資産を蓄えている時期は40~50歳台が多いそうですが、日本人の場合は驚くことに、最もたくさんのお金を蓄えている時期(タイミング)が「死ぬ間際」だそうです。
これは、欧米人と日本人のライフスタイルの大きな違いの一つと言えます。セカンドライフをアクティヴに楽しむ欧米人と、そうでない日本人の人生観の違いでもあります。
日本人の場合は、残ったお金の殆どが子供に相続されますが、高齢者が亡くなる訳ですから、そのお金を相続する子供も、既に50~60歳台に成っているケースが多いのです。だから、そのお金を貰っても、やはり自分の老後が心配なので親と同じように使わないまま、そのお金をずっと貯めておきます。そして、その人が亡くなると又その子供に相続していくというような循環を繰り返すのです。結果、全然お金が動かない訳ですね。
政府は、このお金をなんとかして使ってもらおうと考えています。
実施されている高齢者の方々にお金を使ってもらう施策
では、高齢者の方々にお金を使ってもらう方策として、どのようなやり方があるのでしょうか。
今春から、孫一人当たりにつき、1500万円までの贈与には税金を掛けないようにする制度が施行されました。これまでは、1500万円を贈与するということになると、贈与税が470万円(約31%)も掛けられていました。それが無税(ゼロ)に成る訳ですから、かなりインパクトの強いものとなります。
今のところ使い道は、教育資金ということになっていますが、いずれ他の分野にも波及するものと思われます。
おじいちゃんやおばあちゃんから孫へと、教育資金が流れていくと、親は子供の教育に関わる費用を浮かせることが出来る訳ですから、そのお金でマイホームを新築したり、マイカーを購入したり、旅行に行ったり、大きな買い物が可能に成ります。
高齢者のところから、若い世代のところへ移動したお金は、そこでじっとしていないで動き出すというシナリオです。世の中のお金がぐるぐると速く回るようになれば景気も良くなるということです。
こういった好循環を生み出すことが出来れば、政府が目指す第一段階のシナリオはとりあえず良しとするでしょうが、問題はこの先のことです。
減税してお金を活発に動かすことが出来たとして、その減税額に見合う若しくはそれ以上の歳入(税収)を何処で補うのか。 周知のとおり日本は大きな借金をしながら景気を良くしてゆくということですから、これからも益々借金が膨らんでいく一方です。
まだまだ前途多難で問題山積みの我が国・日本ではありますが、この先のアベノミクスの舵取りに大きく期待を寄せながらも、我々国民も自助努力で自分の暮らしは自分自身で護ってゆかねばなりません。