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個人の尊厳が優先された最高裁の判決
H25年9月4日、最高裁は、婚外子の増加や離婚の増加などによる家族観の多様化を重視し、非嫡出子の相続差別を定めた民法の規定を違憲と判断した。婚外子(非嫡出子)の尊厳がやっと認められたわけだ。
厚生労働省の人口動態統計によると、全出生数に占める婚外子の割合は、1995年の1.2%から、2011年は2.2%まで増加。
最近では毎年2万人以上が婚外子として生まれてきているのが現状だ。もともと1898年施行の明治民法で婚外子差別が導入されたのは、法律婚を重視する家族制度が根底にあったためである。
他国の相続差別の有無
欧米でも宗教上の理由で、かつては婚外子への根強い差別があったが、その後事実婚の増加などから、1960年以降に非嫡出子の相続差別の撤廃が進んだ。
韓国や社会主義国の中国にも差別がなく、主要先進国で規定が残るのは日本だけだった。国連もこれまでに10回、日本に是正勧告をしており、いわば外堀も埋められた形での今回の最高裁による判断となった。
民法の規定が書きかえられる?
婚外子の相続規定について、最高裁は審理対象の相続事案が発生した「2001年7月」には違憲になっていたと判断。論理的にはこれ以降、規定が違憲だったことになる。
しかし、この間にも多くの遺産分割が行われ、相続人は既に受取った金銭を使ってしまっていたり、不動産も売却していることが想定される。
婚外子が遺産分割のやり直しを求めれば、嫡出子は突如として生活が脅かされる可能性もある。そのため、最高裁は違憲判断の効果が今回限りであることも明記した。
最高裁の判例は事実上の法的拘束力があり、現時点で未決着事案や今後発生する事案には民法改正を待たずして、今回の違憲判断が適用されるであろう。政府も、民法改正に動く方針を決めている状況で、改正案が提出されれば、与野党の賛成多数で成立する公算が高い。
賢明な司法判断
今までは、相続の現場では婚外子(非嫡出子)は肩身の狭い想いをしていたが、今後は堂々と遺産分割にも参加できる。賢明な司法の判断だと思う。