人民元投資は――キャピタルゲインもインカムゲインも
海外投資も随分と身近なものになった。中国(香港)、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア・・・その時気になるのは通貨の切上げまたは切下げだ。
「中国で稼いだ人民元がありますが、海外送金はできますか」と良く質問を受けるようになった。株式投資の場合、証券会社経由日本円に戻して口座に振り込んでもらうのだが、現地で商売し、または不動産の賃料収入(キャピタルゲイン)で貯めたお金(人民元)をどうやって日本(円)に戻すか、悩む方が多いようだ。
中国人民銀行(中央銀行)は2005年7月21日、それまで事実上固定していた1米㌦=8.28元という為替を通貨バスケット制に基づいた管理変動相場に変え、人民元の切上げに踏み切った。以来8年経ったが、先週木曜日(14日)の人民元対米㌦の仲値相場は6.1315で、切上げ以来の高値を更新し、8年間で通算34%人民元相場が高くなったのだ。
円対米㌦相場を1米㌦=360円から250円→120円→80円とつぶさに見てきた我が師である、邱永漢先生は1米㌦4元の時代は来ると香港紙の取材に対して語ったのは2007年、2008年ごろだった。
目利きの投資家はその時から手持ちの円を元に換えて預金していた方もいらした。預金の理由は為替差益だけではなく、人民元の定期預金の利息も3~5%あってキャピタルゲインもインカムも同時に手に入れるからだった。
中国の通貨・人民元――海外送金は?
先週、日本人投資家が15年ほど前に投資した不動産売却のための契約に立ち会うため、上海を訪れた。
売却代金送金のため、銀行窓口も訪ね、詳細を確認した。不動産売却の場合の利益に対して所得税などを支払った後、銀行の窓口で納税証明書や売買契約書などを添付の上申請したら、そのまま(納税後の)全額を指定の海外口座に送金は可能ということは分かった。
しかし、不動産以外の収益はどうかという問題だが、かつて厳しい為替管理のあった中国だが、それもかなり緩和してきた。具体的には、外国籍の場合、パスポート提示で年間5万米㌦相当分(大凡500万円)の外貨を無条件で海外に送金可能というものだ。そして外国人、中国人を問わず、年間5万米㌦を上限に、一日500米㌦相当分の現金を両替することができることもわかった。
中国の三中全会は先週閉幕し、改革開放の深化に関する具体的な「決定」も発表された。「中国(上海)自由貿易区」に代表されるが如く、金利の自由化や人民元の自由兌換を含む金融改革も目玉の一つとなっている。人民元の海外送金が緩和された今、為替差益や3~5%の金利(1年ものは3.25%、3年ものは4.25%)が確実に手に入る人民元預金が海外投資の選択肢の一つであるかもしれない。(執筆者:徐 学林)