米はこのほど緊迫するウクライナ情勢に、対ロ向け資産凍結、ビザ発行禁止などを打ち出した。これにより、ウクライナ情勢は、新段階を迎えることとなった。
ホワイトハウスの米・オバマ大統領は、ロシアがウクライナへの軍事的圧力強めていることから、対ロシア制裁の発動を命じた。これにより、ウクライナを巡る米・ロの対立が鮮明となった。
今回の発動は、全面的な経済封鎖とは程遠いものの、個人・機関の資産凍結、政府高官を対象にしたとみられる、ビザ発給禁止は、ロシアの対応を見極めるもので、米の武力介入は否定している。
しかし、この緊迫した状態が長引けば、欧州連合(EU)と共に、全面経済封鎖へとつながることも懸念され、今後の成り行きが注目されよう。
こうした米の経済制裁は、日本にも多大な影響を与えることは必至、日本はEUの動向を見極めた上、経済制裁に踏み切る模様だ。
日本は、6月に行われる予定の、G8ボイコットには、米欧に同調したものの、米欧各国が政府首脳の派遣を中止したソチオリンピック、パラリンピックにも政府首脳を派遣,親ロシアを打ち出しており、安倍首相も今、微妙な立場にあると言えよう。
日本は舵取り一つ間違うと、完全に孤立化する危険もあり、安倍首相の外交手腕が世界から注目されている。
しかしここは千歳一隅のチャンス、プーチン大統領との親交を糧に、ウクライナ情勢の説得を試みるのも一つの選択肢として行動してはどうか。
ともあれ、今後全面経済制裁に発展したら、日ソの経済は大きな打撃を受けることは必至の情勢だ。
日本は、石油や液化天然ガス(LNG)など、資源の輸入を中心に、ロシアとのつながりは深く、特に輸入への影響が懸念される情勢となった。
2013年の日ソ貿易統計によると、輸出の総額は、1兆693億円、輸入は、2兆3071億円と大幅にロシアからの輸入超過が目立つ。
これは、主要品目の自動車、自動車部品、ゴム製品の輸出に比べ、豊富な天燃資源を持つロシアに、石油、液化天燃ガス、非鉄金属などが、輸入に依存していることが要因として挙げられよう。
ロシアの経済は、こうしたエネルギー資源が70%を占め、国の基幹産業と位置付けられている。
一方ロシア国内においては、経済制裁が長引くと、通貨ルーブルの下落や、首本流出に拍車がかかることも予想され、経済制裁は避けたい事情もあるとみられる。
ロシアの天燃資源に依存しているのは、日本だけではない。EUもまた同じ。一両日に打ち出すとみられているEUの経済制裁が注目される。
軍事力を背景に、国益を追求するプーチン大統領に対し、米欧の経済制裁が、どこまで通じるか、この先不透明な状況と言えよう。(執筆者:向井 潤)