米の景気動向を探るうえで、最も重要な雇用統計(季節調整済み)が、このほど米・労働省から発表された。
それによると、雇用統計の中でも、特に注目される非農業部門の就業者は、前月比17万5000人増1月(改定後約12万9000人増)から大きく拡大した。
これは2月の米雇用者数から見て、労働市場は、予想外の健闘と見られており、消費や企業の受注傾向が、再び増勢を取り戻したとの見方が支配的。緩やかながら米経済が回復基調に入ったと見る向きは多い。
雇用統計非農業部門と同様注目されているのが失業率。こちらは、6.7%となり、前月と比べて0.1ポイント悪化した。
今回発表した数字は、雇用回復の目安となる20万人増は下回ったものの、15万人程度と予想していた、市場予想を上回る結果となり、米景気も緩やかながら回復基調に入ったとみる向きは多い。
予想が下回った要因として考えられるのは、米国北東部を中心とした長期間の寒波襲来である。多くの専門家はこの寒波が景気回復の足を引っ張ると論じていた。
しかし建設や物流、小売部門での一部影響はあったが、雇用関連については、限定的であった面が考えられよう。その影響が一部に限定され、全体の雇用情勢には大きな影響を与えなかったのも予想を上回った要因の一つでもある。
雇用統計を分野別に見ると、サービス部門では、1月の改定後8万4000人増から、14万4000人増の大幅な伸びが目立っている。
しかし、一方では、建設関係の落ち込みが足を引っ張る格好となった。建設関連では、特に生産部門が低調で、前月5万人増から1万5000人増と急激に落ち込んだ。
また就業者数の内訳は、政府部門の1万3000人増で推移、民間部門が16万2000人増と前月の14万5000人増から拡大しているようだ。
この内訳は、自動車などを中心とした製造業6000人増と、前月から横ばい状態と言えよう。こうした回復基調が見られる米経済に、米連邦準備理事会(FRB)は、18―19日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和の縮小継続を決めるものと見られている。
こうした米での景気回復兆しの情報は、日本の株式市場に大きな影響を与えるのは必至。投資家の一つの指標となるのが米の雇用統計である。
この雇用統計の数字が株価に即、反映するので、情報を知る上でもっとも重要な一つであるのは間違いない。これは、外国為替、金利などのマーケットにも大きな影響を与えることもあり、投資家、市場関係者は、常に米の発表する雇用統計を注視しているのが現状だ。(執筆者:向井 潤)