平成26年春闘、各分野の労使交渉は、大詰めを迎えている。
このほど、東京都港区の電機連合会会館で開かれた産業別交渉で、労使の賃上げ交渉が行われ、大手電機主要6社(日立、東芝,パナソニック、NECなど)に加え、沖電気工業、明電舎、安川電気、富士電機の4社は、経営者側との交渉で、ベースアップ(ベア)月額2000円の高額水準で、決着した。
経営者側は、12日に行われる集中回答で、労組にベア2000円を回答するものとみられる。
この額は、最高額とされていた1998年の1500円を上回る、高水準で妥結した。これまで、2000年代は、最高でもベア1000円までで、最近には例がない高水準の決着であった。
しかし、ベアの労組要求額は、4000円で、その額の約半分で妥結した。この結果が現在調整中の自動車業界などに、大きな影響を与えることは必至と見られており、その成り行きが注目されている。
160社が加盟する産業別労組の電機連合は、大手10社が決着したベア2000円を基準に交渉を行い、高水準の回答を引き出す戦略で、残りの150社は26年春闘に勢いを得た模様だ。
電機連合側は、最後に、ストライキを回避するためにも、最低基準としてベア2000円を提示、これを経営者側が了承したという構図で決まった模様。
経営者側の思惑として、ストライキは回避したいのは当然だが、現在回復基調にある日本経済の足を引っ張る愚は避け、デフレ脱却につなげたいとの意識から妥結したとみられている。
今後の焦点は、円安の恩恵を受けて、好調に推移している自動車大手の労使交渉と言えよう。今回のベア2000円の決着がどう影響するか、注目される。
現在自動車大手の交渉状況は、トヨタ自動車はベア3000円(組合要求は、4000円)、日産自動車は、組合要求3500円で調整中だ。
鉄鋼大手企業の新日鉄住金は、組合要求3500円と多少のバラツキがみられるが、今回の電機10社の妥結額を視野に、どう調性していくか、12日の集中回答での数字が注目される。
今回の高水準の回答を得た背景には、電機業界が積極的に取り組んだ構造改革が進展して、業績の回復につながったことも要因の一つに挙げられよう。
そうした意味では、円安の追い風を受けたとはいえ、自動車産業はさらに業績を伸ばし、好成績を収めていることもあり、ベア2000円で納めることができるかどうか。
労組の要求額とは差があるが、その当たりを経営者側がどう評価するのか未知数と言えよう。26年の春闘は、これまでにない高水準の回答が引き出せる様相を見せている。(執筆者:向井 潤)