太陽光発電の世界分布図が、大きく変わろうとしている。これまでのドイツを中心としたヨーロッパ勢に代わってアジア圏の伸長が目立っている。
その中心となっているのが中国である。中国の太陽光発電2013年での、新規導入量は、1130万kwと、前年の約3倍に急拡大し、世界の新規設置設備の3割が中国に集まり、ドイツを中心としたヨーロッパを抜き、世界トップの位置を確保した。
太陽光発電は、2004年ドイツが世界に先駆けて、太陽光発電の固定価格買い取り制度FIT(フィード・イン・タリフ)を導入以来、日本を抜いて世界トップの座を奪い、2008年の時点では、世界の太陽電池の半分は、ドイツに設置されており、”太陽光と言えばドイツ“と言う現状であった。
そこに割って入ったのがアジア勢である。中国、韓国などの太陽光パネルメーカーが、低価格で、世界進出、太陽光パネルの分布図を大きく塗り替えてきたのだ。
中国はこれまで、風力発電が先行しており、設置場所の関係もあり、最近は政府が太陽光発電を重要視し、積極的に、推し進めてきた。
昨年7月には、15年までの太陽光発電の設置目標2100万kwから、3500万kwに引き上げたばかりだ。
しかし企業間の競争は熾烈を極め、勝ち組、負け組の差がはっきりと浮き彫りにされている。その象徴的なのが、中国初のデフォルトを招いた太陽光発電パネルメーカー「上海起日太陽能科技」(上海市)の債務不履行であろう。
同社は、業績不振で、資金繰りが悪化、8980万元(約15億2600万円)の支払いができなかった。2012年に10億元で発行した社債で、発行金利は8.98%、政府や金融機関が救済措置を取らなかったため、中国初のデフォルトとなった。
中国政府は、これまでこうしたケースでは、市場の混乱回避のため、デフォルトを避けてきたのが実情。今回は、金額も少なかったことと、企業は破たんしておらず、社債元本が、返済される可能性があることから対応は冷静だった。
しかし、2012年に発行された同社の社債は、いわゆるシャドーバンキング(影の銀行)と言われる”裏”の商品ではなく、”表”の金融であったことなども挙げられよう。しかし一部では、政府がデフォルトを容認したという声もあるのは確かだ。
こうした両極端の出来事が起きるのも中国である。片や世界一の太陽光発電に輝いたかと思えば、そのパネルメーカーがデフォルトである。
世界一となったからと言っても、手放しで喜んでばかりいられない事情も抱えているのは事実。世界の太陽光発電が、ここにきて、これまでの勢いを失くしていることと、中國を始め、韓国などの太陽光発電パネルの安売り攻勢が、世界各国で、問題化していることである。
こうした多くの問題を抱えながらも、中国の躍進は今後も続くだろう。(執筆者:向井 潤)