「マイナンバー」は、2016年から導入される社会保障と税の共通番号のこと。日本国内に住む全員が1つの番号で管理されることになります。プライバシー漏洩の懸念はあるものの、マイナンバーが導入されることで、便利になることもたくさんあると思います。
「マイナンバー」導入のメリットとデメリット
まず、行政の窓口で今のように長い時間待たされることがなくなる可能性があります。いちいち書類を書かなければならない手続きの非効率も改善されることが期待されます。
今は縦割り行政の影響で、それぞれの役所がバラバラに個人の番号を発番して管理している状況ですが、年金などの社会保険料や税務の情報がマイナンバーを軸に管理されれば、不満の解消にも繋がりそうです。
会社員は普通、収入がきっちりと把握され、税金は源泉徴収、社会保険料は天引きされて自動的に支払っています。いっぽう、自営業者や医者などは自分で申告して税金を支払っています。第三者から監視されないので、脱税などの不正が起こりやすくなっています。そのため、かねてから税や社会保険料に対する不公平感が指摘されてされてきました。
ただ、マイナンバーができることで、不満がすべて解消されるわけではありません。なぜなら、自営業者や医者の売上や経費の申告は、依然として自分が行うしかないからです。所得税・住民税の対象になる所得は、売上から経費を差し引いた金額です。売上を過小に計上し、経費を過大に計上すれば、脱税のような行為ができてしまいます。
現在、買い物をするときに、私たちがTポイントやポンタ、楽天などのポイントカードを使っているように、マイナンバーを活用して売上や経費を第三者が把握できるようになればよいのですが、それを期待するのは望み薄でしょう。なぜなら、ポイントカードはメリットがあるからみんなすすんで使います。しかし、税や社会保険料をこれまで以上に多く払うためにマイナンバーを使う人は皆無に近いでしょうから。
2018年度から銀行口座に導入
さて、政府の税制調査会が、2018年度から開設する銀行口座にもマイナンバーで管理する方針を決めました。個人の財産を正確に把握し、税金や社会保険料の負担を公平にするのが目的です。
たしかに、いまは、何億円もの財産を持っていても、収入が少なければ社会保険料の負担が少なく、また、年金支給額なども資産額に連動した形にはなっていません。たくさん財産を持っている人も、財産の少ない人と同じ基準で年金が支給されています。
ただこの銀行口座のマイナンバー化は、「新しく開設される口座から」です。2018年度を迎える直前には、膨大な「駆け込み口座開設」が発生しそうです。(執筆者:中村 宏)