さて、昨年、収入保障保険について記事を書きましたが、今回はその続きの完結編ということで、収入保障保険の特殊例を解説したいと思います。
団信代わりになる収入保障保険
団信とは団体信用生命保険の略で民間金融機関のローンを利用する場合は、団信の加入が基本的に義務づけられていることから、「団信に加入できない=ローンの借入ができない」ということも考えられます。
しかし、住宅金融支援機構の長期固定金利ローンの「フラット35」等を利用する場合、団信加入は任意であり、団信に加入できない方であっても、融資を受けることができますし、団信の代わりに民間生命保険会社の収入保障保険に加入することでその代わりとすることも可能です。
民間生保の収入保障保険は前回記事で解説したように、非喫煙者で健康優良体の方であれば、「区分料率適用型」や「リスク細分型」収入保障保険に加入することで、団信加入に比べ、大きく保険料を削減できるメリットがあります。
しかし、デメリットがあります。団信の場合は借入残高の減少に伴い、特約保険料は徐々に減っていきます。仮に繰り上げ返済等によってローン期間短縮した場合に、民間の収入保障保険の場合、団信のように保険期間短縮による保険料軽減がなされない、つまり保険料は加入時のままですので、結果団信に比べ高い保険料となってしまう可能性があるということです。
実は収入保障保険という保険はかなりガチガチの保険で一旦設計した保障内容に対して、最低保険金額下限とした減額もしくは払い込み方法変更(月払を年払、クレカを口振等)ぐらいしかできません。もしそれ以外の契約内容を変更するには一旦解約して加入し直しする必要があります。
そこで、将来的に繰り上げ返済による期間短縮を予定しているならば、加入後に保険期間短縮が可能な「収入保障保険」がお勧めとなります。
加入後、保険期間短縮が可能な収入保障保険は、私が知る限り、業界で一社しかありません。加入後2年目以降、最低保険金額を下限とした保険期間短縮が可能であり、保険期間短縮をした場合、加入時の年齢に遡り、保険料再計算し、減額された保険料がそれ以降適用されます。このことは約款に記載されるようになったので、収入保障保険加入中の方で、もし気になるようでしたら約款を調べてみるか、直接保険会社に照会してみると良いでしょう。尚、この会社の収入保障保険は喫煙者や非喫煙者区分、優良体区分によるディスカウントはありません。
短期払設計による収入保障保険
通常、収入保障保険は保険期間の全期間に亘り保険料を支払う「全期払」設計しかできないところが殆どで、解約返戻金はありません。
しかし、保険期間よりも短い払込期間の「短期払」設計が可能で、かつ払込期間終了後に解約することで100%以上の解約返戻金が発生する収入保障保険が現在一社あります。
通常、医療保険等の掛け捨ての保険の「短期払」は払込期間中は解約返戻金がなく、払込期間終了直後に多少の解約返戻金が発生する場合がありますが、100%以上の解約返戻率は珍しいと言えます。
但し、この収入保障保険をある条件(性別・年齢・区分料率、等)で「短期払」設計する必要があります。払込期間中は解約返戻金はゼロですが、払込期間終了直後に解約返戻金が100%以上に垂直に立ち上がり、緩やかな下り坂の解約返戻金カーブを描き、保険期間満了時に解約返戻金がゼロになります。具体例を示すと、
保険金額: 月10万円(初年度保険金額6,120万円)
保険期間: 80歳まで
払込期間: 50歳まで
年間保険料: 161,010円
累計保険料: 3,381,210円
払込終了時の解約返戻金: 3,773,500円(解約返戻率111.6%)
(2014年6月保険料率による設計。今後変わる可能性もあります)
解約するまでの期間は大きな保障を得られ、もし万が一のときは被保険者80歳まで保障が続くことになります。解約返戻金が100%台の期間は15年程度あり、子供が大学等で学資が必要なときや結婚援助金等の用途で保険金減額による一部解約か全部解約して一時金を使えばいいでしょう。
以上、収入保障保険の特殊例ですが、「保険のマジック」を感じられたでしょうか。(執筆者:伊藤 克己)