米国では、闇雲に危機を叫ぶことをイソップ童話のオオカミ少年(題名は羊飼いと狼)にちなんで「CRY WOLF」と言いますが、現在の米国株市場は少年ではなく、周りの村人たち(プロ投資家を含む市場関係者)が「オオカミが来た」と叫んでいる状況と言えます。
市場関係者は、「VIX指数」の意図的な裏読みという悪癖に走っている
現在の米国株は史上最高値更新が続き、株式市場に対する投資家の不安心理の度合いを示す「VIX指数(ボラティリティ・インデックス)」も一時11.55の歴史的低水準となり、足元でも12台で推移しています。
闇雲にという言葉はやや語弊があるとしても、株式市場では羊飼いである少年の役割をこの「VIX指数」が担っており、通常は現在のような安心感が支配する市場環境では、多少の悪材料で株式相場は大崩れしないことを示しています。
ところが、最近の米国メディアの論調は、市場関係者の多くが楽観姿勢が強まり過ぎている現状への警戒感と共に、大幅な調整局面を懸念しているとの見方が支配的です。
つまり、「オオカミが来た」と叫んでいるのは、「VIX指数」の役割を持つ少年ではなく、「VIX指数」の意図的な裏読みに走っているプロ投資家を含む市場関係者たちなのです。
年初に調整するとの自分たちの予想が当たらなかったことを棚に上げて、市場の楽観が長続きするはずがないと言い続けているに過ぎず、こうした市場の悪癖は一般投資家の投資機会を奪っているとも言えます。
また、彼らの狙いが何かと言えば、投資家の不安心理を煽ってボラティリティ、すなわち「VIX指数」を上昇させることです。何故なら、ヘッジファンドをはじめとするプロ投資家はそれで儲けているからです。
「VIX指数」の数値が上昇し始めてから対応を考えても遅くはない
結論として言えることは、こうした平穏状態が永久には続かないことは事実としても、少なくとも「VIX指数」の数値が上昇し始めてから対応を考えても遅くはなく、そうでなければ「VIX指数」の存在意義はありません。
「VIX指数」上昇のきっかけとなる可能性としては、市場が意図していないFRB(米連邦準備理事会)の政策変更やイエレンFRB議長の発言、あるいはFRBからバリュエーションが相当高くなっているとの異例の指摘を受けた値動きの激しいモメンタム株の急落などが考えられます。
日本株に対する投資家の不安心理の度合いを示す指標としては、「日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)」があり、7月25日時点では14.78と、米国同様に約7年半ぶりの低水準です。
「日経平均VI」の値動きの傾向を把握したうえで、投資指標のひとつとして活用する価値は十分にあると思います。(執筆者:青沼 英明)