7月24日に、ロシア中央銀行が想定外の利上げを実施しました。ロシアでは3月と4月の2回にわたって利上げを実施しており、今回は今年3回目の利上げになります。
今回の利上げのポイントを整理
ロシア中央銀行による今回の発表のポイントは以下の2点です。
2)高インフレリスクが長引けば利上げを継続する
ロシアは、ウクライナをめぐる地政学的リスクの高まりと欧米からの制裁によって、ルーブルが大きく下落し、インフレが加速しています。そのためロシア中央銀行は、インフレを抑制してルーブル安を食い止めるため、今年3月に政策金利を5.5%から7.0%まで大幅に引き上げた後、4月にさらに0.5%、今回もさらに0.5%と利上げを行っています。
しかし、ロシア中央銀行による利上げの甲斐なく、インフレ率は上昇を続けています。2014年3月までは6%台前半だったインフレ率が、2014年4月以降徐々に上昇し、2014年6月時点では7.8%まで悪化しています。
一方でロシアルーブルは、2014年3月17日に過去最安値の1ドル=36.5ルーブルまで下落した後、利上げの効果もあってか6月10日には33.6ルーブルまで戻しました。しかし、その後再度下落に転じ、現在は再び35ルーブル前後まで下落しています。
ロシア中央銀行としては、利上げの目的であるインフレ抑制に目立った効果が見えず、いったんは反転したルーブル相場も再び下落に転じたことで、追加利上げせざるを得なくなったようです。
ウクライナ情勢に解決の糸口が見えない中、欧米による経済制裁は強化される可能性こそあれ、緩和されるシナリオは今のところ期待できそうにありません。経済制裁が維持・強化される限り、インフレ加速とルーブル安が進む可能性は高く、ロシア中央銀行もコメントしているように、状況を見極めつつ利上げは継続されていくのではないでしょうか。
ロシアルーブル建て債券に投資する際の注意点
このようにロシア情勢が緊迫する中で、証券会社によっては高金利なロシアルーブル建て債券を販売しているところもあります。個人投資家として、こうしたロシアルーブル建て債券に対する投資をする際に、どのようなことに留意すべきでしょうか?
まず、ロシアルーブル建て個人向け社債の金利水準については、ロシアの政策金利が今回0.50%利上げされたことから、個人向け社債の利率も上昇する可能性が高いと考えます。ただし、今後も経済情勢次第で利上げが続く可能性は高く、現在の金利水準が天井ということは無さそうです。
一方で、ロシアルーブルは既に過去最安値圏にありますが、欧米からの経済制裁が続く中でルーブル安が進行する可能性が高そうです。経済制裁によって続く大規模な資産流出に対して、為替介入で買い向かえるとはとても思えませんし、既に利上げカードは切ってしまっている以上、ロシア中銀として打てる手はかなり限られているのではないでしょうか。
さらに、10月頃に予想されている米連邦準備理事会(FRB)による量的金融緩和停止によって、リスク資産からの資金流出が起こる可能性も考えると、当面はルーブル安が進行するリスクを想定に入れておく必要がありそうです。
さらなる金利上昇の可能性、ルーブル安がさらに進行する可能性、さらに米連邦準備理事会(FRB)による量的金融緩和停止、といったリスク要因を考えると、ロシアルーブル建て債券への投資は慎重に検討すべき状況と言えそうです。(提供:社債投資まとめ!)