失われた20年を振り返る
失われた20年…バブルが崩壊して、デフレ経済が続き、円高・株安に苦しんできたこの20年…ただ、その途中には、都心部の土地の価額の下落によってファンドのミニバブルが生じて、都心部の不動産の価格がつりあがる時期がありました。そして、リーマンショックで、また、奈落の底に落ち込んでしまいました。
政権は自民党から民主党に移り、この民主党時代に本当にいろいろなことが起こりました。沖縄基地問題、尖閣問題、東北大震災、福島原発…そして、景気は円高・株安のどん底の状態でした。消費増税と引き換えに解散総選挙を決断した元野田総理。今となっては、大きな大決断であったなと思います。
自民党に政権が交代し安部政権が誕生しました。非常に明確な景気対策を打ち出し、円安・株高のアベノミクスによって日本経済は一息つきかけています。そして、2020年の五輪は東京に決定し、東京の神宮や湾岸地域は五輪施設の建築ラッシュとなっています。
この景気の持ち直しを反映して、都心のビル需要は増大し都心部のあちこちで大きなクレーンがビルの建築に活躍をしています。まさに、いま、東京五輪への盛り上がりもあって、ちょとしたバブルがおきようとしているようです。
このバブルは、東京五輪開催前にまさに泡となるであろうとも予想している人もいます。結局、いい時は長く続かない…いい時と悪い時が、交互に繰り返されるものなのでしょう。
土地の相場もそうかもしれません。バブルの崩壊前は、土地の価格が下がるということを考えたこともありませんでした。
当時、NHKで日本の土地の値段は高すぎるといった特集番組が放映されていたことを覚えています。今の半分の価格相当額が、適切な価格帯であると言ってました。何を言うかと何気にきいていましたが、まさかのバブル崩壊。銀行は大丈夫か…証券会社は大丈夫か…不動産や株で大損する個人や会社が相次ぎました。自己破産に倒産…とんでもない事態になりましたが、土地相場の大幅な下落にともなって、一般の会社員も都心のマンションを購入できようになってきました。都心回帰という現象です。土地の値段が適切化されるのも悪くないなと思いました。
土地(不動産)の価値をきちんと把握する大切さ
しかし、バブルってなんだったのでしょうか…。バブル以降は、土地の相場は落ち着いてきたと思います。一部の都心部のみ、ファンドバブルでの浮き沈みが生じてきましたが、地方は微減ながらデフレな分、毎年、路線価は下がり続けています。
このように、不安定な時代になってしまいましたので、不動産をそれなりに所有されている方は、自分の持っている不動産の価値を、きちんと押さえていくことは、とても重要なこととなってくるでしょう。はたして、今、この土地は売れるのか、売れないのか。売れるとしたら、いくらで売れるのか。または、この土地は稼げる土地なのか、稼げるとしたらいくら稼げるのか。その稼ぎは、土地の相場と兼ね合わせて適切な稼ぎであるのか否か。さらに、この土地を持ち続けることによって、税金をいくら納めるのか。
固定資産税は…相続税は…その相続税がかかってきたときには、納税ができるのか…。そもそも、相続税の計算のための土地の評価額はいくらなのか。売ったらいくらのほかに、相続が発生したら税金はいくらの見通しも立てておきたいところです。
そして、納税のためにどうしたらいいかを考えてみる。金融資産で、対応できればそれでOKですが、金融資産で、将来の税金という負の資産をまかなえないときは、その対策を考える必要があります。
また、相続人間の遺産分割を考える上でも、不動産の価値をよくよく、調べておく必要があります。
特に、アパートや倉庫、貸店舗、賃貸マンション等の土地活用がされている不動産の場合は、土地の近隣の相場がいくらだからいくらという見方だけではなくて、賃貸収入が年間いくら、そして、あと何年貸すことが出来そうだからといった収益還元の見方でも考えてみましょう。
そして、不動産の全部の価値を調べたら、その全てのデータを眺めながら、分割や納税を考えてみてください。その時には、当然、不動産の他の金融資産を始めとした財産、さらには借入金等の債務がある時は、それらのものも同じテーブルに載せて考えてみましょう。
借入金は、債権者の同意があって、初めてその債務を承継する相続人が定められます。相続人間で、遺言書等により承継者を定めるのは勝手ですが、債権者はあくまで相続人全員がその債務を弁済する義務を有するわけですから、相続人間の勝手に決めた承継者を単純に了承するというわけではありません。その点には、注意して、相続前にあらかじめ、その承継等についてのお話合いは済ませておくべきでしょう。
相続対策は、相続財産の大半を占める不動産のことを、よく知ることから始まるといっても過言ではありません。自分の所有している不動産の価値、売ったらいくら、貸したらいくら、税金はいくらを、まずは掴んでみましょう。土地活用や生命保険による相続対策は、その後からです。
くれぐれも、全体の不動産のデータを同じテーブルに載せて頭を悩ませる前には、何かしらの対策を講じてしまうのはお勧めできません。まずは、不動産を知るを意識してみてください。(執筆者:荒木 達也)