ブラジルでは、大統領選挙が10月5日に迫っています。 現職のジルマ・ルセフ大統領(労働者党;PT)と、有力対抗馬であるシルバ元環境相(ブラジル社会主党;PSB)の一騎打ちに近い様相を呈しているブラジル大統領選挙ですが、この大統領選挙の世論調査が発表されるたびにブラジル市場が大きく動く状況になっています。
「社債投資まとめ!」でも取り上げているように、高利回りなブラジルレアル債券は個人投資家の間でも人気がありますが、今回のブラジル大統領選挙はどのような影響があるのでしょうか。
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ブラジル現職ルセフ大統領の経済失政
ブラジルでは、2011年に就任したルセフ大統領が、低金利を経済政策の優先課題に掲げ、就任当時は10.75%だった政策金利を積極的に利下げし、2012年10月には過去最低の7.25%にまで引き下げました。
しかし、低金利で融資を促進し、持続可能な経済成長を実現するという目的に反し経済は低迷、2012年にはGDP成長率が1%を下回るまでに落ち込みました。
経済成長が停滞する一方で、利下げの結果として2012年後半からインフレ率が上昇しました。ブラジル中央銀行はインフレ目標は2.5%~6.5%と設定していますが、2013年4月にはインフレ率は6.5%を超えるに至りました。
ブラジル中央銀行のインフレとの戦い
こうしたインフレ率の悪化を食い止めるために、ブラジル中央銀行は政策転換をし、2013年4月から利上げを開始、今年5月28日に利上げをいったん休止するまで8回連続で利上げを続けました。こうしたブラジル中央銀行の思い切った利上げによって、インフレ率の悪化は何とか食い止められています。
しかし、経済成長が停滞している中で利上げを行うことは本来は望ましいことではありません。できれば利下げを含めた金融緩和によって景気刺激を図りたいところです。かといって、ブラジルのインフレ率は引き続き高水準にあり、どちらかといえば引き続き利上げが必要な状況です。こうした、景気浮揚とインフレ抑制という二つの課題の間で板挟みに陥っているのが現在のブラジル経済の状況です。
ブラジル大統領選2候補の経済政策
ブラジル現職大統領のルセフ大統領は、ブラジル中央銀行の金融政策に対して介入政策をとり、ブラジル経済を現在の苦境に至らせた責任があるとマーケットでは見られています。一方で対立候補であるシルバ元環境相は、ブラジル中央銀行の独立性を強めてインフレターゲット政策を導入し、基礎的財政収支の黒字化に取り組むとしています。
ルセフ大統領が再選された場合には、経済・財政状況がさらに悪化して、ブラジル国債の投資不適格級への格下げや債務危機の再来を懸念する声もあります。一方で、シルバ元環境相が当選した場合には、短期的な苦痛は伴うもののインフレ率は改善し、国債の格上げにつながる可能性もあるという評価もされています。
こうした明確な経済政策の違いがあることを受けて、マーケットは一貫してシルバ候補を支持しており、ブラジル大統領選の世論調査でルセフ大統領の支持率が下がると株式市場/為替市場とも好感して株高/通貨高に向かい、逆にルセフ大統領優勢が伝えられると株安/通貨安に向かいます。
現在のところ、10月の大統領選を控えてブラジル中央銀行は景気浮揚の足かせとなる利上げはいったん休止しています。しかし、大統領選終了後には、ルセフ大統領とシルバ元環境相のいずれが当選しても、利上げが再開される見通しです。
ブラジルレアル債券投資は様子見?
10月のブラジル大統領選は、ブラジル経済が今後どんな方向に向かうのかを決める大きな分水嶺になりそうです。ブラジルレアル債券への投資にあたっても、ブラジルの政策金利、ブラジル国債の利回り、ブラジルレアル相場などの方向性が大きく変わってくるイベントです。ブラジルレアル債券に対する投資は、少なくともブラジル大統領選の帰趨を見極めてからにした方が賢明と言えそうです。(提供:社債投資まとめ!)