今年は、例年以上に大きな自然災害が日本を襲い、自然リスクの大きさに慄然とした感がありますが、世界経済も少しあやしくなってきました。年初来、円安・株高にささえられ、なんとなく日本経済は上向きになっていくような感覚が、10月に入り、円高に振れ、株価が下落し始めています。
10月7日に発表されたIMF(国際通貨基金)の来年の経済見通しが、7月に公表された4%→3.8%に引き下げられたこともあり、投資家が今後の経済成長に悲観的になってきた模様です。
将来の投資を考える場合、その投資に見合う収益率の予想を「期待収益率」という言葉で表しますが、たとえば政府が発行する国債は、満期まで保有すれば元本が戻るため、無リスク資産というような言い方をします。
一方株式投資は、価格の変化が大きいためリスク資産となりますが、国債の金利が仮に1%とした場合、株式投資の期待収益率はどのくらいに考えれば合理的な投資となるのでしょうか?
世界中の株式市場のインデックスに投資をしたとするならば、平均5%程度の収益率があると認識されています。逆に言うと、世界経済の成長が低下してきて、株式に投資したとしても、5%以下の収益率しか予想できないとしたら、大きなリスクを取って株式に投資する人が減っていく可能性があります。
今、投資家が心配していることは、米国金利の上昇が予想される中、新興国に投資された資金が大量に米国に還流しているため、世界経済の成長力に陰りが生じてきている点です。
新興国では、1年間に約100兆円程度社会インフラの整備のための資本が必要とされていますが、その投資資金が引き揚げられた場合、新しい産業や雇用が生まれず、成長力が鈍化するリスクが生じます。
一方先進諸国では、ユーロ圏がデフレに直面し、日本もやっと、デフレから脱却できそうなところまで、たどりついたところです。今まで世界経済をけん引してきた中国も少し息切れしてきたところです。
ドル高が続くと、米国の輸出が減少することになり、好調と思われる米国経済にもリスクが高まります。
そう考えると、世界経済の見通しを考える人たちは、不安になり、リスク回避のために株を売却し、債権を購入し、リスクに備える動きが高まりそうな感じです。
資産配分の比率をを検討する時期と考えます。(執筆者:渡邉 誠)