世界に先駆けて65歳以上の人口が2割を超える超高齢社会に突入した日本では、今後も高齢者人口の増加と寿命の延びにより、認知症患者が着実に増加していくと予想されます。
認知症の主な原因が加齢と生活習慣病とみられるなか、現状では薬物療法で進行を遅らせることしかできないため、介護者の経済及び精神的負担も大きいことを勘案すると、他国や過去の事例とは異なる新たな状況に見合った資金準備を考える必要があります。
85歳以上の2人に1人が認知症を発症
国立社会保障・人口問題研究所によれば、更なる少子高齢化の進展により、日本の65歳以上の人口比率は2010年の23%から2025年に30%、2050年に39%に達する見通しです。
また、2013年からの10年間での平均寿命は、男性が80.09歳から81.15歳、女性が86.80歳から87.87歳へとさらに延びると予測されています。
一方、厚生労働省によれば、65歳以上の認知症有病者は推計約462万人で、65歳以上の高齢者に占める有病率は7人に1人の割合であり、予備軍の軽度認知障害者も加えると4人に1人の割合に達します。
また、認知症有病率を年代別にみると、加齢と生活習慣病で急速に高まる傾向にあり、74歳までは10%未満ですが、85~89歳で約41%、90歳以上で60%を超えるなど、85歳以上ではほぼ2人に1人が認知症を発症している状況です。
更に、認知症の原因疾患の過半を占めるアルツハイマー病の経過年数が10~15年で、根治治療がない現状では、家族の経済及び精神的負担を軽減させる対策が重要となります。
介護費用の多寡は、要介護度と介護をどこで受けるかで決まる
無論、介護費用が一様に高額なわけではなく、介護費用の多寡は被介護者の要介護度と介護をどこで受けるかで決まると言えます。
要介護度に関しては、公的介護サービス費は1割負担とはいえ、要介護度(要支援1~2、要介護1~5)が重くなるにつれて、病院代などを含む費用は増していきます。
また、介護を受ける場所としては、大きく自宅と介護施設に分けられますが、被介護者の多くは住み慣れた自宅介護を望むケースが多いようです。
施設に比較してトータル費用は安くなるものの、自宅介護のために仕事を辞める介護離職者がここ5年間で約49万人に達していることや、日常の排泄介助などは介護する家族にとっても精神的負担があることを考慮する必要があります。
一方、介護施設には公営や民営、一定の要介護認定の条件付きなど様々な種類がありますが、費用や介護サービスに大きな開きがあることを十分に理解しておくことです。
そのうえで、必要となる資金をどう準備するかは個々人の考え方や生活環境で異なりますが、公的介護保険サービスはさらなる自己負担の増大とサービスの縮小が避けられないため、補完的に民間の保険と貯蓄でどうバランスを取るかが焦点となります。
資金的な準備として民間の医療保険や介護保険を考える場合、認知症を含む介護状態になるかならないかではなく、介護負担を軽くするための一助として、自分がヘッジしたいリスクの範囲での活用を考えれば、保険料負担を抑えることは可能だと思います。(執筆者:青沼 英明)