社会問題となっている空き家問題は深刻ですね。全国に820万戸の空き家があるといわれています。全国の総数に占める割合は13.5%と過去最高を更新しています。
820万という数字が多すぎてピントこないですが、比較をしていただくとその多さにびっくりさせられます。私が事務局長を務めている埼玉県定期借地借家権推進機構「略称 埼玉定期機構」の地元の埼玉県内の人口は、723万人(平成26年9月1日現在)で世帯数は約293万世帯です。東京都は1,337万人(平成26年9月1日現在)で世帯数677万世帯となっています。
なんと、東京都の世帯数を上回る数の家が空家となっているのです。東京都では、マンションの空家率が、千代田区36%、中央区28%、荒川区19%となっています。(長嶋 修(著)「空家が蝕む日本」ポプラ新書より)ほとんどが投資用のワンルームマンションで18平方メートから25平方メートルくらいの部屋です。お金をかけてきれいにするとか、賃料を下げるとか経営努力をしないものだからそのままになってしまっているようです。
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空き家問題の実情
空家に関しては多くの問題がありますが一戸建ての場合は、不審者が住んでしまったり、子供たちの遊び場になってしまうために火災の心配もあります。賃貸住宅にするという選択肢もありますが、建物所有者は多額の費用を掛けてリフォームしてまで貸すことを選択しない場合が多い。空き家対策で、リフォームして空家になったら笑えないですよね。
売却という選択肢もありますが、よくあるケースとして相続が発生して揉めている場合です。親の自宅を子供たちで相続したが、共有財産としてますので売却に消極的な子供がいる場合は売却は難しいです。建物を解体して他の活用を検討するとしても建物を解体してしまうと、土地の固定資産税が6倍になってしまう。(土地に居住用の建物があると土地面積200平方メートルまでは1/6になっている)
「定期借地権」活用がオススメ
そこで、提案したいのが土地と建物を定期借地権付建物として売却してしまうことです。分かりやすくいうと、土地の所有権は持ったまま土地を一般定期借地権(土地を一定期間使う権利)で賃貸して、建物は所有権で売却します。
定期借地権付建物を購入した方は、好きなように建物をリノベーションして住むことができます。売却した代金を兄弟で分けることにすれば同意が得られやすいですね。土地の固定資産税は、建物が建っているので1/6のままで行けます。建物を売ってしまうので、建物の固定資産税も不要になります。売却代金以外に地代を取得することで土地の固定資産税額を上回ることが出来れば満足度も上がりますね。
契約期間終了後は、建物を壊して更地にしてもらうか。そのまま建物を残して行ってもらうということも可能です。土地を貸して建物を売ってしまえば空室不安はなくなります。
「定期借地権」の賢い活用方法
さて、購入者を探すことが出来るかという問題ですが、定期借地権付建物で売買するということは、不動産業者も動いてくれますし、お金を貸したい金融機関も動いてくれます。購入者は、高齢者シェアハウスやルームシェアなど知恵を絞って活用することになるでしょう。経営リスクは、土地所有者は関係ありませんので安心していて大丈夫です。
もし、建物購入者が事業に失敗して地代を支払ってくれない場合は、借地権の解除が可能となります。建物の解体費分は預かっておきましょう。そして、借地権と建物購入者には、金融機関から融資を受けていただくようにしましょう。
何故なら、地代を払えなくなるということは融資の返済も滞るということになります。地代不払いで担保物件が取り壊されないように、融資した金融機関は建物所有者に代わって地代を払い続けてくれます。そして、新しい購入者も世話をしてくれます。
金融機関が連帯保証人となってしまうんです。痛快ですね。是非、空き家対策に定期借地権を活用してください。契約する場合には、契約期間内であっても一年以上前に借地人が土地の所有者に申し入れることで解約で出来るという条項もご検討ください。(執筆者:岩宗 繁樹)