今年もまた、年末調整のシーズンを迎えました。そうです。毎年「同じような書類」に「同じようなこと」を書いているあれのことです。総務や経理の方から「早く年末調整の書類を出してください」と言われる方もおみえになることでしょう。今回は、見落としやすい事例を御紹介したいと思います。
日本の共働き世帯は、1,000万世帯を超え、全世帯数に占める割合も21.3%と男性雇用者と無業の妻からなる世帯の割合14.9%を6ポイント以上も上回っております。その中には、年間の合計所得金額が夫婦共、76万円以上(給与収入のみの場合、年収141万円以上)のため、「うちには、配偶者控除も配偶者特別控除も関係ないわ」という世帯も相当数おみえになることでしょう。
しかし、育児休業期間中は “ 話が別 ” の場合があります。
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出産育児関連の公的給付は合計所得金額には含まれない
勘違いされてみえる方がおみえになるのですが、出産したときにもらえる出産育児一時金、出産の前後一定期間にもらえる出産手当金、育児休業期間中にもらえる育児休業基本給付金は、非課税所得なので合計所得金額には含まれません。
※参照:国税庁HP(https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1191_qa.htm)にもQ&A形式で示されております。
ということは、育児休業期間中に給与を支給する会社はほとんどないと思われますので、1年丸々、育児休業期間の方は無収入ということになります。(給与収入のみの場合)
年の途中から育児休業に入られた方でも年間合計所得金額が38万円以下(給与収入のみの場合、年収103万円以下)もしくは、76万円未満(給与収入のみの場合、年収141万円未満)という方は多いのではないでしょうか。
そうしますと、その他の要件(下記参照)も満たせば、配偶者控除もしくは、配偶者特別控除の対象になってきます。
配偶者控除の控除対象配偶者の要件
控除対象配偶者とは、その年の12月31日時点で、下記1.~5. 全てに当てはまる人をいいます。
1. 民法の規定による配偶者であること(内縁関係はダメ)
2. 納税者と生計を一にしていること
3. 年間の合計所得金額が38万円以下
(給与収入のみの場合、年収103万円以下)であること
4. 青色申告者の事業専従者としてその年に一度も給与の支払いを
受けていないこと
5. 白色申告者の事業専従者でないこと
配偶者特別控除を受けるための要件
配偶者特別控除を受けられるのは、控除を受ける人のその年における合計所得金額が1千万円以下であり、かつ配偶者が下記1.~6. 全てに当てはまる場合です。
1. 民法の規定による配偶者であること(内縁関係はダメ)
2. 納税者と生計を一にしていること
3. 青色申告者の事業専従者としてその年に一度も給与の支払いを
受けていないこと
4. 白色申告者の事業専従者でないこと
5. ほかの人の扶養親族となっていないこと
6. 年間の合計所得金額が38万円超76万円未満(給与収入のみの場合、
年収が103万円超141万円未満)であること
お手続きは、控除を受ける方の「扶養控除申告書」の控除対象配偶者の欄に記入するだけです。
総務や経理の方から、「こんな状況ではありませんか?」と聞かれたり、わかりやすく事例が掲載されていたりすればいいのですが、なかなかそこまで融通が利かないのが実情です。忘れずに手続きするようにしましょう。(過去に手続きされなかった場合でも、サラリーマンであれば5年以内なら取り戻せます)
最後に、配偶者(特別)控除の対象は、「妻」だけを指しているわけではありません。妻から見た配偶者である「夫」でも対象となり得ます。
夫が失業したとか、転職期間が長くて収入がなかったなどで上記要件を全て満たせば、妻の年末調整で配偶者控除もしくは、配偶者特別控除が受けられます。お間違えのないように。(執筆者:小木曽 浩司)