ライフプランの根底にあるのは、自分の時間と資産を人生の早い段階で運用し始めることが重要なのですが、時間と資産を投資すべき理由はそれだけでなく、さらに恐ろしい事実が私たちの生活を少しずつ蝕んでいるからでもあるのです。
流行語大賞になってもおかしくないほど知られた言葉、「アベノミクス」。日銀と協同しながらの政策によって円安・株高を演出しているわけですが、その根底にある一つの重要な日銀プラン。それが、「物価安定目標2.0%」です。
これは実質上「インフレターゲット」と同じ理論で、シンプルに言うと「前年よりも物価水準をどれだけ高くするか」を示す指標のことです。物価安定目標が2.0%ということは、前年よりも2.0%物価が上昇することを目指しているということですから、今年1,000円の物が来年1,020円に、再来年1,040円になるという意味です。
20円、40円大したことないと思いますか? 1,000円の品物だけだったら大したことないかもしれませんが、1年間の生活費ベースで考えると大変なことです。
年間の食費が50万円かかっているとしたら、来年は51万円、再来年は52万円以上かかるということです。1円でも節約したい奥様にとっては大打撃ですよね。しかも物価は上昇しているのに給料は横ばいとなれば、旦那様への風当たりが強くなるかも…。
1000万円貯めても、翌年には980万円、960万円…と減っていく
また、それより重大な点として、インフレ率2.0%が引き起こすのは物価上昇だけでなく、貯蓄額の目減りです。貯蓄額が100万円あったとしても、物価上昇に伴い100万円の価値は98万円、96万円のように、毎年2.0%ずつ減少していくということ。老後の為に1000万円貯めました! と言っても、980万円、960万円…と減っていくのでは、その後の老後生活が不安でたまりません。
しかし、これが現実です。日銀はこれまでかつて行なったことのない「異次元緩和」という方法で、一般庶民の貯金価値を毎年2.0%下げようとしているのです。
定年までまだまだ年数があるとしても、ある一つの事実を注視しなければなりません。それは、老後資金として必要となるのが約6600万円だということです。年金が貰えるのは原則65歳から。そして日本人平均寿命は90歳弱。だいたい90歳まで生活するのに必要なお金は約6600万円だという調査結果がでています。(調査元:生命保険文化センター 「平成25年度 生活保障に関する調査」)
夫婦二人で生活するために最低限必要な額が22万円/月と試算されていますから、1年で264万円、25年で6600万円必要となります。
仮に夫婦二人とも国民年金加入だとすると、現在の国民年金満額\772,800×2人=154万5600円/年となり、90歳までに受取ることができる年金総額は3864万円。となると、最低限必要となる6600万円まで2700万円以上の不足になる計算です。
×老後は年金があれば大丈夫
×老後資金は少しずつ貯金しておけば大丈夫
どれも甘い考えです。今の私たちを取り巻く社会では恐ろしいことが起きているのです。ライフプランを貫き、ライフプランの最終ステージを完遂するには、今すぐにでも時間と資産を投資し始めるべきなのです。
「投資=多額の資金が必要」という時代ではない
とはいうものの、今すぐ資産を投資する気にはなれないかもしれません。投資は危険、投資を始めるには多額の資金が必要になる、などのイメージがありますからね。投資が必要だということは頭では何となく分かるものの、その最初の一歩がなかなか踏み出せない…という方が少なくないようです。
しかし、投資=多額の資金が必要、という時代ではありません。今は数千円、数万円~資産運用を始められるんです。
一例ですが、株式銘柄の中にはETF(上場投資信託)というものがあり、証券取引所で取引できる投資信託の一種で、一般の株式銘柄と同じように売買できます。一般の投資信託は、信託報酬、分配金など複雑で分かりにくいという初心者の方も気軽に購入できるのがETFなんです。
ETFの中に、WTI原油ETF(証券コード1671)という銘柄があるんですが、これは北米の原油価格の指標となるWTI原油価格に連動するタイプの銘柄となっています。WTI原油価格の今後の行方を予想しながらの取引となるこの銘柄、11月17日の終値価格は5,960円、1口単位で取引できますから、手数料を入れても6,000円ほどで購入できますよ。
これは少額投資の一例に過ぎません。ここで覚えておきたいのは、最初は少額投資で良いんです。というより、少額で投資に慣れることが肝心で、時間とお金に働いてもらうとはどういうことなのか、実際に体験してみることが重要です。少額からスタートし、慣れてきてから少しずつ投資金を増やすことで、リスク分散にもなりますからね。
最後に、今後のライフプランをもう一度見直しすることをオススメします。そして、今の現況に一番相応しいプランを実行し、将来の幸せな自分を描く青写真が現実のものとなるよう、今ある時間と資産を投資してみましょう。今こそが、行動すべき時なのです。(執筆者:堀 聖人)