FP相談を受けていますと、避けて通れないご相談の中に生命保険が有ります。生命保険の相談と言っても、様々な内容が有り、例えば、ご両親の保険を心配したご相談。老後の不安をヘッジするために加入した個人年金保険などの運用の相談。ネットやマネー誌などでよく取り上げられる医療保険などの、どんな保険が一番いいのかなどの相談があります。
様々な相談の中でもやはり一番多いのは、自分が生命保険に加入するに当たり、幾ら加入すれば安心なのか? つまり、自分の必要保障額についてが、一番多いように感じます。今回は、生命保険加入時の必要保障額について考えてみたいと思います。
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では、生命保険の加入時の必要保障額と言っても、余りに漠然としていて捉えようが有りません。何故ならば、
家族構成は? 子どもは何人?
子供の教育プランは? 大学は国立? 私立? 文系? 理系? 医系?
マイホームは、賃貸なのか持ち家なのか?
持ち家ならばローン返済中なのか?
将来、相続税が掛かるような資産ボリュームなのか?
等々、上げればきりが有りません。
そこで、一般的な必要保障額の算出方法は、FPが使用するキャッシュフローなどのソフトで計算しますが、加入時の必要保障額は基本的に下記のような方法でも計算できます。
自分の必要保障額の計算方法
■生活費
妻の生活資金
現在の生活費 × 0.5 × (平均寿命年齢-現在の年齢)= (1)万円
末子22歳までの生活費
現在の生活費 × 0.2 × (22歳-末子年齢)= (2)万円
■教育費
第一子教育資金 = (3)万円
第二子教育資金 = (4)万円
・幼稚園(3年・公立) 45万円
・小学校(6年・公立) 59万円
・中学校(3年・公立) 51万円
・中学校(3年・私立) 301万円
・高 校(3年・公立) 70万円
・高 校(3年・私立) 217万円
・大 学(4年・国立・文系) 243万円
・大 学(4年・私立・文系) 338万円
・大 学(4年・私立・理系) 463万円
・大 学(6年・私立・医系) 1,849万円
*学校教育費とは、学校納付金(入学金・検定料・学級費・PTA会費等)や修学旅行(遠足)や図書や学用品や通学関係費など
*幼稚園~中学校までは、学校給食費を含む。
*公立の小学校~高校までの授業料は、無償化の為に含まれない。
*学習塾やクラブ活動費は、人口規模で大きく異なる為に、計算から除外した。
*学校教育資金の目安は、平成26年1月10日報道発表の文部科学省、平成24年度「子供の学習費調査」の結果を参考に、筆者が計算作成。
以上の数値に、補助学習費(学習机や参考書の購入費、家庭教師や通信教育費や学習軸の経費)や学校外活動費(スポーツ・文化活動費・稽古など)をプラスすると、オール国立・文化系で大学までの教育費は、概ね1千万円掛かります。また、県外の大学で有れば、生活費等を加えなければなりません。
年間賃貸料 ○○万円 × (平均寿命年齢 - 現在年齢) = (5)万円
葬式代 = (6)万円
お墓代 = (7)万円
ローン等 = (8)万円
死亡時に必要なお金の合計=(1)+(2)+(3)+(4)+(5)+(6)+(7)+(8)=A
保 険 加入している生命保険・共済(業務中ならば政府労災保険などもプラス) = (1)万円
退職金 勤務先の死亡退職金等 = (2)万円
預貯金 今までに蓄えた貯蓄等 = (3)万円
年 金 加入時の公的年金制度からの遺族年金 = (4)万円
その他 = (5)万円
死亡時に入ってくるお金の合計=(1)+(2)+(3)+(4)+(5)=B
A-B=C(生命保険の必要保障額)・・・奥様が専業主婦の場合で、相続税などは考慮していません。
以上の計算値は、シミュレーションした時点の必要保障額となり、それ以降は、一般的に時間の経過とともに必要保障額は、経過した部分の保障額が減少します。
また、マイホームなどを取得すれば、住宅ローンを借り入れと同時に団体生命保険(借入者の死亡の保険金で住宅ローンを完済)に加入しますので、それ以降の賃貸料を差し引く事が出来ます。更に、奥様が働くことにより収入が有れば、その収入分も保障額から差し引く事が出来ます。
保険を検討するときに大切なこと
以前のコラムで「自分に本当に必要な生命保険を判断する「5つのリスク」」でも触れましたが、万が一のために生命保険に加するわけですから、合理的な必要保障額を算出して、貯蓄と保険のバランスを考える事が重要です。保険はあくまでも何かの事故が発して、支払い要件になって、初めて現金という経済活動するときに利用できる対価を得ることが出来ます。
しかし、人間なかなか病気にかかっても医療技術が進歩していますので、大病=死では無くなりましたが、今までの仕事場で働けなくなり収入が途絶えるリスクも有ります。今後は、死亡リスクと同じくらいに、働けなくなったときの保障も考慮する必要があるかもしれません。
そして、保険を設計するに当たり、加入する自分でもきっちり理解できるシンプルな保険を選ぶこと、更に、途中で色々な環境も変わるかもしれません。途中で、見直しも必要になる事も有りますので、保険料の支払いは子どもが大学へ行く頃が、きつくなりますのでライフイベントなども考慮して、支払える範囲で検討する事が必要となります。(執筆者:古川 修一)