『持家が得か? 賃貸が得か?』というコラムは多くの方が書いていますね。私も楽しくそして興味深く読ませていただいています。
それにしても要点が良くまとまっていますよね。持家と賃貸を比較するとなると30年という長期にわたる損得勘定で、土地の価格や金利などの変動値が多くて計算も複雑なのに、分析がしっかりされていて「凄い!」といつも感心させられます。
私はそのような複雑な計算は得意ではないので、住宅メーカーの営業マンとしての経験から、別の角度から持家と賃貸について考えてみることにします。それは、「妻言い分、夫の言い分」です。
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夫婦の考えは本当に同じですか? 実は異なる本音
分譲地の担当していた時期に感じた事は、持家と賃貸について夫婦で同じ考えの場合はハッピーだという事です。反対に不幸なのは「妻が持家派、夫が賃貸派」といったケースです。それも、充分にお互いに話し合っていないケースです。
妻は、持家志向ですから新年には住宅展示場に夫を誘って家族で出かけてゆく。良い分譲地の情報があると週末には家族で相談会に参加する。といった積極的な行動をします。夫は、持ち家志向でないですからレジャー気分でついて行く。
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そんなある日、担当者や雰囲気にのせられて分譲地の抽選に申し込んでしまう。夫としては、当たってから考えようと軽い気持ちですが、妻は分譲地の抽選に申し込んだだけで舞い上がってしまう。そして、抽選日に会場に足を運ぶと当たってしまった。ここで申込金を渡して2週間ほどで家のプランを作成し、建物の見積もりを確認してOKならば土地の売買契約と進んで行く。
しかし、売買契約をする前に乗り越えなければならない大きなハードルがあります。不動産は衝動買いをするほど簡単な買い物ではありません。持家取得は人生を賭けた一大事なのです。
契約をするためには、これからの人生設計について、夫婦で話し合いをすることになります。
「転勤の場合は単身赴任で良いのか?」
「子供は私立か? 公立か?」
「車は何時買い替えるのか? 夫の御小遣いは?」
「親の介護が必要になった時はどうするのか?」
などです。考えれば考えるほど購入できない理由を探すことになります。
そして、分譲地購入をキャンセル。離婚という最悪の結果になったケースもありました。
妻の言い分としては
と、「私の生活のために資産を残してよ」という考え方。確かに本音でしょうが、こんなことを夫にいうと取り返しのつかないことになります。
夫の言い分としては
「持家の為に人生を台無しにしたくない」
「これ以上家族の犠牲になりたくない!」
と言ったところです。
妻に押し切られていやいや持家を取得した家庭
購入を断念した方は、お互いの人生設計を話し合う場として契約までの時間を有効活用できたかもしれません。しかし、妻に押し切られていやいや持家を取得した家庭で悲惨なケースがありました。
住宅ローン返済に追われる精神的な苦痛から、それまで優しかった夫が暴力をふるうようになってしまったケースです。夫としては、金利が上昇する事や不動産価格の急激な下落などの不安がストレスとなり、自分を見失ってしまったのです。
持家を購入したことで家族がハッピーでなくなるって本末転倒ですよね。幸いに、早めに売却をして賃貸に戻ったことで離婚はまぬがれたようです。この場合は諸経費などの損失は出ますが、優しい夫に戻れた事でよしとするしかないでしょう。
『持家か賃貸か?』については、人生を賭けた一大事です。マスコミや宣伝に惑わされることなく夫婦でジックリ話し合って方針を決めることをお勧めします。『持家か賃貸か?』について、話し合うことは今後のライフプランニングに欠くことのできないテーマです。是非、話し合ってみてください。
賃貸を選択した場合は、老後の家賃支払いという事に対してどの様な対策をするのか? 持家の場合は、金利の上昇や不動産価格の下落に対してどの様な対策をするのか? など、リスクに対する処方箋が明確になっていると精神的にも良いようです。見えない恐怖ほどストレスになることはありません。(執筆者:岩宗 繁樹)