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こんにちは! 今回は、
前回に引き続き、
である「リキッド・オルタナティブ・ファンド」について、解説したいと思います。
目次
1. 「リキッド・オルタナティブ・ファンド」の動向
市場の変化に大きな影響を受けにくいという特徴を持つことから、最近、アメリカではこの「リキッド・オルタナティブ・ファンド」が急拡大しています。
ヘッジファンド自体も、リーマンショック以前の水準を超えて、約2.9兆ドル(約342兆円)の市場規模に拡大していますが、アメリカの投信市場はその5倍の約15兆ドル(約1770兆円)にも上ります。この市場で、同タイプのファンドが最近急増しているのです。
2014年7月末の時点では、同タイプのファンドは481本にも上り、この5年間で2倍以上の本数となると共に、運用残高は4.4倍の3064億ドル(約36兆円)にまで達しました。
主な要因は、ヘッジファンドの主要顧客である年金基金などの機関投資家が、ヘッジファンドからリキッド・オルタナティブ・ファンドに乗り換えていることが、最大の要因といえます。
2. 機関投資家の動き
アメリカの調査会社による約380の機関投資家への調査結果によれば、「リキッド・オルタナティブ・ファンド」に投資している機関投資家が35%、「今後投じる」との答えが16%という結果になっています。
金融危機後、流動性・透明性への要求を強めた機関投資家が、いままで伝統資産との相関を抑えて、ヘッジファンドへの配分比率を高めてきましたが、反面、ヘッジファンド戦略で“苦い経験”をした機関投資家は、流動性・透明性とパフォーマンスの背反性も十分認識していることから、「リキッド・オルタナティブ・ファンド」へ、資金をシフトしてきていると言えます。
今後、いわゆる伝統的なアクティブ運用とヘッジファンドの融合が進むことにより、確定拠出型年金や公募投信を通じて、個人も「ヘッジファンド戦略」に投資しやすくなっていきます。アメリカ国内で同タイプの投信が増加すれば、日本への波及もまず間違いないと言えるでしょう。
3. 日本における「リキッド・オルタナティブ・ファンド」
では、このような変化の中、日本国内ではどうような“動き”が観られるのでしょうか?
代表的なものとしては、「トレンドアロケーション手法」を用いた投資信託があります。当ファンドは、ファンドオブファンズ方式で運用されており、主要投資対象は、先進国の国債、世界各国の株式・債券・REIT・コモディティなどです。
運用会社の運用戦略によれば、世界各国の先物取引を利用しながら、市場動向を重視したアクティブな資産配分と市場のダウンサイド・リスク低減のためのリスク・マネジメントを組み合わせることにより、リスク調整後の良好なリターンの獲得を目指すとしています。
また、「ロング・ショート手法」を用いた投資信託もあります。同ファンドは、主として内外の短期有価証券に投資し、安定した収益の確保を目指すとともに、世界主要国の株価指数先物取引、債券先物取引等の有価証券先物取引等および為替予約取引等の積極的な活用により、日本円の短期金利水準を上回る収益の獲得を目指すファンドです。
今後、国内においても、「リキッド・オルタナティブ・ファンド」が、拡大していくとみられています。
そして、この数年のうちには、ETFなどを用いた“インデックス運用”と、流動性の高いリキッド・オルタナティブ・ファンドを用いた“アクティブ運用”が、日本国内でも定着していくのではないかと見ています。(執筆者:荒川 雄一)