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米連邦準備理事会(FRB)の議長は半期に1度、上院で議会証言を行なうのが定例となっているのですが、2月24日に行われた議会証言は市場関係者なら誰もが注目するものだったと言えるでしょう。
それもそのはず、アメリカ経済は上向きで、市場の焦点は「FRBはいつ利上げするのか?」に絞られているからです。世界経済の中心を成すアメリカとその利上げは、日本経済への影響必至です。
FRBのイエレン議長は利上げについて何と語るのか、市場は固唾を呑んで議会証言を聴いていたはずです。イエレン議長の証言をひも解き、利上げのタイミングと日本経済との関係について考えていきたいと思います。
目次
イエレン議長の証言を読み解く
最短で6月に利上げをする可能性あり!?
利上げをするかしないかを決定する場は「米連邦市場委員会」(FOMC)ですが、少なくともあと数回のFOMCで利上げをする可能性は低いと、イエレン議長は証言していました。逆に考えれば、最短で6月に利上げをする可能性は否定できないとも考えられます。
原油安はプラス効果
イエレン議長は原油安を否定的に見ておらず、それどころか家計の購買力を後押しし経済全体にプラスの効果をもたらす、とのこと。原油安がアメリカ経済にプラスとなり、底堅い個人消費もあり、今後は失業率もさらに低下すると予測しているようですから、何事もなければ今年中に利上げが行われるのは間違いないと見ています。
利上げタイミングにくぎを刺す
イエレン議長は利上げタイミングについてくぎを刺していました、「数回のFOMCを経て利上げするとは限りませんよ」と。個人的な感想ですが、イエレン議長は良く言うととても慎重な方、悪く言うと随分保守的だと思いました。しかし、アメリカ経済は世界経済の中核ですから、言葉を選んで発する大切さと重責をよく分かっているということでしょう。
イエレン議長の証言を簡単にまとめると、「利上げは最短で6月もあり得ますが、景気次第ですからね!」と言ったところでしょうか。
日本経済への影響
「アメリカの利上げは最短で6月だが、引き伸ばしされる可能性も十分にある」という状況は、日本経済にどのような影響があるのでしょうか?
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日本株は上昇継続!?
アメリカの利上げが最短で6月だとすれば、6月までは海外マネーがアメリカだけに集中するというリスクはなくなったことを意味します。つまり、少なくとも6月までは海外勢による日本株買いが継続されると予測できますので、日本株は高値更新を続けるかと見ています。
利上げ後が心配!?
アメリカが利上げとなれば、世界のマネーがアメリカに向かい、米ドルが買われるでしょう。そうなると、特に海外マネーを必要とする新興国にとっては厳しい状況に。日本に流入している海外マネーもアメリカに向かうとなると、日本経済が被るダメージは小さくないかもしれません。
頼みは日銀とGPIFか
現状では、日本株は買われています。その要因の一つは、GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)が日本株を買っているため下値を抑える効果があり、海外勢にとって安心感があるためです。アメリカの利上げに関係なく、これからもGPIFの買い支えに加え日銀の戦略によって日本株暴落の危機は避けられると思います。
最後にひとこと
アメリカの利上げと日本経済の関係を一言でまとめると、日本経済は海外頼みかと。
アベノミクスで表面的に株価は上昇していますが、根底にあるのは外部要因。外部要因が揺らぐと日本経済も揺らぐ。この悪循環を防ぎ、内需を拡大しつつ強い経済基盤を創り直すことが重要なんだと、今回あらためて考えさせられました。(執筆者:堀 聖人)