住宅ローンの返済方法を問うと、ほとんどの方が「変動金利、フラット35、10年固定」と答えます。実はこれらの回答は金利の適用期間であって、返済方法ではありません。
では、返済方法とはどういったものでしょうか?
それは、「元利均等返済」と「元金均等返済」、毎月返済とボーナス併用返済です。
この中で元金均等返済については初めて耳にする方も多いのではないでしょうか。私自身、相談者の住宅ローンで元金均等返済を見ることはめったにありませんし、住宅購入時に、元金均等返済の説明を受けた方もいません。私の顧客も、プラン作成後に自身で元金均等返済について問い合わせて、初めて説明を受けたそうです。
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目次
元金均等返済とは
元利均等返済が、「毎月の返済額(元金+利息)が一定額」なのに対し、元金均等返済は「返済額が毎月減っていく」返済方法です。
その仕組みは、毎月一定の元金に、残りの元金に対する利息を上乗せして返済する方法です。
例えば3000万円を35年、年利1.5%で借り入れた場合、3000万円÷420(=35年×12か月)=71,429円の元金返済と3000万円×0.125%(=1.5%÷12か月)=37500円の利息を合わせた108,929円が初回の返済額となり、2回目は(3000万円-71429円)×0.125%の利息と元金71,429円が返済額となります。
つまり、毎月、元金返済分の利息が減っていく訳です。言い換えると元金均等返済は毎月「繰り上げ返済の返済額軽減型」をしているようなものです。 多くの方にとっては、お子様が社会人になるまで、年々家計支出が増えていく中、年々返済額が下がるローンの返済方法は、検討に値するはずです。
また、元金均等返済は元利均等返済に比べ、総返済額が少なくなります。
元金均等返済では、住宅を販売しにくい
ではなぜ、元金均等返済は勧められないのか?
それは初回返済額が元利均等返済に比べ、高くなるからです。
例えば、3000万円を35年、年利1.5%で借りた場合の初回返済額は、元利均等返済が91,855円なのに対し元金均等返済では108,929円と、1万7千円も高くなってしまいます。
もし、108,929円を毎月元利均等返済で支払うと3550万円の物件が購入できます。つまり元利均等返済の方が高い物件を売りやすくなるのです。
裏を返せば、分不相応な高額物件を買わずに済むのです。
固定期間選択型、変動金利型では大きなデメリットも
元金均等返済のデメリットとして、先にも挙げた「当初の返済額が重い(高額)」の他に、「すべての金融機関が取り扱っているわけではない」という事です。
そして最大のデメリットは適用金利がアップすると「元利均等返済に比べ月々の返済額の上げ幅が大きくなる」です。
先の例で、今現在の店頭金利が変わらなかったとして、10年後に1.5%の金利が1.75%(店頭金利2.75%-優遇1%)に上がったとします。
当初10年の月々返済額は91,855円
10年後の月々返済額は 94,578円 月々2,723円の負担増
総返済額 39,395,926円
元金均等返済
初回返済額は108,929円
10年後(120回目)の返済額は98,304円
金利アップ後(121回目)の返済額102,679円
直近の返済額に比べ4,375円の負担増
*但し、初回返済額に比べ6,000円ほど返済額は下がる
総返済額 38,565,625円
元利均等返済に比べ総返済額で83万円少なくなる
10年固定で計算しているため、10年分(857万円)元金が減っているため、利息はあまり上がりませんが、これが変動金利や3年固定のローンだった場合、あまり元金が減っていない時期に金利が上がると、返済額も一気に増えます。
このように、適用金利が上がると直前の返済額に比べ、返済額は急増しますが、月々の返済は、初回返済額で返済計画を立てているので、返済に困ることはありません。むしろ初回返済額との差額分を貯蓄に回せるメリットの方が大きいと思います。
ローンを組む際、ローンを見直す際は、ぜひご検討を。(執筆者:田島 稔之)